出会い
服装をどうするか悩んでる沙希だったが、特に誰とも会う予定がないのを思い出し、シャツにハーフパンツを見に纏い車に乗った。
「まったくなにが神の使徒よ。面倒臭いっってのよ。」
沙希は神の欠片を回収する任務を仰せつかっていた。
話は半年前に遡る。天使達によって与えられた神の欠片は、幸か不幸か沙希の体内に取り込まれる時、休眠しているような状態になっていたのだ。それのお陰で沙希は死なずに済んだのだが、今となって神の欠片が起きてしまったのだ。それを知った神様が、沙希を自らの住処に召喚した。
「目は覚めたかしら。沙希」
神様ことアリシアが、意識を取り戻した沙希に言う。
「ここはどこ....?あなたは誰?」
まだ意識がはっきりとしていないのか、ふにゃふにゃした表情で口にする。
アリシアの後ろに広がるのは、果ての見えない青い草原の景色だった。
不自然なまで長さの揃った青草が生み出す壮大な光景は、先程自ら誰何した存在すら忘れてしまう程の衝撃だった。
「ここは気に入ったかしら?すごいでしょう。ここでするピクニックは格別なのよ。」
沙希がフリーズしているのを見かね、アリシアが声を掛ける。その言葉は沙希を現実の世界へ引き戻すには充分だったようだ。ここが現実世界かどうかは知らないが。
「すごく綺麗。ええ、ほんとに綺麗。」
沙希は相手の女性に害意が無いことを悟ると、再びただただ広がる景色に目を向ける。
「そろそろお話したいのだけれど。」
どうやら数分以上の時がたっていたようだ。
沙希は言葉を発さずに声の主に視線を送る。
アリシアは地面に座る先へ向けて言う。
「ここは高天原、オリジンの者たちしか存在することが許されない。世界の始まりが起こった場所よ。」