ある日、幼なじみの彼女が勇者になり同じく勇者の男と結婚しそうなので僕は魔王になると決意する。
ふと、思いつきました。
しかし、連載するほど案が浮かんでないので取りあえず短編で。
そもそもこの世界になぜ勇者は存在しているのだろうか・・・。
簡単なことだ。この世界にいる魔王を倒すためだ。魔王は人々に恐怖を与え、領土を奪い、その恐ろしほど強力な魔力を使い残酷に人を殺していく。そんな非人道的な行いをする魔王たちの真逆の存在、それが勇者だ。勇者は人々に安心感を与え、奪われた領土を取り返し、その暖かい魔力で人を救っていく。
なんて素晴らしいんだ・・・ただ僕の幼なじみが勇者になる必要はないだろ。
この世界で勇者に選ばれるのはなんと100万人に一人。つまり、魔王とまともに戦えるのがこの数だ。なるほど、なるほど・・・ただ僕の幼なじみが勇者になる必要はないだろ。
大事なことなのでもう一回大声で。
僕の幼なじみが勇者になる必要はないだろ~~~~~~!!!
少し一人で話し出すがあまり気にしないでくれ友よ。
別にね、勇者が危険だからって言うわけで止めてるんじゃないんだ。
人助けはそれなりにリスクがある。そんなのは常識だろ?
僕が言いたいのはどうして勇者は勇者同士でしか結婚できないって話だよ。
勇者のための法律書の最初に書いてある。・・・なんだよ勇者のための法律って。
そりゃ、勇者同士の子供は強いだろうね。でも、そんなヤツもう何人もいるじゃん。これ以上必要ないじゃん。
わざわざ、僕の幼なじみまでそうする必要ないだろ。
知ってる?彼女、勇者の証が出るまでただの村人だったんだよ。
それがいきなり勇者になるとか・・・。そういうのあらかじめ言っておいてくれませんかね。
もし知っていたらこんな惨めに愚痴を言わずに済んでるんですけど・・・。
というか、彼女も彼女だよ。つい先日まで、ねえねえおままごとやろ~君はお父さん役で私はお母さん役ねと仲良くやっていたじゃないか。今では僕が遊ぶの誘っても、ごめん世界救わないといけないから今日も訓練するんだ。また、誘ってね。って。
いいじゃん別に世界救わなくても、代わりに誰か救ってくれるって。
発言もなんか急に大人っぽくなってるし、まだ十五じゃん。まぁさすがにおままごとは十五でどうかとは思っていたけどね。でも、そういうこと含めて好きなんだ。大好きなんだよ~クスクスクス。
あ、笑っているんじゃなくて泣いています。僕、昔からこういう泣き方なんです。
それに、十年前。
「ねえ、君~大きくなったら結婚しようよ。」
「・・・・・・」
「ねえ、しないとダメだからね。」
コクッ。
僕は確かに憶えているぞ。ちゃんと首縦に振っているし。そりゃ~恥ずかしくてちゃんと口では返事してないよ。でもセーフでしょ。彼女は僕のことを君って呼ぶんだ。僕だけだぞ。それに十二年前の初キス――――
「あのさ直継、僕もう帰っていいかな。」
最初からずっと聞いていた親友はうんざりした顔で僕を見てくる。
「何でさ、今からがいいところなんだよ。初キスの話だぞ。」
「それ何回も聞いたさ。転けそうになってたまたま口が触れたんだろ。ってかもう諦めろよ。いい加減醜い。」
「・・・・・・本当は僕も気づいているさ。でも、こんなにあっさり彼女が遠くの存在になるなんて・・・。」
もう悲しすぎて死にそう・・・。
「まあ、確かに村では直継たちお似合いだったからな~。彼女、直継が一緒じゃないと僕たちと遊んでくれなかったし・・・懐かしいな。」
親友は昔を振り返って懐かしそうに笑う。しばらくして二人は解散をした。
最後に親友は僕にこう言葉を残した。
「いいかい、直継。もう僕たちは十五歳なんだ。彼女を温かく見守ろうじゃないか。そうしないと、彼女が安心して出て行けない。だろ?」
確かにそうだ。理屈では分かっている。これからはできるだけ彼女のために動こう。
ただ、果たして僕のこの恋心が耐えられるだろうか。だって、間違えなくこの世界で一番彼女を好きなのは僕だから。
帰宅の途につくと、家には誰もいなかった。
・・・そういえば村で大事な会議があるって言ってた。
きっと、彼女のことだろう。もしかしたら、彼女が村を出るときのお別れパーティーのことかもしれない・・・。
普段、家に誰もいないとき飯は彼女が作ってくれる。
いや、はじめは自分で作ろうと思ってたよ。
でも、彼女が代わりに作ってくれるようになってからはずっと彼女任せだった。
そろそろ、こういうことも自分でちゃんとやらなくては・・・。
今日はまだ彼女は帰ってきてないが、もうすぐしたら帰ってくるだろう。それまでに自分の分と彼女の分を作る。
「ただいま~今からご飯作るから待っててね。」
彼女は帰って早々、そう言った。
「今日はもう作ってあるんだ。」
「え?どうして。」
「ああ、そろそろ君がいなくなるときの準備をしなければいけない。これはその一環だよ。」
彼女は驚いた顔をする。
「君どうしたの?。朝と大分雰囲気違うけど・・・。」
「もう、十五歳だからな。それに気づいたんだよ。」
「へえ~でもご飯ぐらいいつでも作りに来てあげるよ。」
・・・?
