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My way  作者: H-show
4/5

Chapter4 「吉良の過去、そして」

登場人物


冬野ふゆの 雪斗ゆきと (17) ♂

本作の主人公。心優しく、とても明るい性格。

高校生にして二人の妹の面倒をみており、

なんとか3人で暮らしている。

中学、高1までは頭が良かった彼も、暮らしが変わり

2年では成績はいつも下位で、まわりから馬鹿にされ続けているが

本人はいつも笑っている。


神川かみかわ 千歳ちとせ (17) ♀

夏休み前にりんご町に引っ越してきた女の子。

元気いっぱいで、ひと思い。困っている人を放っておけず

いつも明るく優しい子。

両親が肉屋をやっており、店員として両親を手伝っている。

新学期、雪斗のクラスに転校生としてやってくるが…?


住江すみのえ 夏樹なつき (17) ♂

雪斗と小さなころからつるんでいる男。

面倒見がよく、義理人情に厚いといった性格で

雪斗を誰よりも友として大切に思っている。

雪斗とは大の遅刻仲間である。


峯原みねはら 真琴まこと (17) ♂

気が弱く、細い。

1年の時に同じクラスだった夏樹と仲が良く

その後雪斗と知り合った感じだ。

理系クラスで進路志望は大学。


織田おりた 優音ゆね (17) ♀

千歳の斜め前の席の女の子。

明るく楽観的な性格。

転校生の千歳に良くしてくれる様で

積極的に話しかけてくるようだ。


吉良きら 拓真たくま (17) ♂

八重桜高校の新しい生徒会長。

有無を言わさない性格で、

風紀の取り締まりにも厳しく

進学校であるのもあり、

頭の良くない生徒をとことん嫌う。


東雲しののめ 風太ふうた (16) ♂

りんご町の不良で知らぬものは居ない、不良グループ

暴律駆ホリックの下っ端。次期総長が決まっていた

吉良の脱退を未だに認めることができずにいる。

暴律駆はそもそも不良グループと言っても

市民にとって害のある集団ではなくむしろ基本正義。


冬野ふゆの みぞれ (10) ♀

雪斗の妹で、つららとは双子の姉。

兄である雪斗を慕っており、暮らしが苦しくても

いつも明るく笑っている。勉強はどちらかというと好きではなく

いつもつららにやらないといけないと注意されている。

絵をかくのが大好き。


冬野ふゆの つらら (10) ♀

雪斗の妹で、つららとは双子の妹。

真面目な性格でいつもみぞれに振り回されている。

本を読むのが好きで、いつも同じ本を読んでいるが

本人は飽きないらしく、雪斗が買ってくれたものだからと

お気に入りで大切にしている様だ。


ユキト ♂:

チトセ ♀:

ナツキ ♂:

ユネ  ♀:

タクマ ♂:

フウタ/センセイ♂:

みぞれ ♀:

つらら ♀:


『』は心の声です

------------------------


(登校)

ユネ  「あと1週間……文化祭の準備も始まったねー!」


ナツキ 「いいねえいいねえ、学校って感じでなんともウキウキすんなぁ」


ユキト 「文化祭準備で授業ないからだよね、それ」


ナツキ 「まぁなー?」


ユキト 「うちって…何やるんだっけ・・・」


チトセ 「喫茶店だって!」


ユキト 「あ、そうだっけ」


ナツキ 「そーなのか?」


ユネ  「自分たちのクラスの出し物なんだからもうちょっと関心持ってよ…」


ナツキ 「んなことより俺たちはバンドで忙しいんだぜー?」




(準備に取り掛かりはじめ、校内はどんどん賑やかに)

