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異界物流を独占したら、王も神も頭を下げてきた件 ~戦わずに世界の補給線を握ってます~   作者: 金木犀の夢華


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商人国家は、頭を下げに来た


白い空間に、見慣れない通知が浮かび上がった。


発信元:人間国家連合・商業評議会

要件:正式会談要請

名目:通商・物流契約の締結


「……来たか」


俺は小さく息を吐く。


神は恐怖で、

魔王は力の限界で、

契約の席に着いた。


では人間は?


「代表は?」


配下が即答する。


商人国家アルセリオの宰相兼、国家主席です。武力国家でも宗教国家でもありません」


俺は頷いた。


「合理的だな」



転送されたのは、異空間に造られた豪奢でも簡素でもない、落ち着いた会議室。


そこに立っていたのは、一人の中年の男だった。


武器はない。威圧もない。

だが――目が違う。


「人間国家連合を代表し、参りました」


男は名を名乗る前に、深く、頭を下げた。


神のような傲慢もない。

魔王のような矜持もない。


あるのは、

“交渉に来た者”の覚悟だけ。男は顔を上げ、真っ直ぐ俺を見る。


「力では、あなたに敵わない。信仰でも、恐怖でも、手が届かない」


だから――



「1人の商人として、商談契約をお願いに参りました」


太々しい表情の男に俺は、少しだけ笑った。


「いい判断だ」



商人国家アルセリオ。数ある惑星の中で彼らは、最初に異変へ気づいた。

物流が不自然に止まる世界。補給が崩壊する戦線。神託よりも、物の流れが重要だという事実。



「原因不明で発動しなかった神の奇跡。補給を確保出来ずにいた魔王軍が、勢いを取り戻した現状。神も魔王も、あなたと契約した。ですよね?」



男は言葉を続ける。


「ならば人間も、同じ土俵に立つべきだと考えました」


俺は腕を組む。


「条件は?」


「三つ、提示します」


男は紙ではなく、契約草案を差し出した。緊張しているのか額に脂汗が浮かぶ。


「一つ。人間国家間の物流は、すべて正式ルートを通す」

「一つ。価格・供給量は透明化し、不正干渉を許さない」

「一つ――」


男は一瞬、言葉を選び。


「あなたを、神話にも伝説にもしない」


俺は、目を細めた。


「……ほう」


「崇拝すれば、いずれ歪む。恐れれば、誰かが利用する」


だから――


「あなたは、“管理者”としてのみ扱う」


静まり返る空間。


配下が息を呑む。


神ですら、

魔王ですら、

そこまで割り切れなかった。


「面白い」


俺は、正直に言った。


「その条件、嫌いじゃない」



俺は、こちらからも条件を出す。


「人間側の条件は理解した」

「では、俺から三つだ」


空間に、契約条文が浮かぶ。


「一つ。物流は中立。戦争の勝敗を操作しない」

「一つ。人為的な独占が起きた場合、即停止」

「一つ――」


男を見る。


「人間同士の争いに、俺を引き込むな」


男は、即座に頷いた。


「それが一番、信用できます」


契約は成立した。



物流が、人間世界へ流れ始める。


だがそれは奇跡でも神罰でも魔王の威光でもない。


ー安定された物の流れーだ。


それがどれほど価値のあるものかを、人間は知っている。


男は、最後に言った。


「あなたは、世界を支配していない。だが――世界は、あなたを無視できない」


俺は答えなかった。


ただ、契約書を閉じる。



白い空間に戻ると、

新たな通知が、いくつも積み上がっていた。


神。

魔王。

人間。


すべてが、同じルールで並んでいる。


「……ようやく、揃ったな」


世界は、もう理解した。


剣でも、魔法でもない。

信仰でも、恐怖でもない。


流れを握る者が、上に立つ。


俺は次の契約候補を眺めながら、静かに呟いた。


「さて……次は、誰が学ぶ?」


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