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20~消された村~・1

 遺跡近くのオアシスで一夜を過ごしたカカオ達は一度パスティヤージュに戻ろうと支度を整えていた。


「もっかいあの砂漠渡るのー? どっかこの近くでないのかな、九頭竜の路の入り口とかさぁ?」

「あるにはあるでござるが……カレンズ村、という名前に聞き覚えは?」


 過酷な砂漠に逆戻りしなくてはならない現実に対して駄々をこねるモカに、ガレが出したのはこの近くにある小さな村の名前。


「カレンズ村……マナスポットのある村だな。かつては余所者や聖依獣を嫌っていたというが……」

「ああ、村の近くにあるのか? それなら一回休憩できるな」


 クローテ、ブオルがそう言うとガレは「へ?」と気の抜けた声を出し、アングレーズと顔を見合わせる。


 それを怪訝に思ったクローテだったが、遺跡とは反対側からやって来る足音に気付くとそちらに振り向いた。


(旅人……珍しいな)


 父子らしき中年と少年がオアシスに辿り着くと、荷物を降ろして一息吐く。


「やっとここまで来たなあ」

「ここに来るまで休憩できる場所がないからなあ……昔はカレンズ村があったんだが」


 え、と声をあげたカカオ達はそのまま旅人の会話に聞き耳を立てた。


「あれ、でも僕の友達はカレンズ村に……」

「何言ってんだ、カレンズが滅んだのはお前が生まれるよりも前……ん、どうだっけ?」

「カレンズには小さい頃遊んだ友達がいるんだよ。それだとおかしいよ、父ちゃん」

「あれれ、ほ、ほんとだなあ……?」


 いまひとつ事実のはっきりしない会話を交わした親子は水のみ場へ歩いていく。


 やがてその背中が見えなくなった頃、


「……どういうこと!?」


 最初に声を発したのはモカで、それに続いてブオルが首を捻る。


「俺は過去の人間だから今この時代の状況はわからんが、カレンズ村は滅びちまったのか?」

「違います! 二十年前に魔物に襲われた時にだって父上や騎士達が……!」


 強く否定するクローテだったが、直後に頭を押さえて呻いた。


「確かに聞いたはずなのに、思い出そうとするとぼやけて、まざる……なんだ、この感覚は……」

『みんなのカレンズ村に関する記憶が不安定になってるね……時空干渉が行われている可能性がある』


 手乗り毛玉姿のランシッドがメリーゼの肩の上で背筋を伸ばす。


『ただ、まだ完全に塗り替えられてはいないから元凶を倒して修正すればなんとかなるはずだよ』

「決まりましたね、次の目的地が」


 おぼろげになった記憶に不安をおぼえながら、メリーゼはぎゅっと胸元に置いた手に力をこめた。

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