魂
(お前の中にあるこの神の欠片、かすかだが神力が溢れ出しているようだ。恐らく人の身では神の欠片の力を完全に制御することはできないのだろう。そして溢れた力は宿り主である沙紀、そしてお前に憑依してる我にも影響を及ぼしているようだ。まあ、我にとってはメリットのほうが多いが、お前は違う。)
(その影響ってなによ。)
(我も全能ではない故、確かなことは言えん。それを踏まえて聞くのだ。)
(ええ、それでなに?)
(お前、このままだと死ぬかもしれんぞ。我も神である故、人の魂が見える。それは形も色も全部まばらだが、今までたくさんの人の子の魂を見てきたなかで、共通していることがあるのだ。それは魂に亀裂が入っているものはないということだ。だかお前の魂にはひびがはいっているのだ。)
(なるほどね、その罅の原因が神の欠片ってことね。)
(恐らくな、それに死ぬかどうかはわからん。死んだ人間の魂は輪廻の輪へと消えていくから見たことがないのだ。だが魂に罅が入ってていいことはないだろう。恐らくこれから様々なことがお前の身に起こるだろうな。)
(そう、それよりあんたの受けるメリットってなんなの?)
(うむ、どうやら神の欠片の力を吸収して、我の神格が上がっているようなのだ。この世界にも我以外の神が存在する。もちろん、現地産の神だがな。神格が上がれば上がるほど、この世界への干渉力が高まる
のだ。干渉力が高まれば、あらゆる奇跡を起こすことができる。人間で言うところの魔法だな。沙紀、お前は神格こそ低いが、干渉力だけはずば抜けて高いようだ。我でも起こせないような魔法が使えるのだろうが、今のまま力を振るえば何かの拍子にお前の魂が砕けかけん。解決策が見つかるまで下手なことはしないほうがいいだろう。)
(分かったわ。因みにその解決策に心当たりはあるの?)
(ある。神格が高い神に魂を治してもらうのだ。だが、今の時代だと厳しいかもしれんな。信仰とは程遠い生活を送っている人間が多すぎる。輪廻の輪に干渉できるほどの神格を持っている奴がいるかどうか。)
(簡単には見つからなそうだけど、探すしかないわね。)
脳内で目を閉じて夜と会話をしていると、待っていた電車がホームへ到着した。周りの乗客は下校途中の学生が多く、友達と談笑しながら暇をつぶしているようだった。そのほとんどが席に座らずにいるため、混雑した時間帯にも関わらず座ることができた。普段あまり乗らない電車の音に身を任せると、どこか懐かしい記憶が蘇るようで、沙紀は高揚感を覚えた。等間隔で訪れる線路の振動は、どこか大きな安心感を与えてくれ、僅か1分もかからずに沙紀を夢の世界へと誘った。