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地球とは異なる世界。
正確には、多次元世界の狭間。
そこに存在する白い空間で、俺は無数の映像を見下ろしていた。
映っているのは、幾つもの世界、幾つもの文明、幾つもの戦場。
「……は?」
差し出された報告書に目を通し、思わず声が漏れる。
「コイツ、これで契約違反三回目か」
配下が気まずそうに視線を逸らした。
俺は盛大なため息をつく。
最近、やたらと注文が多い。
特に増えているのが、異世界の産物を別世界へ取り寄せる案件だ。
――食料、武器、薬、聖具。
時には、神が起こした“奇跡”そのものすら。
注文されれば送る。
俺と交わした契約を守る限りは。
守るならば、な。
俺が管理しているのは、
世界と世界を繋ぐ《物流中継領域》。
ここを通さなければ、
どんな世界にも物は届かない。
それは神であろうと、魔王であろうと例外じゃない。
「契約違反者は、許さない」
俺は注文履歴が映し出された画面を、指で軽く弾いた。
「それが、神だろうと魔王だろうとな」
画面の一つが暗転する。
その世界への配送を――停止した。
――異世界の、とある惑星。
この世界の管理者。
すなわち“神”と定義された存在は、満足そうに空を見下ろしていた。
「今回も良いスキルが用意できたな」
どこから仕入れたのかも分からない情報を元に、
神は転生者へスキルを授ける。
「これを上手く使えば、地球のような豊かな世界に――」
だが、その言葉は途中で止まった。
神の視界に映るはずの“反応”が、どこにもない。
「……届いていない?」
訝しむ神の知らない場所で、
白い空間に立つ俺は、契約書を閉じていた。
スキルを与えれば世界が回る?
違う。
それが“届くかどうか”を決めるのは、俺だ。
勘違いしている神は、今日も多い。
――だから、仕事が減らない。




