順番に~~
「キスがしたい……」
「ほえ!」
「ああああ、ごめんなさい……つい」
「ううん、えっと……急に言われたから……したいの?」
「いや、えっと、ち、違う……分けじゃ…………したい……」
「うん、そっか~~~~」
学校の帰り、いつもの公園のベンチで叶ちゃんと話していた。
最近はもっぱらアニメの話し、僕の好きなアニメを見たいと言うのでいくつか紹介した所面白いと言ってくれた。
元々アニメとかは見てなかったらしい、かといって毛嫌いしている分けじゃなく、ただ単に見なかっただけらしく、僕の言った作品を見て面白い! 嵌まったと言ってくれた。
嬉しそうに昨日見たアニメの話しをする叶ちゃん、僕の趣味にも付き合ってくれる叶ちゃん。
その笑顔で話す姿に僕はドキドキしてしまう。その嬉しそうに話す唇を凝視してしまう。
ぽってりした下唇、口紅は塗っていない、でもリップは塗っているらしく艶々した唇。ああ、可愛いよ、綺麗だよ、触りたい触れたい、そして「キスしたい」ああ、また漏れてしまった……僕の思いが……
びっくりする彼女、そりゃそうだよね、何の脈略も無いのにいきなりそう言ったら。
「えへへへへへ、そうか~~遂に来たか~~~」
「え?」
「ううん、このあいだ言ってくれたのに、あれからずっと言われなかったから、チャンス逃がしちゃったかなって」
「えええええええ!」
叶ちゃんの白い肌が赤く染まり、僕を上目遣いで見つめる。こんな綺麗な子がこんな美しい子が僕の彼女なんて……
「でもその前に、そろそろ、『ちゃん』を取ってくれなきゃ……嫌かな~~」
「ちゃん?」
「叶ちゃんのちゃん」
「あ、ああああ」
「呼び捨てにしてくれて、そして遊馬君……遊馬からしてくれるならいつでも良いよ……キス……しても」
「ぼ、僕から!」
「そりゃ私だって女の子だもん、理想のファーストキスくらいあるよ?」
「ファーストキス! なの?!」
「あ~~~~酷い~~~」
「い、いや、でも、僕と付き合う時って結構積極的だったから……その初めてじゃ無いのかなって……」
「聞いてくれたら良かったのに」
「いや、当たり前だろって思ってて」
「ひーーどーーーいーーー、私そんな軽くありませーーん」
「あ、ごめん、でもこんな可愛い人が今まで……その……無いなんて考えられなくて」
「うん? 私誰とも付き合った事無いよ! キスも初めてだし、勿論処女よ?」
「処!」
「へへへへ、聞かれる前に言っちゃえ作戦成功~~~」
「いや……今確かに言っちゃいそうになったけど……」
「良いのよ遊馬の事分かってるから何を聞いてくれても、隠す事なんて無いから」
「あ、うん、ありがと……でも僕も最近嘘は無理でも、このつい言っちゃうって事は直そうとしているんだよね」
「へーー出来るの?」
「嘘は無理でもこっちは出来るかもって思ってるんだ、拒否反応出ないし」
嘘をつくと頭に浮かぶ妹のあの姿、それによる吐き気等の拒絶反応、それはこのつい言っちゃう行為では出ない。ならば治せるんじゃないか? と思った。
そう僕は今までは自分のトラウマを積極的に治そうとは思わなかった。嫌われてもいい、それが罰だから、そして僕から人を避け、相手からも嫌われ避けられれば問題無いと思っていた。
でも、今は違う、叶ちゃんがいるから、少しでも叶ちゃんを傷つける機会が減るならと思い始めた。
「そか、でも……それは少し残念かもね」
「え? 残念なの?」
「だって……今みたいな嬉しい事、言ってくれなくなるって事でしょ?」
「う、嬉しい……の?」
「うん、勿論! 好きな人に欲望をぶつけられるって、とても光栄で嬉しい事だよ?」
「え、じゃ、じゃあ僕が今叶ちゃんの胸を触りたいって、あ!」
「あはははははは」
「いや、その……ううううう」
ダメじゃん、全然治らないじゃん……
「うん、嬉しいよ、全部嬉しい! でもねえ、ダメえ」
叶ちゃんは腕で胸を抱くようにして僕から隠す……あああ…………
「そ、そうだよね……」
「ううん、まずは名前からだよ~~~~ほら呼び捨て呼び捨て」
「あ、うん……えっと…………か……か、叶」
「なあに、遊馬!」
「うわああああああああ」
「あはははははは、うん、照れるね、でもいい感じ! よし! じゃあ後は遊馬のタイミングでキスしてね、私の一生の思い出に残る様にだよ!」
「ええええ! そ、そんなプレッシャだよおお!」
「頑張れ頑張れ、こういうのは順番にしていかないとね~~~~」
「ふえええええええええん」
「ほらほら頑張れ男の子!」
叶は笑いながら口を尖らせる、賞品は私の唇だと言わんばかりに……
「何で僕が応援されるの~~~~」
「あはははははははは」
キスするタイミングって……ググったら出るかなぁ?