Chapter1 「My Summer」
登場人物
冬野 雪斗 (17) ♂
本作の主人公。心優しく、とても明るい性格。
高校生にして二人の妹の面倒をみており、
なんとか3人で暮らしている。
中学、高1までは頭が良かった彼も、暮らしが変わり
2年では成績はいつも下位で、まわりから馬鹿にされ続けているが
本人はいつも笑っている。
神川 千歳 (17) ♀
夏休み前にりんご町に引っ越してきた女の子。
元気いっぱいで、ひと思い。困っている人を放っておけず
いつも明るく優しい子。
両親が肉屋をやっており、店員として両親を手伝っている。
新学期、雪斗のクラスに転校生としてやってくるが…?
住江 夏樹 (17) ♂
雪斗と小さなころからつるんでいる男。
面倒見がよく、義理人情に厚いといった性格で
雪斗を誰よりも友として大切に思っている。
雪斗とは大の遅刻仲間である。
冬野 みぞれ (10) ♀
雪斗の妹で、つららとは双子の姉。
兄である雪斗を慕っており、暮らしが苦しくても
いつも明るく笑っている。勉強はどちらかというと好きではなく
いつもつららにやらないといけないと注意されている。
絵をかくのが大好き。
冬野 つらら (10) ♀
雪斗の妹で、つららとは双子の妹。
真面目な性格でいつもみぞれに振り回されている。
本を読むのが好きで、いつも同じ本を読んでいるが
本人は飽きないらしく、雪斗が買ってくれたものだからと
お気に入りで大切にしている様だ。
店長 (?) ♂
序盤にちょろっとでてくる店長。
雪斗をクビにするためだけに出てくる。
須藤 尚壱 (28) ♂
雪斗の担任。いつも気だるげだが
生徒の事を大切に思っている。
雪斗の家庭環境を知っており、
心配している様だ。
峯原 真琴 (17) ♂
気が弱く、細い。
1年の時に同じクラスだった夏樹と仲が良く
その後雪斗と知り合った感じだ。
理系クラスで進路志望は大学。
夏期講習に参加しているため
夏の補習にやってきた雪斗とたびたび会うことに。
ユキト ♂:
チトセ ♀:
ナツキ ♂:
みぞれ ♀:
つらら ♀:
マコト/シンセキ ♂:
テンチョ/スドウ♂:
『』は心の声です
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テンチョ「冬野クン!!」
ユキト 「…はい…」
テンチョ「今月何皿目だ?」
ユキト 「か…数えてないです…」
テンチョ「数えきれないの間違いだろう…! キミが居ちゃあうちの皿がいくらあっても足りん、もう来なくていい。さあ、帰った」
ユキト 「ちょ、ちょっと待ってください! 次は…次はちゃんと…!」
テンチョ「キミの次はいったいいつ来るんだ?」
ユキト 「………すいません……ありがとうございました…」
(りんご町商店街)
ナツキ 「おーう雪斗、バイト終わりか? 早いな」
ユキト 「夏樹か。そうだな…終わりかな」
ナツキ 「早上がりってことだろ? ラッキーじゃねぇか」
ユキト 「クビだよ、クビ」
ナツキ 「…あー。そーかそーか……ま、んなこともあるだろうよ。ほら、こいつらやるから元気出せ」
ユキト 「キャベツ…? えっ、二玉も…」
ナツキ 「八百屋の息子が言ってんだ、持ってけ持ってけ」
ユキト 「…悪いな」
ナツキ 「気にすんな。おら、クビにしてもなんにしても早く帰れるんだろ? つららちゃん、みぞれちゃんが待ってんだから早く帰ってやれよ」
ユキト 「……あぁ。んじゃ、また」
ナツキ 「おう、帰り道気を付けろよ!」
ユキト 「……どうしよ…捨てる野菜とかもらう予定だったのに……はぁ…………あれ? こんなところに肉屋なんて…あったっけ……? くんくん………いい匂い…」
チトセ 「…あっ、いらっしゃいませ」
ユキト 「…あっ…どうも…こんばんは…」
チトセ 「こんばんは…!」
ユキト 「えっと……その…ここ…前から肉屋…でしたっけ…?」
チトセ 「い、いいえ! 7月末にこっちに引っ越してきて…最近オープンしたところです!」
ユキト 「で…ですよね、俺…ここよく通るんでまさか見落としてたなんてないよなって思ったんで…。いい匂いがしたんでつられて来て…」