彼女が村を出たら当たり前だけど作りに来られないぞ。分かっているのだろうか?
その後、ご飯を食べ終えしばらく談笑した後彼女は自宅に戻っていった。
そして、やっぱり僕は彼女が好きなんだと何度も実感した。
しばらくして・・・・・・。
「直継、帰ったわよ。」
母と父が二人とも会議から帰って来たようだ。
「どうだった、会議は?って母さんたちの分のご飯作ってない。」
「いいわよ~食べてきたから。それとね、会議でね、もうすぐ魔王倒せそうって言っていたのよ。」
「・・・は?」
あまりのことに僕は反応できなかった。もちろん、外食の方ではないぞ。
「だから、魔王軍の4人いる幹部のうち二人倒したらしいの。そして、幹部の一人は行方不明らしいの。次の戦いで倒せるかもって。」
ウソだろ。確かに、確かにこれはうれしいことかもしれない。実際母はうれしそうに話しているし、でも僕全然うれしくないんですけど。確かに諦める的発言はしたよ。でも、早くない?。もうちょっと時間おいてからでもいいじゃん。まだ、心の準備できてないよ。
僕は放心したまま立っている。母たちが、もう寝るわよ~と言ったのも聞こえていない。
ようやくその放心状態が解けたのは深夜だった。それでもすぐに寝られるほど心は安らかではない。
そんな折、家の玄関を叩く音がする。
・・・こんな時間に。
僕しか起きていないので仕方なく玄関を開ける。都会と違ってこの村は安全なのでみんな不用心だ。
だが、この僕の不用心こそが僕の運命を変えることになるなんて、誰が思っただろうか。
「こんな時間になにようですか?」
見ると村では見かけない黒ずくめの男が一人。
「お前、魔王にならないかい?」
「・・・はい?」
突然の勧誘。しかも見るからに怪しい人。
彼は僕たちの昼間の会話を聞いていたという。そして、僕のことが気に入って勧誘しに来たのだという。
・・・よく分からないな~
「つまり、どういうことですか。」
「君の幼なじみ勇者なんだろう。で、魔王が滅びたら結婚してしまう。だから、君が新しく魔王になれば少なくとも君が死ぬまでは、その幼なじみは結婚できないということだ。」
なるほど、そんな手は思いつかなかった。ただ、現実的ではなさそうだが・・・。
そもそも彼は誰なのだろう?
そんな僕の心を読んだのか彼は自己紹介する。
「これは、これは申し遅れた。わたくし、魔王軍幹部の一人ラビュースというものだ。」
・・・・・・ウソだろ~~~~~~~
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あれから、五年が経過した。今でも僕の幼なじみは結婚してない。
そう、俺は魔王になることを決意したのだ。
魔王になるために様々な悪事を働いた。なんか、悪いことをすればするほど魔王としての力が強くなるのだとか。ただ、魔王になるにあたって一つだけ取り決めを。
それは絶対に人を殺めないこと。これはラビュースに反対される思ったが意外と乗り気。
あ、言い忘れてた。ラビュースは昔の魔王を捨て俺につくことに。
詳しい話はまたいつか。ただ、魔王になるための最初の特訓は自分を俺口調で呼ぶことだった。
これが意外と大変で・・・。
・・・何、まだ彼女は好きかって?
それはもちろん。でも、今の身分は恐ろしくて言えないけどね。
どうでしたか?
なんだか後半部分は急いでしまったようにも思いますが・・・
是非よかったら感想を。