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11~風雅の里の珍客~・4

 イシェルナに稽古をつけてもらいに来たら知らない人間や得体の知れないものまでいて、自分を見るなり驚き叫んだ。

 黒い猫耳尻尾を生やした少年……カッセの息子、ガレからすれば、今の状況は訳がわからないものだった。


「ししょー、これはいったい……?」

「ごめんなさいねガレ君、今日は大事なお客さんが来てるの」

「大事な……? 父上も戻ってすぐに発ってしまった……あの妙な魔物を見てから、父上もししょーも変でござるよ」


 猫耳をぺたんと寝かせきょろきょろするガレは、父やイシェルナから何も聞かされていないのだろうとカカオ達にもすぐにわかった。

 今回の件で王都に連れて行けなくなった、という事は恐らくあらゆる面でまだまだ未熟なのだろうが、今の状況が普通でないことは感じ取っているらしい。


「こうなったらそれがしも早く強くなって……!」

「後でいっぱい相手したげるから、今は外して頂戴」


 きょとんとするガレに、もう一度「ごめんなさいね」と伝えるイシェルナ。


「う……わ、わかったでござ……」


 しかし渋々応えようとしたガレの言葉は、遮られることになる。


「ししょー、体が透けているでござる!」

「えっ!?」


 言われて咄嗟に自分の体を見たイシェルナは、手足の指先や全身のあちこちが部分的に透明になったり戻ったり……存在が不安定になっていることに気付いた。


「イシェルナさんっ!」

「……どうやら、次はあたしの番みたいね……」


 悲痛な声をあげたメリーゼとは違い、イシェルナの声音は落ち着いたものだった。


「えっ、えっ? 何がどうなって……」

「ガレっつったな。説明している時間がねえ……今はイシェルナさんが消えちまわないよう、ぎゅっとしててやってくれ」


 混乱するガレに「大事な役目だ」と言ってカカオはランシッドに向き直る。

 少年は素直に頷くと、引き留めるようにイシェルナの腰にぎゅっと抱きついた。


「お父様!」

『……わかってるよ。時代は……いつもとちょっと違うみたいだ。二十年前より、もっと過去……』


 本来の人型に戻ったランシッドがそう呟くと、イシェルナは思い当たる節があるらしく長い睫毛を伏せる。


「もっと過去? ってことは、ひょっとして……」

「ししょー?」


 きょとん、と赤銅の猫目が瞬き、黒い獣の耳が動いた。


『よし! みんな、準備はいい?』

「はいっ!」

「待ってたぜ!」


 準備とは何なのか、ガレの疑問をよそにカカオ達が集まると空間にぽっかり開いた穴に呑み込まれ、その姿がきれいさっぱり消えてしまう。


「なっ……なななっ!?」


 立て続けに起きた信じられない出来事を前に、理解が追い付かない少年の口がぱくぱくと開閉する。


「にゃにがっ、おきたでござるか……?」

「うーん、どこからどう説明したらいいかしらね……」


 ここまでばっちり目撃されてしまえば、話さない訳にもいかないだろう。

 カカオ達が消えた方を見たまま固まってしまったガレの頭を、イシェルナは困った風に笑いながら撫でる。


(お手並み拝見させて貰うわよ、未来の英雄さん達……)


 紫黒の瞳は、マンジュの長としてのそれになっていた。

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