チトセ 「もしかして…コロッケの匂いかな…よかったらお1ついかがです? あ、お代は結構ですので!」
ユキト 「い…いいんですか…?」
チトセ 「はいっ。今日、雨降ってるじゃないですか。お客さんあまり来なくて。たくさん余ってるので……お味は…どうですか?」
ユキト 「う…うま……こ…これ。すごい美味いです! んっ…んぐ……ごちそうさまでした!」
チトセ 「良かった…! お粗末様です」
ユキト 「……5個…5個ください」
チトセ 「買っていただけるんですか…?」
ユキト 「ほ…ほんと、冗談抜きで…すごく美味かったです…あんまり…お金持ってないんで…沢山は…買えないんですけど…妹たちにも食べさせてやりたくて…」
チトセ 「…! ありがとうございます…。50円です」
ユキト 「ご、50円でいいんですか…?」
チトセ 「はい、安さが売りですから!」
ユキト 「……ありがとうございます…!」
チトセ 「50円ちょうどお預かりしますっ。……どうぞ」
ユキト 「……あれ……多くないですか…?」
チトセ 「私からのサービスです、また…いらしてくださいね」
ユキト 「……! …はいっ!」
つらら 「みぞれ、ゆき兄帰ってきたかも…!」
みぞれ 「ほんと! でも…早くないかな…?」
つらら 「ほら、足音!」
ユキト 「…ただいま……おっと…わざわざ出迎えてくれたのか…」
みぞれ 「おかえり!」
つらら 「おかえりなさい!」
ユキト 「…っとと…とりあえず上がらせてくれな………」
みぞれ 「今日は帰ってくるの早かったね…! どうして?」
ユキト 「兄ちゃんな、役に立たないから帰らされちゃったんだ。はは…」
つらら 「大丈夫…?」
ユキト 「おう、ほらほら。俺の話はいいから! 腹減ってるだろ、すぐ飯の用意するから風呂入ってこい!」
みぞれ 「つらら、お風呂だって」
つらら 「うん…わかった」
ユキト 「おら、飯だ!」
つらら 「わー! コロッケ! どうしたの?」
みぞれ 「お兄ちゃんが作ったの?」
ユキト 「仕事の帰りにな、寄った肉屋さんで買ったんだ。凄く美味いし安いし。そのキャベツも夏樹がくれたんだ。感謝しないとだ」
みぞれ 「美味しそう…!」
ユキト 「だろ、さぁさ。食べよう!」
つらら 「いただきます!」
(電話)
ナツキ 「そか、喜んでくれたならよかった。電話してて大丈夫なのか?」
ユキト 「あぁ、さんきゅ。おう、つららもみぞれももう寝たよ」
ナツキ 「ならいいんだけどな。……お前大丈夫か?」
ユキト 「…? 何が?」
ナツキ 「みぞれちゃんつららちゃんの面倒見て、お前も登校して、バイト行って……なんでそんな苦しい道を選んだ? 聞いたぞ、親戚の人たちが引き取りに来たって」
ユキト 「……なんでだろうな…。俺もわからねぇよ…」
ナツキ 「……俺にはわからねぇ。なんでお前がそんなに頑張れるのかがよ」
ユキト 「……だね。俺も不思議だ……」
ユキト ~タイトルコール「My way」~
(2ヶ月前)
シンセキ「つららちゃん、みぞれちゃん! 僕たちと一緒に来るんだ」
つらら 「いや…私…ゆき兄と一緒がいい!」
みぞれ 「私も…! いや!」
ユキト 『6月の中旬ぐらいの事だった。母さんが死んだ。自殺だった。5月に会社が倒産し、失踪した親父の借金にまみれた生活に絶望したと、遺書が見つかった』
シンセキ「雪斗君! 君も何か言ったらどうなんだ!」
ユキト 「つらら、みぞれ!」
つらら 「なに…?」
ユキト 「兄ちゃんもな…お前たちと一緒に住みたい。だけど…できないんだよ、兄ちゃんが…お前たちを育ててやることはできないんだ…それに…お前たちのためなんだ」
シンセキ「そうだぞ…つららちゃん、みぞれちゃん」
ユキト 「本当に万が一俺と暮らせても…今までみたいに好きに遊びに行ったりできないし、欲しいものも買ってやれない。美味しいものだって食べられない…な?」
みぞれ 「それでも…私はお兄ちゃんと一緒がいいの!! ぐすっ…うぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
つらら 「…私も……ゆき兄と一緒がいい…!」
