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ガーディアンゲーマーズRPG  作者: 野々原 三月
10/10

チュートリアル10 タンクとは

盾持ち

それはこのバラッド戦記において

唯一の汚点と言われている


盾持ちと聞いて古参は、こう答える


破綻の原因


忘れ去られた職


そして


地雷と…



対モンスターにおいてRPGの役割は

大きく分けて3つある


DPS

アタッカーとも呼ばれ、その火力で敵を撃破し道を切り開く、おそらくRPG内で1番プレイ人数の多い役割である

技能と各ステータスに優れ単体でも戦場を生き抜く術を持っている

プレイヤースキル次第では、単機でのクエストノーダメージクリアをする上級プレイヤーすらいる


サポート

ヒーラ、バッファー、サポーターそれ以外にも様々な、その名の通り味方の援護を得意とする役割

回復、攻防力の補正、バッドステータスの付加を得意とし戦況を良くも悪くも変える力を持っている

その一方で、ステータスはアタッカーには遠く及ばず打たれ弱い

更に、戦場を把握するプレイヤースキルが必要とされる


そしてタンクである


敵からの注視を引きつけ

味方へのダメージを肩代わりするジョブ

特に防御力の低いサポートから敵を離し仲間の盾となり戦闘を有利に導く事が彼等の役目である


しかし、これはあくまでも対モンスター戦でのみの話しである


このバラッド戦記の主体は、PvPである


人は、考え行動する生き物


人の攻撃対象を自分に注視させる事はそれ自体が難題になるのだ


故に、いくつかの足止め用のスキルが作られその難題を1つ1つアップデートで解決していったのだが、それを置いても解決に至らなかった事案が唯一あった…



「ふむふむ…それは何なのセリちゃん?」


「大規模PvPだよ、要するに戦争だね」


盾持ちワンコ、こと駄犬と別れ

私達は今、セントラルから少し離れた場所で採取をしている

私もアイもクラフトやギャザリングの知識は皆無に等しいのでとりあえず

がむしゃらに低レベルでも採取可能な鉱石や果実などを掘り漁っている最中だ


「そっか…言われて見たらそうだよね」


「そりゃ下手したら数百、数千単位の大乱戦だからね、その中で役割が出来ないロールはやっぱり地雷って言われるわ」


駄犬との会話中に希少種だのロールプレイの破綻だのと言う言葉を聞いて興味が湧いたアイは採取の最中、仕切りにRPGがどう言ったモノなのかを聞いてくる


「バインドアンカーって覚えてるか?」


「ワンコさんがワンコを散歩させてた鎖だよね?」


正確には散歩用のリードじゃ無いんだけど…


「ま、まあ…あのバインドアンカーってヤツは、敵を捕まえて自分から離れられなくするスキルなんだけどな、アレはスキルレベルをマックスにしても3本しか出せない」


「いっぱいの敵との戦いで3本じゃ…」


「そう言う事」


乱戦においては力と数が物をいう

タゲの取れないタンク

攻撃力ではDPSに勝てず

トリッキーさとパフォーマンスではサポートには及ばないタンクは、戦場では打たれ強い劣化DPSと言うポジションになる


「それでも…」


私は、採取した花の種をアイテムバックにしまいながら不意に眼前に見える真理の塔に目を向ける

澄んだ蒼に、純白の塔がどこまでも映える


「それでも…タンクは、まだ頑張ってた…らしい…」


私はRPG、ロールプレイが好きだ

だから…今の私の心は、あの純白の塔に被る雲の様に少し、霞がかっているようだ


「?」


アイは負に落ちなそうな顔だ


「えっと…

確か、去年の話しになる」


去年

バラッド戦記の大型アップデートが入った


バラッド戦記は、PvPが主体ではあるが

それはあくまでもプレイヤー達が声を揃えて言っている事、

運営は、ストーリー面にもかなりの力を割いていた


そのストーリーの最新章の更新とステータスの微調整が大型アップデートとして入ったのだ


しかし、そのアップデートは世界中のプレイヤーに衝撃を与える事となる


ゲームシステムの根源すら揺るがす事件が起ったのだ


いや…


このアップデートから

バラッド戦記は、大きく変わる事となる



ストーリーは、機械と蒸気の国サザーランドが物語の中心となる章に突入


前々からプレイヤー間で広まっていた噂

このサザーランドストーリーで実装されるのでは無いかと囁かれていた噂が

この日、現実となってしまったのだ



サザーランドの半人半機械の女機師団長ラグレシアが主体となる物語が語られるこの章において

彼女の装備する銃がタンクにトドメを刺す事になる


サザーランドの特色として機械と蒸気と有る通りサザーランドは機械文明の発達により勢力を拡大させた国と言う設定だ


各国には、それぞれプレイヤーのプレイスタイルに合わせた恩恵がある


例えば魔法国家ファーレイは、

ヒューマンよりも身体能力、魔力の高い

デーモン、亜人種といった特殊な人種があり

平均ステータスは他国を抜いて随一である


例えば緑の国トゥーザトゥルーは、

おおよそファンタジーRPGのお手本といった職業、人種があり初心者の登竜門である

全てのステータスが平均寄りであり

どの職業に就いてもそつなくこなせる利点がある


そして機械と蒸気の国サザーランド


この国には、魔法と言う概念が無い


その代わりにある物


それが今回の件において重要な役割を持つ武器である銃なのだ

この銃を語るうえで、まずこの国の恩恵を語らねばならないだろう


その恩恵とは唯一


[サブ武器を装備出来る事である]