ナツキ 「えーっと…ペンキでいいのか?」


チトセ 「うんっ、ペンキとハケをお願いしてもいいかな?」


ユキト 「俺が居ても変な眼で見られるだけだし、ぜひ買い出しに回らせていただこうかな」


ユネ  「う…うん……じゃ、お願いします!」




ナツキ 「買い出しは外に出れるからいいよなぁ~」


ユキト 「やっぱりそれが目的?」


タクマ 「外出許可証を出せ」


ナツキ 「当たり前だろ? …吉良。バンドの事を許可してくれたそうだな、サンキュ」


タクマ 「フン…。外出許可証は」


ナツキ 「もうちょい柔らかい表情できねーのかよ…。こっちはもう喧嘩腰じゃねーってのに…てか、校門で外出許可のハンコ押すのがお前の仕事かよ」


タクマ 「俺の勝手だ、そら。許可証」


ユキト 「ははっ…はい、これ」


タクマ 「変に寄り道するなよ」


ナツキ 「へーいへい、わかって-痛ッ!?」


フウタ 「うぉっ!?」


ナツキ 「おいおい…前見て歩けよー?」


フウタ 「す、すいません……。! あ…吉良さん! 吉良さん!!」


ユキト 「吉良…? おい、吉良?」


タクマ 「………」


フウタ 「俺ッスよ、ほら! 風太! 風太ッスよ! さんざん良くしてもらった東雲 風太ッス!」


ナツキ 「おい、呼んでんじゃねぇか、返事してやれよ」


タクマ 「君は此処の生徒じゃない。さっさと帰れ」


フウタ 「ちょ、吉良さん! どうして…俺ッスよ! 吉良さん! …はぁ…」


ユキト 「…うーん……東雲、君…だっけ?」


フウタ 「あ…はい…その…すいません…よそ見してて…」


ナツキ 「まぁ、別にいいんだけどよ…吉良の奴どうしてあんな態度なんだろーなぁ」


フウタ 「…わかんねぇッス…」


ユキト 「俺達でよかったら話聞くけど…」


ナツキ 「だぁな、どうする?」


フウタ 「ほ、本当ッスか…! 吉良さんのお友達の方なら…ちょっと相談したいッス」


ユキト 「と、友達…うーん…」




ユキト 「ふ、不良…?」


フウタ 「俺はここらの不良に言ったら必ず伝わるであろう暴走族、暴律駆ホリックの下っ端ッス」


ナツキ 「ほーん…そういや聞いたことあるかもなぁ…」


ユキト 「まぁたしかに夏樹はどっちかって言うと、ガラ悪いもんね」


ナツキ 「どーゆー意味だ…んで、吉良をお前が探してた理由につながるのか?」


フウタ 「吉良さんは……元暴律駆の総長ッス」


ユキト 「は?」


ナツキ 「んん…? 今何て…?」


フウタ 「いや…だからもともと暴走族の総長だったんスよ」


ユキト 「ま、まさかぁ…」


ナツキ 「おま…本気で言ってんのかよ…」


フウタ 「吉良拓真。暴走族の界隈では、林檎齧りんごかじりの怒帝どていと呼ばれたカリスマの総長だったんス。3年生やそれ以上の年齢が居る77人のメンツの中で一位を1年生にしてつかみ取ったんス」


ナツキ 「それが本当なら喧嘩も強い訳だぜ…」


ユキト 「一矢報いたお前もお前だけどな…」


フウタ 「ただ…最近あっちこっちのグループから目ェつけられて…今うちは壊滅状態なんス。んで…吉良さんが戻ってきたら…って…思ったんス」


ユキト 「なるほどなぁ…」


ナツキ 「お前の事情はある程度分かったけどよ…あいつの過去って知られちゃまずいんじゃねぇのか? だからお前が学校に来た時も知らんぷりだった…違うか?」


フウタ 「そう…かもしんねッスけど…」


ユキト 「でも…吉良が無視する理由にはならないでしょ。せめて話くらいは…さ」




ユネ  「遅いね」


チトセ 「何してるのかな…」


タクマ 「君たち」


ユネ  「あ…拓真君」


タクマ 「冬野と住江は?」


チトセ 「見てないよ…?」


タクマ 「そうか。ありがとう」




フウタ 「その、冬野サン…住江サン。ありがとうございました」


ナツキ 「なんもしてねぇけどな。ちょいあいつに声かけてみるわ」


ユキト 「うん、東雲も学校行きなよ。不良の事情ってあんまりわかんないけど…俺が言えた話じゃないんだけどね」


フウタ 「ウィッス…また…連絡お願いします」




(学校)