ユキト 「……お前ら……」
シンセキ「雪斗君…君はどうするんだ」
ユキト 「……おじさん……すいません……俺……こいつらと住みます…」
シンセキ「はぁっ!? 何を言っているんだ! 高校生の君に二人の子を養えるというのか!」
ユキト 「とりあえずは…母さんが残してくれたお金が少し残っています…ほとんど親父の借金返済に消えましたが…。簡単な事じゃないのはわかっています…一番。だけど…俺もこいつらと住みたいです……家族ですから……バイトして…しっかり登校もします…なるべく…なるべくこいつらに辛い思いはさせません……みぞれ、つらら」
みぞれ 「………ぐすっ…なぁに…」
つらら 「なに…?」
ユキト 「本当にいいんだな…?」
みぞれ 「うん…!」
つらら 「うん…! ゆき兄と一緒ならそれでいい」
シンセキ「……本当に知らないぞ…雪斗君…! お金の援助もするつもりはない…!! いいな! 本当にいいんだな!」
ユキト 「……はい。すいません……ありがとうございます」
(朝)
つらら 「ふぁぁぁぁぁ……ゆき兄どこいくの…?」
ユキト 「? あぁ、兄ちゃんな…学校行かなきゃダメなんだ!」
みぞれ 「…? いま夏休みだよ…?」
ユキト 「補習って言って、成績が良くない奴が呼ばれるんだ。夕方には帰ってくるから」
つらら 「ごはんは…?」
ユキト 「ごはんは炊いておいたし、味噌汁と卵焼きも作っておいた。野菜炒めは冷蔵庫に入ってるから、朝食べるならチンして食べろ? もし足りないって感じたら昨日のコロッケも残ってるからそれも温めて食べてくれ。朝も昼も一緒に居てやれないけど…ごめんな」
みぞれ 「うん…! わかった、いってらっしゃい!」
つらら 「いってらっしゃい…!」
ユキト 「おうっ! 知らない人が来ても玄関、開けるなよ! んじゃな!」
(りんご町商店街)
ナツキ 「おーっす」
ユキト 「はぁっ…はぁっ……悪い…少し遅れた…」
ナツキ 「おはようさん、随分と走ってきたご様子で?」
ユキト 「…あぁ…あいつらの朝飯と昼飯用意してたらこんな時間になってさ。すまねぇ」
ナツキ 「誰が責めるんだっての、んじゃま行こうぜ」
(-八重桜高校-)
スドウ 「遅いっ!」
ユキト 「す…すいません」
ナツキ 「須藤先生キツいっすよ…! 初日なんですから勘弁!」
スドウ 「アホか。初日だから遅れるなって話だ。さっさと上がれ」
マコト 「あ、冬野君住江君! おはよう!」
ユキト 「お、真琴。おはよ」
ナツキ 「あれ? 峯原お前も補習か? まさか違うだろ?」
マコト 「僕は夏期講習を取ってるから登校なんだ、二人も講習?」
ナツキ 「バカ二人がわざわざ講習とると思うか?」
ユキト 「ちょっと、夏樹。どういうことだよ。まぁ…その通りだけどさ」
マコト 「ははっ、バカなんてそんな。二人とも補習なんだね」
ナツキ 「そーゆーこった。おっと…1限目始まるな、また昼飯ん時な。行こうぜ雪斗」
ユキト 「あぁ。じゃな、真琴」
マコト 「うんっ、また!」
みぞれ 「…なにしよう?」
つらら 「お家からはでちゃいけないって…ゆき兄言ってたから……」
みぞれ 「……そうだな…」
つらら 「宿題は?」
みぞれ 「えー……」
つらら 「やるの。」
みぞれ 「……うーん…」
(昼)
マコト 「あれ…? 冬野君お昼は?」
ユキト 「…え? あぁ、俺はいいよ」
ナツキ 「俺達が食いにくいだろーが」
マコト 「はい、よかったらこれ」
ユキト 「サンドイッチ……え? いいの?」
マコト 「うん。お腹空いてるでしょ、僕が作ったんだけど…あ、いらなかったら全然大丈夫だから!」
ユキト 「さんきゅ。いただきまーす………んっ! 美味い、すげぇ美味いよ。これ」
ナツキ 「なんでまた昼飯がねぇんだって言いたいとこだけど…お前が持ってきてる方がめずらしかったな」
ユキト 「……まぁな。余裕があれば持ってくるけど…基本うちは余裕ないし」
マコト 「…ほんと…凄いよね冬野君。僕だったら冬野君みたいに生活できっこないし」
ナツキ 「だな、すげぇよ。お前は」
(補習・講習終了)
スドウ 「今日の補習はこれで終わりだ。明日も来いよ、ちゃーんとな」
