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えっと……近いよ


「うふふふ」


「…………」


「えへへへへ」


「えっと、萬田さん?」


「うーーん、嘘じゃない! いいなーー」


「えっと……何か用?」


「うん! 用だよ!」


「何かな?」


「えっとね……私の彼氏の顔をみたいなって、えへへへへへ」


「あーーうん……その、周りからみられてなんか恥ずかしいんだけど、出来れば離れてくれると嬉しいなって」

 朝登校するなり僕の席の前に萬田さんが……クラスメイトが教室に入って来る度にジロジロと僕らを見ている……


「迷惑?」


「ちょっと……」


「いーーーーやーーーーよ」


「えーーーー」


「うふふふふ」

 てへぺろする萬田さん……いや、可愛いけど!


「もう……なんなの一体……」


「だって、こんなに安心して話せるのって初めて、新鮮だなって」


「安心って」


「ねえ私の事……好き?」


「う、うん」


「あはははは、嘘じゃない、嘘じゃないよーーうーーーーん素敵」


「僕で遊ばないでよ、ちょっとイラっとするよ」


「あ、うん、ごめんね、嬉しくてつい、じゃあお昼休みにね」


「あ、うん……僕も嬉しい」


「う~~~~~ん、いい、良いよ七瀬君!」

 てへぺろしながら親指を立て僕に向け、いわゆるサムアップする叶えちゃん……えっとそんなキャラだったっけ?

 第一印象はもっとクーデレだった気がするんだけど……


「あーー、うん……僕はあまり良くないんだけど……」


「うふふふふ、じゃあまたね」

 そう言って自分の席に戻って行く、金色の長い髪をなびかせて、キラキラとしたその髪一本一本が残像の様に糸を引く、綺麗だ、あれが僕の彼女?……嘘だよね?


 ボッチ二人が教室に朝から一緒にいる事でクラスではかなり注目されている。

毒舌金髪美少女と空気読めない発言の男が一緒にいたら、そりゃ何か企んでるんじゃないかって警戒するよね。



 まさか付き合ってるとは思うまい。



 そして昼休み、恐れていた事態が。


「なーなーせ君! 一緒に食べよ!」


「え!」


「嫌?」


「嫌じゃないけど、周りから注目されるし、あとごはんが怖い」


「怖い?」

 萬田さんは、そういいつつ持ってきた椅子を置き僕の前に座る。

 「座るんだ……えっとね、例えば一口とか、そんな事態になったらすごくうれしいんだけど、もしだよ、もしそれがまずかったら、僕絶対言っちゃうんだよ? おいしくないって、そんな事って……聞いてる?」


「うん! はい、あーーーーーーん」


「いや、だから! それが嫌だって」

僕がそう言っても、萬田さんはニコニコ笑って玉子焼きを僕の口の近くに運ぶ。


「もう、どうなっても知らないよ! あーーん」


「どう?」


「…………おいしい……」


「きゃあああああああ!! やったね!」


「しーーーー、騒ぎすぎだよ」


「だって、だって七瀬君が褒めてくれるって、お世辞じゃないんだもん、嬉しい!!」


「あ……うん」


「いいな~~~~、七瀬君ってホントいい、私の理想だよ~~」

 ニコニコと笑う萬田さん……なんか調子が狂うな。


「君たちって、そんな仲良かった?」

 僕たちが騒いでいるのが気になってか、クラスメイトの一人(名前は知らない)が僕たちに話かけてきた。

「えっと付き合ってるんだ」

 聞かれた事に素直に答えてしまう、ああ、普通は隠すんだよね、分かっているのに言ってしまう。


「へーーーーそうなんだ、意外だね? でもお似合いのカップルかもね」


 小馬鹿にした様な言い方、そう言おうとしたが、僕より先に彼女が彼に話し出す。

「嘘ね……そんな事これっぽっちも思ってないでしょ、えっと永田君だっけ? 確か……」

 萬田さんの表情が一瞬で変わった、僕に見せた事の無い、鋭い目つき、冷めた顔……嘘を前にすると、こんな表情になるのか……


「嘘? ああ、また君は、皆にそんな事を言ってるけどさ、僕の何が嘘なんだい?」


「ふーーん、まず意外だねって、っていうのが嘘、イントネーションがおかしい、なにか、からかっている様な言い方、その後のお似合いって言う方がホントね、つまりボッチ二人盛り上がってんなよっていうのがあなたの言いたい事ね」


「え!」


「あなたの立ち方も、体を私たち正面に向けてない、多分あなたのお友達に聞いてこいって言われていやいやここに来たのね……後は私が皆に言ってるっていうのも嘘、少し自信の無い言い方……多分一人か二人、それもうわさ程度でしか聞いてない、このクラスで誰かひとりに聞いたって所ね」


「な!」


「後はね、あなた私に一目ぼれでもしてたの? 彼が私と付き合ってるって言った瞬間、眉間に一瞬皺が寄ったわ。ごめんなさいね、私、あなたみたいな人って大嫌いなの、私があなたの事を好きになる事は一生ないわ」


「な、なにを!」


「まだあるけど、聞きたい?」


「く……」

 そう言われ、何も言えずに永田君っていうクラスメイトは撃沈して帰って行く。


「あの……ちょっと、言いす過ぎじゃ」


「そうね……でも……これが私なの、嘘が大嫌いで、ほんと嫌になる……ああいう奴も…………自分も……」


「萬田さん……」


「ねえ、その萬田さんって止めて……もう私たち付き合ってるんだから、名前で……(かなえ)って呼んで? 遊馬(あすま)


「えええええ!」


「嫌?」


「嫌じゃないけど……恥ずかしい、僕……他人の女の人を名前で呼んだ事ないから……」


「やった、私が初めてなのね、お願い、呼んで……ね?」


「か、か、かなえちゃん」


「うんもう、ちゃんはいらないから」


「ごめん、それは……もう少し慣れてからで」


「うーーん、ま、いっか、うふふふふふふ」

 ニコニコ笑う、かなえちゃん……でも、あの目は、あの表情は……そうか彼女は僕と同じなんだ、言いたくないけど言ってしまう。そんな性を背負っている。

 でも、彼女は嘘が嫌いなだけ、僕は嘘がつけない、この差は大きい……僕はいつか彼女を傷つける……このままじゃ……







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