ユキト 「はい、ペンキ」


チトセ 「お…遅かったね」


ナツキ 「ほい、ハケ」


ユネ  「あ…ありがとう……。あれ、どこに行くの?」


ユキト 「ちょっと…うん」


チトセ 「あ! そうだ…。さっき吉良君が二人を探してたよ?」


ナツキ 「そか、んじゃ丁度いいな」




ユキト 「吉良」


タクマ 「…また外出か?」


ナツキ 「東雲から話聞いたぞ」


タクマ 「……余計なことを…それでなんだ、その情報を弱みに何かをしようと?」


ユキト 「そんなことしないよ。ただ、東雲の話くらい聞いてやればいいのにって思ったんだよ」


ナツキ 「お前の過去なんて知ったこっちゃねぇけど、ああ困った顔されるとこっちもほっとけなくてよ」


タクマ 「君たちには関係のない話だ」


ユキト 「関係…は…確かに無いけど…仲間だったんだろ…! なら話ぐらい聞いてやれよ」


タクマ 「…何時だ」


ナツキ 「…ん?」


タクマ 「いつどこに行けばいいんだ、話だけなら聞く。君たちにしつこく来られても迷惑だ」


ユキト 「まぁ理由はどうであれ…聞く気になってくれたなら…ね」


ナツキ 「お前から連絡してやれよ。ほら、これ連絡先」


タクマ 「…………ふん」




ユネ  「あ、おかえり」


ナツキ 「おうよ、さーて…俺も手伝うぜッ!」


ユキト 「…俺達は何すればいいかな?」


チトセ 「くぎ打ち…うーん……」


ユキト 「くぎ打ちはここを…こう支えてあげた方がいいよ…あっ」


(手が触れてェェ)


チトセ 「ぁっ…ごめん…」


ユキト 「ぃや…俺も…ごめん…」


ナツキ 「ほー…」


ユネ  「ふふふ…」



(雪斗の電話が鳴り)

ユキト 「…もしもし! ……え…? つららが…? わ、わかりました…今行きます」


ナツキ 「どした…?」


ユキト 「…つららが同じクラスの子を殴ったって」


チトセ 「なにかあったのかな…?」


ユキト 「ご…ごめん…俺…今日は帰るよ…!」


ユネ  「う、うん…! 気を付けて!」



ナツキ 「…つららちゃんが人を殴るなんて…そんなことするような子じゃねぇ」


チトセ 「大丈夫かな…」



(小学校)

ユキト 「はぁっ…はぁっ…はぁっ…すいません…」


つらら 「ゆき兄…」


みぞれ 「お兄ちゃん…」


ユキト 「ご迷惑をおかけします…先生」


センセイ「いえ…ただ…つららちゃんもみぞれちゃんも理由を聞いても答えてくれないんです」


ユキト 「…つらら…? どうして殴ったりしたんだ…?」


つらら 「言わない…」


みぞれ 「言わないもん」


センセイ「…つららちゃん、みぞれちゃん…どうして教えてくれないんだ?」

 

ユキト 「そうだぞ…先生も困ってるだろ…?」


つらら 「言っても怒らない…?」


ユキト 「なら、先に怒っとくぞ。なにがあっても人を殴ったり、叩いたりしちゃだめだ」


つらら 「ごめんなさい…」


ユキト 「おう、これで怒るのは終わりだ。…もうこれ以上は怒らないから言ってみろ?」


みぞれ 「……佐藤君が…」


ユキト 「佐藤君…?」


センセイ「同じクラスの男の子ですね」


つらら 「ゆき兄の事…変な奴だって…みぞれとわたしがお兄ちゃんといつも一緒だって…ばかに…ばかにしたから……うっ…うわぁぁぁぁぁぁん」


みぞれ 「お父さんもお母さんもいないんだろって…変な家だって……ぐすっ…言われて……」


つらら 「わたし達もゆき兄も変なんかじゃないもん…変じゃないもん! ぐす……ひぐっ……ぅ……」


ユキト 「……お前ら………ごめんな…俺のせいでそんな思いさせて…辛い思いさせて…ごめんな…兄ちゃんが情けないから……ぐすっ…そうだ…お前らは変なんかじゃない…ありがとうな…兄ちゃんを守ってくれて…俺がお前らを守ってやらないといけないのに…!」