利腕には剣、そして逆腕には銃がサザーランドのプレイスタイルだ

魔法を持たない代わりに遠距離攻撃と威嚇を兼ねた銃を持つ事でそのプレイスタイルの自由度は三国随一


銃の種類により

軽銃はスピードタイプ、重火器は火力タイプに別れる


更に銃は、魔法と違い利点が有り

詠唱によるタイムラグがなく弾丸にはMPを使用しない、代わりに弾丸は各自の補充頼りになる

しかし、それを置いても余りあるのが弾丸の種類だ

各属性攻撃、強化、回復などの弾丸を使えば魔法にも劣らない効果がある


だが、利点にも増して欠点もあり

その欠点のおかげでPvPに置いて均衡が保たれている


攻撃力と重量である


基本的に銃は、攻撃力が低く設定されており

単発のダメージは通常の武器攻撃の1/10にも満たないのだ

基本は威嚇や牽制向きの武器と言える


その逆に重火器は、攻撃力が高い

その威力は、魔法攻撃とほぼ同等

それをタイムラグなし無詠唱で放てるのだ

しかし、重量が重く弾丸自体が高価であり

多くは持ち歩く事が出来ない


このペナルティーのおかげで、

この世界の均衡は、保たれていた


それが、ラグレシアの持つ武器の解禁により予想だにしない変革が生まれたのだ


[ガトリング]の出現である


レアリティーSS

個体個数は、限りなく少なく

サザーランドにおいても高ランククエスト走破者及びサザーランド国から二つ名を授かった者しか手に出来ない武器である


現在、確認されるガトリングの個数は、5


この、たった5つの装備でゲームシステムが…嫌、プレスタイルが変わってしまったのだ


タンクの装備する盾にはHP同様に耐久度が設定されている

その耐久度は、削れたとしても微回復する事により長期戦でも活躍が出来る

当時、最強ランクの盾の持つ耐久度は、およそ1000


対するガトリングの性能は、

0.1ダメージの弾丸を毎分6000撃ち出す


1分間に600のダメージを与える事が可能


タンクが盾で防げる時間は、

1分半にも満たない計算になる


対剣ならばプレイヤーの腕次第で、

盾の耐久度を回復しつつ攻撃を防ぐ事が出来るだろう

しかし、ガトリングの出現によりタンクを前に置き中、遠距離からの攻撃という戦法が破綻したのだ



「それで…RPGの破綻って訳なんだね?」


アイは、残念そうな顔でチュートリアルを確認している


「私自体、RPG…役割分担で強敵を倒していくゲームは…大好きなんだけどさ…」


今のバラッド戦記にそれは望めるはずもない


「背中を任せて自分の役割をまっとうするって言うのかな」


個人技対個人技の勝負


「今は…もう難しいかな」


不意にあの背にした盾を思い浮かべた

不覚だ…

あの駄犬は…あいつのチームは


今もまだRPGをやっているのだろうか。


「でも、ならなんでワンコさんは、

そのタンクをやってんのかな?」


ふむ…と、少し考えてみる


「バカ…だから?」


「ひ、酷いなセリカちゃん」


2人でバインドアンカーでワイルドドッグをなんとも言えない情け無い顔で散歩させている駄犬を思い浮かべて大笑いしながら、よっこらしょと鞄を持ち上げる


さっきよりも真理の塔がハッキリと見える

