チュートリアル2 マルチプレイをしよう!
勧誘に必死な君たちに言いたい
本当にその女子が女子なのであろうか?
このゲームは、至れり尽くせりである
ボイス機能で女子声に変換可能!!!
しかもヒラ女子のあのコーディネートはなんだ?
見るからに男が好きそうなものだ…更にツインテール…なによりも2人とも猫耳、猫シッポ種族であるベルベット族
こんなの男が理想とするキャラメイク!コーディネートだろ!
さてこの事実を踏まえての俺の推理はこうだ
ヒーラーが彼氏で弓使いの彼女をゲームに誘ったってところか?
この素人どもめ…俺クラスの経験豊富な男ともなればそれくらい見破るなど造作無いのだよ!!
って…なんだヒーラーがコッチをジト目で見てるんですが…俺…心の声が口から出てたか?
必死に勧誘…いや、どっからどう見ても既にナンパしてる様にしか見えない男達をグイグイ押しのけながらコッチへ歩いきたヒラ女子(仮)は
俺の前に立つとクルリと勧誘していた男どもに向き直るやいなや腰に手をやり俺を親指でクイッと指差しカモーンポーズで言いはなった
「悪りーな!コイツに決めるわ!!!」
??
訳がわからんがコレがよく言う巻き込まれってヤツだろうか?
熱心に勧誘をしていたプレイヤーのドスの効いた目が痛い
俺はそそくさとヒラ女子(仮)の指した親指から位置をずらす
「ぬっ!?」
ヒラ女子(仮)は位置をずらした俺を追い更に親指を指す
更にその親指からフェイントを入れつつ逃走を試みる俺
そのフェイントを更に先読みするかの様に先回りし親指を指すヒラ女子(仮)
ならばと更に更にフェイントを混ぜつつ………が、しかし、
更なるフェイントを入れたタイミングで強烈な蹴りが俺のボディーに突き刺さった
「ウグァッ…ブヘッ!」
情け無い声と共にそのまま地にひれ伏す俺にヒラ女子(仮)は親指でビシビシと突きを連続で叩き込む
「おまえの脳みそはどうなってんだ!!」
ビシビシ!!!
「あうっあ…あうあっ!!」
「か弱い女の子がナンパ嫌がってんのにおまえは何を無視って逃げようとしてんだ!!!
ああぁ〜ん!!?一択だろが!!!一択で助けるだろが!!それ以外の選択はねーだろーが!!!」
ズビシズビシズビシズビシズビシ!!
「わか…わかっ…てッ痛ッ…わかっ…わか…げひっ……ひっ…あひっ……わかっ…わかった…から…痛ッ…あ…う…………だぁぁぁあわかったっつてんだろ!!!喋らせろや!!!」
おでこを真っ赤にしながら俺は怒りで立ち上がった
ヒラ女子(仮)は、何ごとも無かったかの様に俺の前に立つとクルリと勧誘していた男どもに向き直るやいなや腰に手をやり俺を親指でクイッと指差しカモーンポーズで言いはなった
「そう言う訳だ!!!!」
「……そ…そう言う…訳らしいから……許してあげろ……」
おでこを真っ赤に染めて半泣きの俺
カモーンポーズで勝ち誇った様な笑みを浮かべるヒラ女子(仮)
少し離れた場所で申し訳なさそうに半笑いで立ち尽くす弓使い女子(仮)
それをまた立ち尽くして見る勧誘男子
「よ…よく…わかった」
「凄く説得力あったよな…な?」
「あったな〜…うん…俺らいらないな…な?」
「確かおまえMAOの犬だったよな…俺らには無理そうなんで頼むな…な!!」
そう言うと勧誘男子3人は回れ右更に右して何処かへ走り去って行った
そして俺とヒラ、弓女子
3人がポツンと残された
「ふん…」
勝ち誇ったヒラ女子(仮)は、
ツインテールをファサりと手ではらい悪女の様な笑みを浮かべ
クルリとこちらに向き直る
そしてクリクリの瞳を細めながらジッとこちらを睨みつけた
こ…この小娘(仮)め…
流石の紳士な俺でも…怒るぞしかし…
「お…おまえ…」
「なんだヘタレ?」
クソ…この小娘…何故、俺の小学校の時のアダ名を…
「た、助けなんてなくても!