ナツキ 「ふわぁぁぁぁぁぁっ……終わった終わった」
スドウ 「住江、お前ただ寝てただけだろうが」
ナツキ 「でも出席に意味があるんしょー…? 許して下せぇ」
スドウ 「ったく……おい、冬野。お前は少し残れ」
ユキト 「えっ…あ、はい…真琴、夏樹先出といてくれ」
マコト 「あ…うん…校門で待ってるね」
ナツキ 「まぁ、家庭の事だろうな」
マコト 「うん……。大丈夫かな」
スドウ 「……大丈夫か?」
ユキト 「…何がです?」
スドウ 「お前もお前の妹さん達もだ」
ユキト 「……はい……。なんとか…やってけてます。生活保護とか…貰えてるんで…それでもやっぱカツカツですけど」
スドウ 「……そうか。バイト、頑張ってるんだったな。冬野」
ユキト 「はい」
スドウ 「進路のことは考えてるのか?」
ユキト 「もちろん、就職です…。というか…就職しないと…お金が無いんで…」
スドウ 「……大学は?」
ユキト 「…まさか」
スドウ 「1年の時のお前の成績は俺も知ってる、常に学年上位だった。確かに今のお前は下から10や20かもしれん。だが、特待生は狙えないわけじゃないぞ」
ユキト 「……俺の進学はもういいんです。……すいません、妹たち…待ってるんで…」
スドウ 「ああ。呼び止めて悪かった、気をつけてな」
マコト 「あ、出てきた」
ナツキ 「意外と早かったな」
ユキト 「ははっ。すぐ終わったよ、帰ろう」
マコト 「うん、そうだね…!」
(りんご町商店街)
ナツキ 「おい、雪斗? そっちはお前の家じゃないだろ?」
ユキト 「本屋に寄りたくてさ、先帰っててくれていいよ」
マコト 「特に用もないし…僕も寄っていこうかな」
ナツキ 「なら…俺もそうするか…」
チトセ 「あれ…? あの人…昨日の……えっ! あの制服……八重桜高校の人なのかな……お母さーん! 私が9月から通う学校って八重桜高校だよね? …………………ってことは…同じ学校……?」
マコト 「冬野君小説とか読むんだ…?」
ユキト 「あぁいや…。俺は読まないよ」
ナツキ 「……つららちゃんか」
ユキト 「うん。あいつ、すごく本好きみたいでさ…お金に余裕ないからあんまり買ってやれないんだけど…いつも同じ本ばっかりなのも可哀相で……2、3冊買ってってやろうかなって」
ナツキ 「…ほんと…お前はできすぎな兄貴だよ」
マコト 「……うん」
ユキト 「真琴、よかったらおススメの小説とかないか…? ほんっとに難しすぎる本じゃなかったら大概喜んでくれるからさ…!」
マコト 「! なら、これとこれがおススメかな!」
ナツキ 「就職問題集………か」
(夕方 ~りんご町商店街~)
ユキト 「ありがとな、夏樹、真琴」
ナツキ 「おう、また明日な。お前ら」
マコト 「うん、また明日! さよならっ」
ユキト 「…まだ時間あるな、肉屋さん…寄ってみようか…………ここを右…だよな……! あった」
チトセ 「あっ」
ユキト 「あっ」
チトセ 「昨日はどうも…」
ユキト 「妹たち、すごい美味しいって喜んでくれました…ほんと美味かったです」
チトセ 「…いえいえ……そう言っていただけてとてもうれしいです…」
ユキト 「……ここで働いてらっしゃるんですか…?」
チトセ 「い、いえ…! 両親が営んでるんですけど…時々私が店番してるってだけなので……」
ユキト 「……あ。なるほど……!」
チトセ 「この近くに住んでらっしゃるんですか…?」
ユキト 「はい、学校もこの近くで……八重桜高校って所なんですけど」
チトセ 「……そうなんですかっ。私…9月から通う予定なんです、八重桜高校」
ユキト 「! 本当に…!」
チトセ 「……また学校で、よろしくお願いします」
ユキト 「学校でって言っても……これからお世話になりそうですけど…ははっ。豚肉200グラム、ください」
チトセ 「……! はいっ!」
(自宅)
ユキト 「ただいま」
つらら 「ゆき兄…! おかえりなさい!」
みぞれ 「おかえり!」
ユキト 「つらら、これ。兄ちゃんからのお土産だ」
つらら 「えっ! わっ……本だ! やったぁー!」
みぞれ 「私には! 私には!」