みぞれ 「ううん…そんなことない…そんなことないもん…!」


つらら 「ごめんなさい……ごめんなさい……!」


ユキト 「…ぅっ…先生…すいません。俺がこんなんだから先生にもご迷惑おかけして…」


センセイ「いえ…自分も生徒の事をしっかりと見れていませんでしたので…」


ユキト 「殴ったつららは悪いかもしれません…が。俺はつららを叱りません、こいつは…俺の為にしてくれたんです、悪いのは俺ですから…佐藤君には謝りたいんですけど…どうしたら良いですかね…?」


センセイ「…佐藤君には自分からお話しておきます。自分のせいでもありますので…大丈夫です」




ユキト 「帰るか」


つらら 「…うん」


みぞれ 「………」


ユキト 「どうしたお前ら?」


みぞれ 「お兄ちゃん怒ってないの…?」


ユキト 「怒る…? どうして? さっき怒っただろ?」


つらら 「そうだけど……」


ユキト 「怒ってないって言ってるだろ…? ほら、帰るぞ」




ユネ  「結局戻ってこなかったね、冬野君」


チトセ 「本当だね…大丈夫だったのかな」


ナツキ 「大丈夫だろ」


ユネ  「だといいんだけど…」


ナツキ 「腹減ったな」


チトセ 「うん、みんな頑張って作業してたもんね」


ユネ  「住江君あんまり働いてた気がしないけど…」


ナツキ 「うるせぇ、不器用なだけだぞ」




ユキト 「…?」


つらら 「ゆき兄?」


みぞれ 「どうしたの?」


ユキト 「おい、吉良!」


タクマ 「…冬野か。…? その子達は…?」


ユキト 「俺の妹達だ、ほら。挨拶は」


つらら 「こんばんは」


みぞれ 「こんばんは!」


タクマ 「…こんばんは。妹…?」


ユキト 「あぁ。東雲にはちゃんと連絡したのか?」


タクマ 「明日の夜に会うことになった。妹さん達のお迎えか?」


ユキト 「…まぁ、そんなところかな…」


タクマ 「親御さんが迎えに行くんじゃないんだな」


つらら 「……いないもん」


みぞれ 「つらら…」


タクマ 「…いない…?」


ユキト 「……なぁ吉良。……よかったら少し話さない?」


タクマ 「…わかった」




ユキト 「…だから、俺達に父さんも母さんもいないんだ」


タクマ 「そうか……すまない」


ユキト 「どうして謝るの?」


タクマ 「俺は君の事情を全く知らなかった」


つらら 「お兄ちゃんは馬鹿じゃないもん…わたしたちの為に頑張ってくれてるんだもん…!」


みぞれ 「そうだよ! お兄ちゃんは何も悪くないもん…お父さんとお母さんが悪いもん…」


ユキト 「こら、つらら。みぞれ。いいんだ、俺の事情なんて吉良には関係ないんだからさ」


タクマ 「俺は君の様にそんなにも頑張れない」


ユキト 「…暴律駆の総長を掴んだのは吉良の頑張りだろ?」


タクマ 「そこまで話したのか、東雲は」


ユキト 「やっぱり他人じゃないよね。うん、いろいろ話してくれたよ」


みぞれ 「なになに? なんのおはなし?」


ユキト 「ちょっとお前らにはわからない話かもな…ほら、これでドーナツ買ってこい」


つらら 「…ほんと!」


みぞれ 「やったー! つらら、いこ!」


つらら 「…うん!」



タクマ 「…俺が暴律駆に入ったのは中3の春休みだった。当時の俺は荒れていたんだ。親からも見離されて、友達1人居なかった。ある日の話だ。夜、街を歩いていたら3人ほどの不良に絡まれた。喧嘩に自信はあったが複数人相手に勝てるわけもなく俺は殺されかけた。だが…俺は救われた。……俺の1つ前の総長だ」