ひ、1人で解決出来ただろが!」
おでこをさすりながら俺は精一杯の抗議をした…いや、まあ、アレだ…紳士だからなあまり強く言って泣かれたらまずいから緩めに言った訳だ…ホントだぞ
「か・弱・い・女子ってんだろ…?」
熊をも目で殺しそうな眼力で俺を睨みつけながらヒラ女子(仮)は言った
「はい!すみませんでした!」
即答だった
勝てない…今までの人生で女子に蔑まれた目で見られた事はあっても
熊をも殺す勢いの眼力で睨みつけられた事は無い
本能がやめとけと白旗を振った挙句に
仰向けになってお腹を晒すくらいに俺に告げてきた
「わかればいいんだゾ!」
ヒラ女子(仮)はアバターにあった可愛らしい笑顔だ
「じゃ、じゃあ自分、これで失礼します!」
コイツの沸点は低い
俺の様なボケにより気味な奴ではHPがいくらあっても足りはせん
君子危うきに近寄らず
じゃあなとばかりに背を向け手をあげ去る事にした
…のだが突然、肩を掴まれた
「ひっ!」
恐る恐る振り向くと満面の笑み
からの…冷たいあの瞳でヒラ女子(仮)が言った
「ちょっと待て待て!お前に決めたっつったろ!!!」
唐突である、いや…確かさっきコイツに決めたとか言われてたな?
肩を掴む手がグイグイと俺の肉に食い込む
「はぁ? いやいやいや何の話しでしょ?」
ヒラ女子(仮)は俺に向かって指をビシッとさした
先程の恐怖と痛みが脳裏をよぎり
ついついビクンと身構えてしまう
身体が条件反射で動く
これがトラウマ?
「お前、盾持ちだろ!!
私達これからセントラルに行きたいんだ!!」
た、確かに俺は盾持ち…
今では希少種と呼び声の高い盾持ちタンクだが?
突然にセントラルに連れてけってか?
「見た感じボッチプレイヤーだろ?
女子2人とパーティー組めるんだし…
嬉しいだろう?」
と、俺の周りを品定めでもするかの様にニヤニヤしながら回る
「ちょっとセントラルまで連れてって欲しいんだよな〜良い働きしたらフレ登録も考えてやっていいんだけどな〜」
ヒラ女子(仮)は両手を腰に当て自信満々な笑みで言い放った
どうやら特にフレ登録のくだりが推しの様だが
えらい上から目線で言われたものだ…
ツンなのか?ツンなのだな?
確かにツインテールだしこれはツンだろ?
ならデレを期待しても良いのか?
いやしかし…コイツは女子(仮)である
中身はオッサンの可能性は否定出来ない
あまつさえコイツ等はリアルではカップルって可能性も捨てきれない
もしカップルなら何で俺様がイチャラブカップルのエスコートをしてやらねばならんのか?
しかも、最近はツンは流行らんと聞いたぞ
だいたい俺はボッチではない
なんせギルマスであるフレもそれなりに多いと自負している
もしかしてリアルボッチとか言われてるのか?
確かに今はフリーではあるが年齢イコール彼女いない歴では決してない!!
即答の返事が返って来ない事に対してムスッとして仁王立ちのヒラの背後で
申し訳なさそうに弓使い女子(仮)も苦笑いである
まあしかし、セントラルには俺も行く訳で
利害は一致しているが…しかしだ
俺は転移門一発、しかるにこの不遜な態度のヒラと苦笑い弓使いは多分、徒歩だろ?
と言う訳で露骨に嫌な顔をしてみた
俺以上に露骨に不機嫌な顔で返された クスッ(笑)
でもこの小娘(仮)に舐められっぱなしは気に入らない……が、ま、まあ新規さんにサービスも古参プレイヤーの勤めかもしれない
しかし…
「セントラルに行くなら、さっきの奴等に頼んだらウッキウキで連れて行ってくれただろうに?
