チュートリアル 1 ゲーム世界の歩き方
長いです
Gmax idea
Gmax社専用デバイス EGGによりこの仮想世界へのダイブが一般へ普及し5年
この仮想世界は何層にも増殖し
買い物、ゲーム、スポーツだけに留まらず
会社やオフィスなどの商業施設、学校、各省庁までもがこの世界に居を構え
日常生活になくてはならない存在となっていた。
各国はこの仮想世界Gmax ideaの推進を掲げ
今では世界20か国以上で累計2億5000万人以上が利用するにまで至った。
仮想世界ideaのおかげで世界の技術の進歩は50年進んだとも言われている
自宅に居ながら世界へ
世界は確実に次なるステージへと進んでいる
しかるに、この唐突であり劇的な進歩の先に何が起こる?
そんな自分とは縁遠い事を考えながら眩しくも熱を帯びていない太陽をいじらしく見上げる
本日も晴天なり
突き抜ける様な蒼の下
街並みをボンヤリ眺め約束の場所へ歩みを進めながらインフォメーションに目をやる
この街を大きく覆う黒い帯に本日の天気予報が流れる
なんとか今日の依頼中は天気ももちそうだ。
この青空、街並みの景観を損なわない様に配慮され設置されたインフォメーションはツラツラと流れ天気予報、本日のイベント情報、最近では新規製品の情報からまったく関係のない家電や衣類のCMまで流れる始末だ。
こういう所にも広告収入の波が来ているのかと感心する。
そして中央広場にあるモニターには、昨日の大規模戦争の結果が表示される。
結果は大敗
まあ、この半年以上、大敗以外の結果を見た記憶がない。
よほどこのイベントが他人事なのであろう街を行く人々はおろか、冒険者すらそんな事は我関せずと言わんばかりに笑い合い話し合いその日々の営みを謳歌している
結局のところ、この現状が半年以上の敗戦の原因ではある訳だが…
かく言う俺すら既に興味もなくその大規模戦闘イベントを他人事として流して生活を始めて、そうだな?いつからだろ?
よくは覚えていないが多分、1年以上は経つだろうか?
今、必死に勝利を目指しているのは
王国騎士団と上位戦闘ギルドの面々くらいなものだろうか?
昔は、この国に勝利をもたらす為に必死になっていた時期もあったものだが、
残念ながらこの国の特性を考えるに戦争に重きを置く事自体に無理があるのだ。
まったくのナンセンスなのだ。
そう言う意味では、そこら辺をチョロチョロと走り回っている作業着の冒険者や小さなお店に商品を品出ししている冒険者の方がお利口さんかつ、この国を満喫していると言えるだろう。
この国は、緑の国
クラフトとギャザリングに重きを置く国
彩り、着飾り、セカンドストリーを謳歌する国
力では無く、個性を重んじる国
その名は
トーザトゥルー
このゲーム、バラッド戦記で俺たちが暮らす国である
魔装国家ファーレイ
機械帝国サザーランド
そして、俺たちが暮らす緑の国トーザトゥルー
この3つの国がこのバラッド大陸の中央にそびえ立つ真理の塔の覇権を争っている。
真理の塔の最上階には3人の賢者がおり、その賢者に認められた者が女神ルーティアナの待つ天空の神殿へと誘われる
そして女神ルーティアナに逢えたあかつきにはどんな願いも3つ叶えてくれるという
先ほどから話しにでる戦争は、それが発端である
勿論、この世界の人々だけでなく
我々、冒険者であるプレイヤーも大規模PvPとして参加する事になる
戦争は毎週日曜日に開催され
4週間目の日曜日に一応の決着がつく
ただし、戦争で勝つだけでは願いは叶わない
戦争で勝った国には真理の塔という運営が用意した果てしないレイドが待っている
全100階のこの天までそびえ立つ塔には、
5階ごとに協力なレイドボスが控えている
クリアした階層は女神の力が解放、浄化されモンスターが出現しなくなるのではあるが…
いかんせん100階…現在、サービス開始から3年
遂に先々月、魔装国家ファーレイのギルドが99階へ到達
しかし、それ以降、パタリと真理の塔攻略の報告が更新されなくなった。
99階のレイドボスがよほどの強敵なのか…はたまた…
とりあえず4週間目の戦争終結から1週間は、勝利国の冒険者達が何度でも真理の塔へ挑戦可能であり
敗戦国であるウチらは次の戦に備えレベルを上げたりダンジョンに潜ったりして時間を潰す訳だ
とはいえ、我々トーザトゥルーは基本的にのんびりとした国である
今日も穏やかにギャザリングやクラフトに勤しんでいる
さて、そんな今日の依頼もこのギャザリングに関する案件になる。
得意先のイジリ工房の依頼でフリーフィールド荒野へ鉱石の採掘のお供に行く事になっている。
ギルド名MAO
これが我々の所属するギルドである。
ギルドマスターは、僭越ながら私、ワンコが務めさせて頂いている
人数は5人と弱小も弱小、ビギナーが初めてギルドを作ったくらいの人数ではあるが老舗ギルドである。
ギャザクラが主のこの国においては、