ユキト 「…その時の総長は…?」


タクマ 「…その後、俺は頼んだ。暴律駆に入りたい、俺も強くなりたい。何より俺は居場所が欲しかった。だが…俺が入って5か月。その人は亡くなった」


ユキト 「…え?」


タクマ 「その時勢力を伸ばしつつあった暴走族グループ、慧南慈威エナジーの総長と、うちの総長との一騎打ち、総長は事故に遭ったんだ」


ユキト 「……」


タクマ 「…リーダーを失ったうちは壊滅状態だ。ではどうするか、残されたメンバーの1位が新しい総長になればいい。そう決まった。俺は死に物狂いでつかみ取った。グループでの地位が上がっていくにつれてどんどんと家族との繋がりが薄れていく感覚はあった…だが、それでもよかった。一人だけ、俺には味方が居たんだ。……姉さんだ」


ユキト 「姉さん…?」


タクマ 「姉さんだけは俺が何をしても、何をしようと見離さず…いつでも俺の味方で居てくれた…」


ユキト 「……でも…吉良が暴律駆を辞めた理由は…? 確かに…事故で総長が亡くなったのは…辛い出来事だったろうし…俺も…聞いてて辛い。だけど…吉良にとってはもっと過ごしやすくなったんじゃないのか…? あんまり…暴走族とかわかんないけど……ほら…リーダーがいなくなったから次は俺だ…みたいな…」


タクマ 「慕われていた総長だったからそれは無い」


ユキト 「そっか…それは…ごめん」


タクマ 「気にするな。暴走族という聞こえが良くないのは俺もわかっている。……去年の11月。姉さんが誰かに襲われた」


ユキト 「襲われ…た?」


タクマ 「今もずっと病院で寝ている。もう声を聴くことはかなわないだろう。そうまで言われた」


ユキト 「そ…そんな…だ、誰がやったかはわからないのか!?」


タクマ 「どこかの不良グループだろう。としかわからなかった。総長の姉…だから襲われたんだ…俺が…暴走族になんて入らなければ良かったんだ…」


ユキト 「…暴律駆をやめたのは…」


タクマ 「…姉さんがあんな目に遭ったのは俺のせいだ。……だから俺は辞めた、暴律駆を…。幸い学校のみんなにはバレることは無かった。俺が八重桜高校に入ったのはスポーツ推薦で生徒会長を目指すまで、勉強になんて全く触れなかった。この前は君たちを馬鹿にするようなことを言ったが…実際は俺の方が何もできない、できていない」


ユキト 「そ…それは違うだろ…お姉さんの事とか…俺にはわからないし…なんとも言えないけど…でも…吉良は頑張ってる! 吉良がやってることが正しいのかとか…それもわかんねぇけど…自分がすすんできた道を断ち切るなんて…そんな簡単にできる事じゃない!」