なんでまた、たまたま通りかかった俺なんだ?」
「え?ああ…私達は別にギルドとか今は考えてねーのよ。
だいたい出会い厨とか多いだろ?
だから、勧誘目的の護衛とか困るんだっつーの」
やれやれと言った口調でヒラは手をひらひらさせる
「なるほど、確かに人間関係やらいざこざに巻き込まれるのが嫌でフリーやってる奴も多いな
しかも、女子なら余計にいざこざに巻き込まれるリスクも高いしな」
「で、丁度いいボッチがお前って訳」
ニヤリと白い歯を覗かせ意地悪そうに笑う
「でも、さっきの人、この人にMAOって言ってたよね? それってギルドの名前じゃないの?」
今まで後ろでモジモジしていた弓使い女子が不思議そうにヒラ女子(仮)に聞いてきた
そうだよ〜弓女子(仮)〜君は良い子だね〜
「ああ…そう言えばそんな事いってたな
でもナンパされて困ってる女子をほっといて逃げようとする様なダメな奴だろ…?
お前どうせ、ギルド内でもヘタレ大臣とかなんじゃないの?」
そう言ってヒラ女子(仮)はガハハと笑った
「……そんな…こと………ないし……」
「ふん!」
鼻息荒く何故か得意げである
アレは多分、自分の予想が的中したと思っている顔だ
「セリちゃん…お願いするのにそれは…ちょっと言い方が悪いよ…あの、すみません…」
言うと弓使い女子はペコペコと頭を下げた
この娘は、良識があるようだ
とりあえず良い子な様なので笑顔で返事を返した
ああ〜弓女子〜ホント君はよく出来た娘さんだね〜
それにひきかえこのヒラ…
ふむふむ、なるほど、このヒラ女子(仮)の名前はセリと言うのか…
「ほらほら〜おまえも頭下げろセリ。」
「ああん?」
ああん?が、ああん(ハート)で無い事に多少の恐怖を覚えるのだが
「しかも、サラッと今、セリとか私の名前呼び捨てにしたよな?」
チッ…バレてる
これ以上、絡まれても困るので話しを進めよう
「ま、俺も新規さんは歓迎だしこのゲームの世界を存分に楽しんで欲しいってのもある…その点においては、やぶさかでない」
「あ、ありがとうございます」
「ふん!」
相変わらず不遜な態度のセリとその背後にモジモジと隠れた…あ?名前なんだっけこの弓使いの子?
「とりあえず俺の名前はワンコ
MAOのワンコ、シールドナイトだ、よろしくな」
名前を聞くなら名乗らねばなるまい
「私は、セリカ
ライトヒーラーだ、セントラルまで
よ・ろ・し・く!!!」
腕組みをしてムスッとした表情で言われた、
やけにセントラルまでを強く言われたのだが…
この小娘…ぜってーセントラルに着いたら容赦なく俺を切り捨てる気満々じゃないのか…フレ登録はどうなる事やら
とりあえずセリちゃんは愛称と言う事か
セリカセリカと…
「あ、わ、私はアイです!
えと、アーチャーです! 今日から始めた初心者ですがよろしくお願いします!」
セリカの影からひょっこり出てきたアイは
マルチ系ゲーム自体、初なのだろう見ず知らずの他人に対して不安と期待が入り混じっていると言った表情で敬礼して見せた
このアイは素直な良い子ちゃんのようだな
なんとも強烈に相反する性格の2人組だ
だが多分、そんな2人だから相性がよく見えるのかも知れない
少し微笑ましくもあり
自分がオヤジ目線な事に気づいて辛くもある…
まあ、セントラルまで30分もかからない
依頼主との待ち合わせ時間には多少の余裕を持って間に合うだろう
その間、この2人の接待プレイでもしてやる事にするか
ってか、しないとまた酷い目にあわされそうだ
とほほだよ…(泣)