どうやら天候が快晴に入った様だ


しかし、不意に私達の背に別の影が写った


なんだってこんな所に…


青空に白き柱の様な出で立ち

その巨大さは神聖であり、おおよそ人の力では決して作り上げる事が出来ぬ大自然のソレにすら見える


まだ真理の塔があんなに近くに見える

それどころかセントラルの外壁すら見える


近い…セントラルからまだ近い…


フリーフィールドとは言え、

ここは、まだ初心者エリアだってのに


なのに…


「はぁ〜いルーキーのお二人さん」


6人!


「あらあら…怯えちゃってる?」


腰に銃と剣…

サザーランドか


「どうしちゃったの?怖くて声も出ない?」


しかも装備的に見てレベル50オーバーだと?


サザーランドのプレイヤーレベルは

銃の種類でだいたいのレベルがわかる

コイツらはサブマシンガン装備


リーダーと目される青髪の女は

アサルト装備…


しかし、コイツら…


「そりゃそうよね〜

なんせ私達は、青き天空団!!!

そして私が団長の青きハガネだものね!!!」


一同 「天空!!!天空!!!」


エグい程の食い込み水着装備の青髪6人は、妙なポーズで威嚇してくる

戦隊モノ…と言うのか…

いや…悪いがドン引きだわ…キモいわ…


「へっ…聞いた事もねーえっつーの…」


しかし、ヤバイな……このレベル差…


「あら、そうかもね

初心者さんじゃあ私達、青き天空団の名前も知らないかも知れなかったわね…」


ポーズをとったままガッカリした表情で何やらゴニョゴニョと相談を始めた


「セリカちゃん…」


アイは、初めての敵意あるプレイヤーに怯え私の背後に隠れている


「大丈夫…多分…戦闘にはならないから…」


PvPの旨味は、大きく分けて3つある


1つ

他プレイヤーを倒し、そのプレイヤーからアイテムを奪う


しかし、ルーキーの私達には、彼等を満足させる程の財宝も金もない


2つ

他プレイヤーを倒し、その経験値を奪う


しかし、私達と彼等のレベル差から考えても

彼等を満足させる程の経験値が得られる事は、到底ない


故に、おおよそ戦闘になる事は無い


大人しく今持っているアイテムと金を渡せば

見逃してくれるだろう

私達がここまで掛けた時間と労力は無駄にはなるが、生粋のMMO初心者のアイが始めた途端に対人戦闘の恐怖を思い知らされてトラウマになるよりはマシか…


「チッ…金とアイテム置いてけば良いのか?」


「うふふ…」


青きハガネと名乗ったリーダー格の女は、

ねっとりとした目で私達を品定めする様に眺めて周るとまた、他のメンバーと何やらゴニョゴニョと相談を始めた


ある程度、私達を眺めた後に、ニンマリとした不気味な笑顔で私達の前にまたしても奇妙なポーズで立った


「装備も…うふ……装備も置いて行って貰おうかしら…うふふ」


「なっ!?」


ハガネは下卑た笑いを浮かべに、じりょって来る


チッ…答えは3

PvPを…特に弱者を痛ぶるのが好きなタイプの様だ


こいつ…ぜってー中身はクソ野郎だろう…

なんとか…なんとかしないと…

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