どちらかと言うと戦闘系ギルドに属している我がギルドは、メインのストーリーが頭打ちで次のアプデ待ちな為に今は、クエスト、探査、プレイヤーの依頼をこなしながらレベリングを進めている
本当は、クエストボードから街の人々が出したクエストを進める方が金銭的には儲かるのだが、そこはそこ、プレイヤー同士の触れ合いにより金銭以上の見返り等ある訳で…持ちつ持たれつ…である訳だ。
実際、ギャザリング系ギルドの皆さまには我々の装備製作に必要な素材をお安くして頂いたり
クラフト系ギルドの皆さまには、お安く作って頂いてたりしている
見返りに、基本的にギャザクラレベルに全振りしている様な彼等では素材集めが難しいフィールドにボディーガードとして同行する訳だ
戦闘系ギルドにボディーガードなんか頼んだら結構お高い依頼料が発生する挙句に体育会系のあのノリに巻き込まれのんびりと鉱石採掘の場所探しも出来やしないらしい…まあわかる気がする…あの人種がカンカン石削りしてる後ろでいつまでも大人しく待てるイメージが湧かない
その点ウチは団員が揃えば朝まで騒げる様なワイワイギルド、カンカン中もワイワイくっちゃべってれればそれで待機時間は十分、値段もリーズナブル
そんな理由で、呑気な弱小ギルドことMAOは商売繁盛満員御礼な訳である
中央広場を横目に角を曲がれば商店区
その商店区に我がギルドMAOは一画を借りている
普通は、景観も良く広い敷地の居住区にギルドは土地を買い、そこに思い思いのギルドハウスを建てるのが定番なのだが、我がギルドは左右を商店に挟まれた小さなビルの様な建物を拠点としている
狭い一画ではあるが裏手に小さな庭と畑、そして何より川が流れている
俺のサブジョブは釣り師
これ以上ない立地なのだ。
外観はまるで探偵事務所
レンガ造りの外壁に緑多目のプランター
男の子ならワクワクする様な外観だ。
しかし、内装はカウンター席ありの喫茶店といったところだろうか?
実際には、所詮はゲーム
コーヒーも食べ物もアイテムとしてのグラフィックでしか無いので飲食は出来ないのだが、雰囲気を楽しんで欲しい訳だ。
この内装までこだわり抜いた我がホームをゆっくりと紹介したいところだが、残念ながら今は先客優先である。
今日は早めに仕事が上がれたので時間に余裕があるがイレギュラーでもあって顧客を待たせては信用問題だ、まずは、約束の集合場所へと歩みを進めよう。
フリーフィールド荒野エリアへ採取のボディーガードが今日の依頼な訳だがトーザトゥルーフィールドならば城門を抜ければすぐなのだが、フリーフィールドは多少訳が違う
否、かなりヤバイ
トーザトゥルーフィールドとはトーザトゥルー国土
採取出来る物は国特有の物に限る
現れるモンスターは外壁へと進むにつれその凶暴性、レベルはどんどん上がっていく
これをプレイヤーは通常フィールドと呼んでいる
しかし、フリーフィールドは
他国に隣接している為に採取物は多岐に渡る
その分モンスターのレベルも1段階跳ね上がる
更に、特質すべきは隣国の冒険者も自由に出入り可能ということである
3国は絶えず戦争状態、冒険者であるプレイヤーも同意
この場所ではPvPが公に認められているのである
負ければ各国の復活の泉へ強制送還
所持ゴールド、所持アイテムの半分近くを奪われるルール
鉱物を採取しそれを売買する事に楽しみを覚えているギャザラーがいる一方でギャザリングが面倒、しかし武具強化の為に鉱物を欲する者もいる
そんな後者にとってはギャザラーはお宝を抱えたカモに見えているのだろう
もちろん純粋に強者とのPvP目的のプレイヤーもいる
こんなプレイヤーに当たれば弱者なギャザラーは見逃して頂ける事もある訳だが…
まあ、とりあえず見返りがデカイぶん危険も大きい為にボディーガードを雇うのが主流である
フリーフィールドへの道のりも少し特殊で
第4の国、セントラル経由でないと行く事が出来ない
セントラルへは、城門脇にある転移門を使って一気にワープ出来るのだがこのセントラルも多少勝手がって……ん?
城門手前で何やらモゾモゾとしている2人組が目に入る
1人は、ヒーラーか?腰に片手杖を装備している
キャピキャピ…これは死語か?
ま、まあ、キャピキャピでフリフリの可愛らしいドレス型の白装備、ヒラというよりは魔法使い系の服装だが…これがなかなか良いミニスカート具合のツインテールの女子だ
もう1人は、背中に弓を装備した弓使い
こちらはボーイッシュなキャラメイクでピチッとしたシャツに短パン姿、初期のクエストでもらえる旅人のマント姿だ。
どうやらヒーラーが経験者で弓使いが初心者
とはいえヒーラーのレベルも服装こそ外装装備で着飾ってはいるが、あの杖は初期のモノだろう
推測するにチュートリアルから少し進んだ程度だろうか?
レベルでいえば20前後、弓使いは5あたりか?
どうやらギルド勧誘に取り囲まれている様だ
確かにパーティーに女子がいるだけで俄然ヤル気がみなぎってくる物だ、勧誘にも熱が入っている
長かったの読んで頂きありがとうございます