タクマ 「…冬野…」


ユキト 「俺もさ…最近までは…医者になりたい…なんて…思ってたんだ…」


タクマ 「……最近まで……妹さん達か」


ユキト 「うん…。目指すのは諦めたんだ…でも…後悔はしてない。あいつらの笑顔が俺の今の幸せだからさ…進学校かもしれないけど…俺は就職を目指すよ」


タクマ 「……すまなかった」


ユキト 「だからどうして謝るんだって…」


タクマ 「…いや…。いろいろとな……俺も話ができて気が楽になった、ありがとう」


ユキト 「いいんだ…俺も…お前の事知れたから」


タクマ 「…そうか。これ、妹さん達に」


ユキト 「え? いやいや、こんなの貰えないって!」


タクマ 「俺からの礼だ。冬野」


ユキト 「……サンキュ。…何?」


タクマ 「自分の夢を諦めるな…いや…何でもない…妹さんたちの幸せが君の夢なのか」


ユキト 「俺の…夢…」




つらら 「なにこれ!」


ユキト 「お前らにってさ」


みぞれ 「ドーナツがいっぱい!」


ユキト 「よかったな。あれ……メール? 何…え? うちのクラスの準備の進行度が遅いから…土日返上で…準備…明日土曜日も登校で( `・∀・´)ノヨロシク……なにこれ」


つらら 「えー…ゆき兄明日もお家に居ないの…?」


みぞれ 「…寂しい…」


ユキト 「…む…むむ……むむむ…うーん…」




(家 -電話-)

ユキト 「…そう。つららとみぞれを家においとくのもかわいそうだし…」


ナツキ 「んーと、んじゃよーするに…雪斗と一緒に居たいんだよな?」


つらら 「うん!」


みぞれ 「一緒がいい!」


ユキト 「ちょっと…うるさいぞお前ら…! みたいだな」


ナツキ 「なーら簡単じゃねぇか!」


ユキト 「……お?」




(翌朝 土曜)

タクマ 「どういうつもりだ…」


ユネ  「おはよう!」


つらら 「おはようございます…」


みぞれ 「おはようございます!」


チトセ 「あ、つららちゃんにみぞれちゃん!」


つらら 「千歳さんだ!」


ナツキ 「賑やかでいいだろ? なぁ、拓真」


タクマ 「誰が拓真だ…! どうして妹さんを連れてきたんだ…!」


ユキト 「準備が追いつかないって聞いたから俺も手伝わないとだし…だからと言ってこいつらに留守番させるのも…って。ダメ?」


チトセ 「…だめ?」


ユネ  「だめ?」


つらら 「だめ…?」


みぞれ 「だめー?」


ナツキ 「だめぇぇぇぇ?」


タクマ 「先生は許可したのか…!」


ナツキ 「新しい先生、すっげぇ気が弱くてチョろいからな。余裕で許可出たぞ」


ユネ  「須藤先生だったら許可してくれてるよ!」


チトセ 「うん!」


タクマ 「…勝手にすればいい…! 迷惑だけはかけないようにしてくれ」


ユキト 「わかったな?」


みぞれ 「うん」


つらら 「静かにしてる」




ユネ  「お昼休憩っ!」


チトセ 「ふぅ……」


ユネ  「本、好きなんだね」


つらら 「…! うん…」


チトセ 「すご…みぞれちゃん絵上手…!」


みぞれ 「えへへ…」


ナツキ 「なぁ、2人とも」


つらら 「?」


ナツキ 「図書室つれてってやろうか?」


みぞれ 「図書室!」


つらら 「行きたい!」


ユネ  「昼休憩だし私も行こうかな!」


チトセ 「住江君、冬野君は?」


ナツキ 「雪斗か…? あいつならちょっと出てるぞ」


チトセ 「そ、そう…。ありがとう」


ナツキ 「あいつになんかあるのか?」


チトセ 「ま…まぁ…お、お昼一緒に食べないかなって…」


ユネ  「ほーう…」


ナツキ 「そーかそか…んじゃあいつは恋敵だな」


チトセ 「えっ?」


ナツキ 「拓真と飯食うってさっき出てったぞ」


ユネ  「なにその展開」


ナツキ 「知らねーよ、ほら2人とも。行くか!」



(校庭)

