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異界物流を独占したら、王も神も頭を下げてきた件 ~戦わずに世界の補給線を握ってます~   作者: 金木犀の夢華


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3

魔王は、力で奪えると思っていた


異界の深淵。

黒き玉座に座す者――魔王は、苛立ちを隠さなかった。


「補給が、来ない……?」


報告に来た配下の魔将が、片膝をつく。


「はっ。侵攻中の三世界にて、武器・糧食・魔力触媒の供給が停止しております」

「原因は……不明」


「不明だと?」


魔王の指が、玉座を軋ませる。


あり得ない。

魔王軍は、奪い、殺し、支配することで成り立っている。


補給が止まるなど――

戦う以前の問題だ。


「神どもか?」


「それが……各世界の神々も、混乱している様子で」

「“外部から遮断された”と」


その言葉に、魔王は嗤った。


「遮断、だと?」


神を遮断できる存在。

もしそれが事実なら――


「面白い」


魔王は立ち上がる。


「ならば、その遮断とやらを――力で引き剥がすまでだ」



白い空間。


俺の前に、異様な通知が表示された。


発信元:魔王領域

内容:物流中継領域への侵入行為を検知


「……やっぱり来たか」


配下が一瞬だけ緊張する。


「迎撃命令を?」


「いらない」


俺は首を横に振った。


「“迎撃”は、同じ土俵に立つ行為だ」

「魔王には、それが理解できていない」


監視画面に映るのは、

無数の魔王軍。


空間を裂き、

次元を踏み越え、

《物流中継領域》へ侵入しようとしている。


だが――


「……進めない?」


魔将の声が、空しく響く。


剣も、魔法も、呪いも、

すべてが“途中で止まる”。


壁があるわけじゃない。

敵がいるわけでもない。


そこに“道が存在しない”だけだ。


「どういうことだ……!」


魔王自身が居城より力を送り出す。その圧倒的な魔力が、空間を歪ませる。


軋む空間。ガラスを引っ掻いたような軋み音に、部下たちが思わず耳を塞ぐ。


「馬鹿な。我の魔力が通用しないだと?」

不可思議な力に抗う魔王。


それでも――

魔軍は一歩も、進めない。



「魔王は、世界を壊す力を持っている」


俺は淡々と状況を眺めながら言った。


「だがな」


指先で、契約領域を示す。


「物流は、“壊す”ものじゃない」

「“通す”か、“止める”かだ」


魔王軍がどれだけ暴れようと、

物流網には触れられない。


なぜならここは――

力が介在する前の領域だから。


「侵入行為は、契約違反以前の問題だ」


俺は通知を開き、

一文だけ返した。


――《警告:不正干渉を確認。これ以上の接触は、全領域遮断対象とする》



警告を受け取った魔王は、沈黙した。


「……遮断、だと?」


次の瞬間。


魔王領域へ向かう、

すべての物流が――消えた。


前線の軍が止まる。

後方の工廠が沈黙する。

魔力循環が、途切れる。


「まさか……」


魔王は、初めて理解する。


奪えないものがある。

壊せないものがある。


そしてそれは――

力の上に存在している。



白い空間で、俺は静かに告げた。


「魔王」


返事はない。

だが、聞こえている。


「取引を知らない者ほど、物流を軽んじる」

「そして軽んじた者から、真っ先に詰む」


画面の向こうで、

魔王が歯を食いしばる。


この時点で、勝負は終わっていた。


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