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12~新しい力~・2

 炎に包まれた貧民街はその熱気ごと消え、辺りに広がるのは何もない空間。

 時空の精霊が作った隔離空間で、本来この時代には存在しないはずの“異物”達が化物を取り囲む。


「ナに、なんダ貴様ら、ジャマをするなァ!」

「なんつーか……寒気がするぜ」


 愛用の戦鎚を構え、カカオが吐き捨てる。


「け、けど、人間なんですよね……?」

『人間“だった”だ、メリーゼ。ヤツはイシェルナに刺された時に死んでるよ。今目の前にいるのは、魔物に骸を利用されただけの人形さ』


 先程まで少女……イシェルナを人形呼ばわりしていた男の末路としては皮肉なものだ。

 ランシッドはそう感じながら、更に醜く変わり果てた化物にわずかばかり憐憫を含めた視線を送る。


『“総てに餓えし者”やその眷属は負の感情を糧にする……恐らくこの人間とはよほど相性が良かったんだろうね』


 みるみる形を変えていくそれは、もはや人間だったものの名残もほとんどなくなってしまっていた。


『メリーゼ、みんな……彼を哀れに思うなら、きっちり倒して浄化するしか道はないよ』

「……わかりました」


 ついさっきまで普通の人間だった者相手に剣を向けることを躊躇っていたメリーゼの瞳が、父の言葉で戦士のそれとなる。


「ぐぼ、げひひゃア!」


 こちらの戦意を感じ取ったか、魔物が高く跳躍してカカオ達を見下ろす。


「よク見ればナカなかノじょ、上玉がいルなァ……」

「!」


 メリーゼに向けてニィ、と細められた目に、彼女はおぞましさと悪寒で思わず身を竦ませる。


「メリーゼっ!」


 飛び掛かってきた魔物の腕が彼女の白い肌に触れる寸前、鈍い音を立てて弾かれる。


「ぐぉッ!?」


 魔物は堪らず一旦退き、腕を押さえてカカオを睨みつけた。


(この前と手応えが違う……!)


 ティシエールの屋敷で遭遇した黒い化物に攻撃した時は真っ二つにしたものの手応えがなく、まるで“届いていない”ような感覚をおぼえた。

 しかし今回は打たれた箇所が僅かに煙をあげており、魔物も苦悶に呻いている。


「いける……これなら!」

「畳み掛けるぞ!」


 前に出たブオルが追い討ちとばかりにその巨体からは想像もつかない速度で魔物との距離を詰める。


「ちか、近寄ル、ナ、男は、要らン!」

「そればっかかよ、こいつ……」

「伝説の女王、ブオル子さんに向かって随分な物言いじゃん?」

「それ今言う!?」


 心の古傷を抉られたブオルが魔物の攻撃を捌きながら振り返らずに抗議する。

 発言者のモカはというと、ブオルの反応などお構い無しに魔術の発動準備に入っていた。


「っと、」

「雷撃貫け、ビリビリどーん!」


 一瞬早く気付いたブオルが飛び退くと、魔物の頭上から直下に走る雷がパァンと音を立てる。


「ぐぁア!」

「魔術も効果アリ、だね」


 名工の腕輪により浄化の力を得たモカの術も、カカオの攻撃と同様に魔物に確実なダメージを与えていた。

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