Chapter : 10 Yes, I was <your> reaper.
「ねえ、じゃあ最初の君の話として、ひとつ確認したいことがあるんだけどさ」
「なんですかー? なんでもどうぞ、天界のこと以外なら!」
「君、死神じゃないだろ。魔女、でしょ?」
時計塔で、レイが固まった。なんだ、バレてないとでも思っていたのかな。
「言い方を変えようか。君、ルナティックだろ。オルギアを発動してる」
「……いつから、気付いてたんですか?」
「君は死神の精度が低すぎだよ。漫画の設定の丸パクリは流石にバレる。違和感は色々あったけど、確信したのは君の言動だね。君には、ちゃんと月が二つ見えてた」
『Reaper Leaper』ね。蓮の姉にも起きたんじゃない。レイが、漫画の世界を投影したんだ。
「……あはは。嘘は、言ってないですよ。だって、わたしは……あなたの、死神なんだから」
その言葉ではっとする。死神。俺を、死に至らしめたもの。
「君、あの時の……女の子か?」
レイは観念したように空を見上げ、鶴の恩返しって知ってますかと、静かに笑った。
「わたしが、悪いんです。……わたしがいたから、こんなことになったんです」
奇跡の陰には人がいる。死や時空を歪める超常はありえない。あるとしたら、オルギアだけ。
「雪白さんが、わたしをかばった後。わたしは、ショックで頭が真っ白になって、気付いたら、髪の毛がこんなになってて。軍の人を、六花さんが殺して、……それで、光って」
「世界が、めちゃくちゃになったんです。残ったのは、わたしがいた中心だけだった。真っ白だった。海と、壊れた時計塔と、太陽と……それだけしか、残らなかった!」
「全部全部、わたしが悪い! わたしが、漫画なんかに夢中になって、島に乗り込んだから!
やり直したいって思った! 漫画みたいに! 全部全部、なかったことにしたいって!」
「……そう思ったら、また意識がぼやけて。月の声が、聞こえたんです」
「月の声?」
「たぶん、オルギアを起こした時だけ、何かが繋がるんです。……わたしは、言われた。理性を、記憶を持って無茶を起こせる代わりに。全部終わったら、魂を貰う。それでいいかって」
広崎零は死神じゃない。死神と契約した、人間だ。
「あの月は、欲しいんです! 過酷な運命を、記憶を、物語を経た魂が、欲しくて欲しくて仕方ない! だからルナティックが起きるんです! あいつを、楽しませるために! ……でも、わたしはそれでも構わなかった! あの終わりがなくなるなら、魂なんて惜しくないっ!」
どうして、と俺は問う。「どうして、最初からそれを言わなかった。嘘を、ついた?」
「だって、あなたは見ず知らずの人を庇って死ねる、優しい人だと思ったから! バレたら、またわたしをかばって、過去を変えてくれないって、そう思ったんじゃないですかあっ!」
……そうか。君も、また、人だったんだな。
誰かを想うがゆえに、自分を顧みず優しい嘘をつける。そんな、美しいものだったんだな。
「……レイ。俺は決めた。君を、助ける」
「……え?」
「君を、みんなを、この物語から解放して。俺が一発、あいつをぶん殴ってくるよ」




