追憶
沙希が目を開けるとそこはアリシアと初めて出会った場所だった。果てしなく続く草原。ふと後ろを振り返ると、そこには可愛らしい少女がおり、一本も生えていなかったはずの木が堂々と鎮座していた。
小さな少女は草原にシートを広げて寛いでいる。
傍にある木のお陰で太陽からの日差しを気にする必要もなく、この場所が気に入っていた。
「やっぱりピクニックはさいこーね!」
そう言いながら籠に入れてきたサンドイッチや飲み物を次々と取り出していく。
「そんなに食べるからぷよぷよになるんだぞ。少しは運動したらどうだ。」
この声で、沙希は声の主の身体に憑依しているような状態だと気づいた。
「ふんっ」
少女は少年の言葉に腹がたったのか、反対を向いてサンドイッチを食べ始めた。これが世にいうへそが180度まわるである。
少年は少女から視線を逸らすと、持っている木刀に意識を集中し始めた。
「見よ。」
すると、沙希の脳内に直接声が響く。
「見ろって何を?」
沙希が声に出して質問すると、すぐさま返事が返ってくる。
「この剣を、そして型を。」
沙希はすぐさま少年の木刀に注意を向けると、これは先程の戦闘で折れてしまった木刀とそっくりだった。おそらく、元々はこの少年の持ち物だったのだろう。すると、あの小さな少女は子供の頃のアリシアなのかもしれない。
少年は木刀を横薙ぎの構えに持っていくと、呟く。
「神舞 壱ノ段 蒼」
本当に遅くなりすみません。今度の展開を考えていたらどんどんこんがらがっていきました。ある程度方針が決まりましたので、今度の投稿スピードも上がるかと思います。読んでくださる皆様ありがとうございます。
ブックマークくださった方感謝です。