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6~まぼろしの再会~・2

「アンっていうのは友達か?」

「うん。遠い東大陸に住んでてなかなか会えないんだけど、ずっと文通してるんだ。今回は手紙に書くこといっぱいできたからねぇ、筆が進んだよ」


 伝書鳥に持たせたあとなのだろうか、テーブルの上やモカの手に、それらしきものは見当たらない。

 微笑ましい交流をしているんだな、と頬が緩むブオルだったが、


「……ブオル子さんのことは書いてないよな?」


 ふと不安になって尋ねたことに少女からは目をそらされ返事がなく、しばしの沈黙に嫌な汗がどっと噴き出した。


「まあそれはさておき、これからどうするつもりだ?」

「さておきって!?」


 主君から軽い扱いを受けてショックを受ける従者をよそに、時空を司る大精霊が考え込む。


『英雄が狙われてることに加え、ブオルみたいに別の時代に迷いこんだ者が他にもいるとしたらますます奴等が言っていた“テラ”って奴を倒して時空修復をしないといけない』

「大元を断たないと、ってやつか」


 カカオの言葉にランシッドは、そう、と頷いた。


『ただ、俺の力である程度は時空の歪みを察知できてもあまりにも範囲が広すぎる。後手に回ってしまうのはなかなか……』


 その時、屋敷の入口で扉が開く気配と使用人の迎える声が微かに聴こえた。

 聴覚に優れたクローテが獣の耳をぴんと立て、その内容を聞き取ると、


「スタードお祖父様だ……」

「げっ、まずい!」


 今は老齢となったスタードに、とうの昔に死んだはずの父親の姿は刺激が強すぎる。

 最悪心臓が止まってしまうのではないかと慌てふためくブオルが大きな図体を隠す暇もなく、無情にも足音は近付き、


「客人が来ていると聞いたのだが……」


 遭遇してしまった。


 淡い金髪を靡かせ、杖をつきながら現れたスタードは隠居して久しく、少し痩せてはいるがぴんと伸びた背筋、纏う空気は長年染みついた騎士のそれだった。

 そんな老紳士は居間に集まったカカオ達を順番に見、そして視線はモラセスと、どうにか身を隠そうとしているブオルの方へ移った。


「……どういうことだ、これは」


 金の睫毛がかかった藍鼠の瞳をぱちくりさせ、そしてスタードが導きだした結論は……


「父上……そうか、とうとう迎えが……」


 動揺で心臓が止まるとか、そういった反応ではなかった。

 悟ったかのように目を伏せ、冷静にそんなことを言い出したスタードに周囲はどよめき、ブオルは思わず「違ぁぁぁう!」と叫んだ。


「そうだ、人違いだぞスタード」

「モラセス様……?」


 狼狽するブオルを制して「俺に考えがある」と目配せをしたモラセスはスタードに向かって、


「ブオルが今ここにいる訳がないだろう。こいつはブオルではなく、よく似たオブールという名の男だ。東大陸からわざわざやって来た騎士マニアでな……」


 息をするようにするすると嘘八百を並べるモラセスは、そういえばこの人やたらとこういう時に頭も口も回るんだったとブオルに思い出させた。


 スタードはしばらく目を閉じてそれを聞いていたが、一通り終わった頃に息をひとつ吐いた。


「……そうでしたか。オブール殿、それは遠路はるばるようこそお出でくださいました」

「そ、そう! ボク、騎士団、アコガレー!」


 にっこりと微笑むスタードがどうにか騙されてくれそうだと感じたブオルは、すぐさまモラセスの嘘に話を合わせ、カタコトで返して笑顔を作る。


……が、


「ところでオブール殿、我が父ブオルは思わず人違いをしてしまうほど貴方にそっくりなのですが、嘘をつく時に右の頬がひきつるという癖があるのです」


 つらつらとそう並べられ、ブオルは慌てて自分の頬を押さえる。


「そしてその癖は父上を慕っていたモラセス様にも伝染ってしまったらしく」

「なんだと!? そんな癖知らんぞ!」


 つられてモラセスも同様にしたところで、スタードから特大の溜め息。


「ランシッド様……時空の精霊と、面白い事に首を突っ込みたがるモラセス様が揃っていた時点で、もしやと思ってはいましたが……」

『まあ、バレるよねぇ……』


 嘘と誤魔化しが下手過ぎる。


 一連の流れを見守っていた一同の感想は、揃って同じであった。

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