ユキト 「ほら、欲しがってた色鉛筆と画用紙」
みぞれ 「すごい! 色鉛筆いっぱい!」
ユキト 「…いつもしんどい思いさせてごめんな。よし、晩飯の用意するから机の片づけして、風呂入ってこい!」
つらら 「え、本はー!」
ユキト 「夏休みなんだからゆっくり読めばいいだろ? 本は逃げないぞ。こらこら、みぞれも…色鉛筆開けるのは後でいいから!」
みぞれ 「ぶー……」
つらら 「みぞれ、お風呂いこ」
みぞれ 「…うんっ!」
(電話)
ユキト 「はい…! 明日の16時……面接……わかりました…! ありがとうございます! 失礼します!」
「よし……さっと次のバイト先見つかって良かったな……うかるかはわからないけど…」
みぞれ 「お兄ちゃん、お風呂あがったよー!」
つらら 「さっぱりした!」
ユキト 「お、よし。んじゃ…食うか!」
みぞれ 「いただきます!」
つらら 「いただきます!」
ユキト 「おう、食え食え…! どうだ?」
つらら 「美味しい!」
ユキト 「…そか、ならよかった……足りないなら兄ちゃんのも食べていいからな」
みぞれ 「……美味しいよ! いつもありがとう! お兄ちゃん!」
(寝る前)
ユキト 「…そういえばお前ら9月は運動会か」
つらら 「うんっ、運動会!」
ユキト 「なんとか見に行きたいな」
みぞれ 「来てほしい!」
ユキト 「だな! なるべく行けるようにするよ。おら、電気消すぞ」
みぞれ 「おやすみなさい!」
つらら 「おやすみなさい!」
ユキト 『こんな毎日の夏休みを俺は送っていた。どれだけ苦しかろうとこいつらと暮らせたら幸せだった。進路や周りの人間との関わりで悩むことは多々あるけれど。後ろ向きでなんかいられない』
(新学期)
つらら 「雑巾持った?」
みぞれ 「持った!」
つらら 「宿題!」
みぞれ 「持った!」
つらら 「連絡ノート!」
みぞれ 「……持ってない…あれ…」
ユキト 「おいおい! 初日から遅刻とかやめとけよ! 俺もだけどさぁぁぁぁ! ああああああった! ほら! みぞれ! これ!」
みぞれ 「あ! ありがとう!」
ユキト 「鍵はつららに渡しておくな。無くさないようにしろ! 兄ちゃん学校からバイトにそのまま行くから帰ってくるの10時ぐらいになるけど…ごめんな。 昼飯は冷蔵庫の中に入ってるから! おら、鍵しめるから出た出た!」
つらら 「うん。ゆき兄もバイトがんばってね」
ユキト 「おう! 遅刻しないようにな! 頑張ってこい! 行ってきます! いってらっしゃい!」
みぞれ 「うんっ! いってらっしゃい!」
つらら 「いってきます…!」
ナツキ 「安定の遅刻さんだな」
ユキト 「俺を待たなきゃ遅刻しなかったでしょ?」
ナツキ 「まぁな。どうせ遅刻することわかってんだしのろのろ行こうぜ」
ユキト 「それでいいのかな…?」
ナツキ 「良くは無い。悪いとも思わん」
ユキト 「いや……絶対…」
スドウ 「悪い。また遅刻かお前ら」
ナツキ 「……初日だからいいじゃ-」
スドウ 「アホか」
ユキト 「この前初日だから尚更だめって言われたとこだろ…」
ナツキ 「は…はは…」
スドウ 「お前らをどやしたいとこだが、そんなことより大事な話がある。さっさと座れ」
ナツキ 「へーい」
ユキト 「よいしょっと………」
スドウ 「新学期早々に遅刻するバカが居て、少しばかり遅くなったが……入れ」
チトセ 「……はいっ!」
スドウ 「隣町から引っ越してきた、神川 千歳さんだ。今日からお前らと一緒に勉強していく仲間だ。仲良くやれよ」
チトセ 「神川 千歳です、よろしくお願いしま………え?」
ナツキ 「…? どうした、雪斗」
ユキト 「………お?」
スドウ 「なんだお前ら知り合いか? まぁいい。神川、お前は住江の後ろだ。住江、あんまりちょっかい出すなよ」
ナツキ 「あんまりってそもそも出してねぇっての……へーい」
スドウ 「一限目は始業式だ、遅れるなよー。聞いてるか? 冬野、住江」
ナツキ 「へーいへい」
ユキト 『ただ、顔を知っているだけの女の子のはず。だけど俺はその時、心のどこかでときめきを感じた』
終
Chapter1
「My Summer」