タクマ 「どういう風の吹き回しだ」


ユキト 「どうもこうも、な?」



フウタ 「ちわッス」


タクマ 「風太! 今日の夜だったはずだ…どうしてここにいる」


フウタ 「冬野サンが俺を呼んでくれたんス」


ユキト 「俺が邪魔なら抜けるしさ。ほら…2人だったら話しづらいかなって…余計なお世話だったかな」


フウタ 「いや…俺も冬野サンがいてくれた方が気まずくなくて済むッス」


タクマ 「…気まずいってどういう意味だ」


フウタ 「そのまんまッスよ、今の吉良さんと1対1で話してたら笑っちまいそうッス」


タクマ 「どういう意味だ…?」


ユキト 「東雲…!?」



フウタ 「なんスか、その目。あん時と全然違いすぎて…ハハッ」


タクマ 「挑発のつもりか、俺は暴律駆から足を洗ったんだ」


フウタ 「挑発? 真剣に言ってんスよ、なにも吉良さんが生徒会長になったから言ってるわけじゃないッス。吉良さん言ってたッスよね。総長みたいなデカい器になるのが俺の夢だって」


タクマ 「いつの話をしているんだお前は」


フウタ 「柚香ゆずかさんが襲われて……一人乗り込んでやられたからって誰もカッコ悪いなんて思わないッス」


ユキト 「え…? 拓真…?」


タクマ 「…冬野…俺は君に対して1つ嘘を言った。姉さんを襲ったグループに俺は乗り込み…やられたんだ」


フウタ 「負けるのはダセぇなんてずっと言ってましたけど…負けたからって足洗ってる方がよっぽどカッコ悪いッス…! 暴律駆は皆兄弟…そう言ったのは吉良さんッスよ!!!!」


タクマ 「……黙れ…。黙れ!! カッコつけたもののボロボロに負けたなんてそんな話が許される訳ないだろうが!」


フウタ 「だからそれがカッコ悪いって言ってんスよ! 負けるのがカッコ悪いなんて考えが一番ダセぇってまだ気づかないんスか! 俺は今の吉良さんの生活を否定しに来たんじゃないッス。吉良さんが辞めてもうすぐ1年。まだ暴律駆は総長が居ないまま…頭を失ったまま彷徨ってんス。あんな辞め方無いッス、もうすぐ暴律駆は潰されます。戻ってきてほしいとはもう言わないッス、ただ…みんなにちゃんと一言欲しいッスよ」


タクマ 「帰れ」


フウタ 「……失望ッスよ…もうあんたはうちの総長じゃねぇ。兄弟の言うことぐらい信じてほしかったもんッス。冬野サン、ありがとうございました」


ユキト 「…ぁ…ああ……」


フウタ 「それじゃ」




ユキト 「あ。おい拓真!」


タクマ 「ついて来るな」


ユキト 「……っ…」



チトセ 「冬野くーん!」


ユキト 「え…? あ…神川さん」


チトセ 「どうしたの?」


ユキト 「いや…なんでも……あ…それで…どうかしたの…?」


チトセ 「い、いや…べ…べつに…た…たまたま見かけたから…」


ユキト 「たまたまって…わざわざ下靴に履き替えたの…?」


チトセ 「え? あああああいや、別に!」


ユキト 「そ…そう…? 俺まだお昼食べてないんだけど…神川さんは食べた…?」


チトセ 「ううん、私もまだ…」


ユキト 「移動してたら時間もないし…ここで食べない?」


チトセ 「! う、うんっ!」




ユネ  「え?」


みぞれ 「??」


つらら 「なに?」


ユネ  「そのお弁当だれが作ったの…?」


みぞれ 「お兄ちゃん」


ナツキ 「…なんつースキルの高さだ…ってことは…つららちゃんのそっちの弁当も…」


つらら 「うんっ、ゆき兄が」


ユネ  「す…凄すぎ…キレイ過ぎだよ…!」


ナツキ 「わ、悪い。よかったら一口いいか?」


みぞれ 「うんっ! どうぞ!」


ユネ  「わ…私も…いいかな…?」


つらら 「うんっ」


ナツキ 「う、うま…」


ユネ  「美味しい……冬野君料理上手すぎ…!」




ユキト 「へっくしゅい!」


チトセ 「風邪…? 大丈夫?」


ユキト 「誰か俺の噂でもしてるのかな…? そんなことないか!」




Chapter4

「吉良の過去、そして」 









 






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