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F1201号室 林さん>>Scene.06
「本当に鬼でしたね」
「あ?」
「師長から『鬼上司』の顛末を聞きましたよ。その巨体で子供を怒鳴りつけるなんてまずいっすよ谷脇先生」
「不可抗力だ」
「そんなこと言って」
「あっちから仕掛けてきたん、だ!」
まるで子供のように口を尖らせてそっぽを向く谷脇。難波は、変なところで子供っぽいんだなとガラスに映った谷脇の顔を冷めた目で見ていた。
「ところで難波よ?お前それを言いに来たのか?」
「あっ違います!」
「言わなきゃ忘れてただろ」
「からかわないで下さい。あの、林さんの数値ですけれど、落ち着いてました」
「ふーん……」
「谷脇先生?行かないんですか?」
「お前が師長といちゃついてる間にもう行った」
「いちゃっ……」
「まずいっすよ難波先生。その若さで師長を、」
「ヘンな事言わないで下さい!!」
一連のやりとりが終わった後、半透明の幼い表情はふっ、と元の精悍さを取り戻した。谷脇はおもむろに白衣の袖をたくし上げた。赤からやや変色した斑点がものものしい。
「じゃー、ちっと説教でもしてくっかなー」
◇◇◇◇◇