表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『辺境伯夫人の安眠計画 〜二度寝を邪魔する「破滅フラグ」は、この手で叩き潰させていただきます〜』  作者: こもり詩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/26

第18話:ドジっ子聖女と、無理やり雇用された竜(ノア)

「……っ、リゼットーーーー!!」


カシアンの絶叫が夜空に響く……黒嶺竜の口から放たれた、すべてを焼き払うはずの黄金のブレス。だが、その光の束は私のバルコニーに触れる直前、まるで「透明な壁」にぶつかったかのように四散し、光の粒子となって消えていった。


(……ふぅ。光の屈折率を書き換えて、別の方向へ逃がしたわ。眩しいのは安眠の敵なのよ)


「なっ……ブレスを、消した……!?」


絶句するカシアンを尻目に、私はさらに指を動かす。寝不足で限界の脳が、逆に冷徹な演算を加速させていく


「ジャネット。あの子、まだやる気みたいだけど……『重力負荷』を当てるから、衝撃に備えて」


「承知いたしました、奥様」


私は視界の設計図でドラゴンの座標をロックする


(ランクS……。個体名は『黒嶺竜』。……ふん、重厚な装甲ね。なら、中身を弄るより、物理的に重くして動けなくしてあげるわ!)


【術式展開:局所的重力増幅】


「ガッ……!?」


空中で優雅に旋回していたドラゴンが、突然、見えない巨大な槌で叩かれたように高度を落としていく。翼が悲鳴を上げ、その巨躯が有無を言わさず地面へと引き寄せられる


「……逃がさないわよ。私の睡眠時間を奪った代償は、労働で返してもらうんだから」


私はさらに畳みかける。ドラゴンの足元に、魔力の鎖――**【制約のコード】**を編み上げ逆らえば心臓を強制的に止める、極悪な利用規約


「グオォォォ……ッ!」


ドォォォン!! と地響きを立てて、黒嶺竜が裏庭に墜落した。 ……と、ここで私は勝利のポーズを決めようとして、派手にやらかした


「よしっ、決まった……ひゃわっ!?」


興奮して一歩踏み出した足が、墜落の余波で揺れた床に滑り、私はバルコニーの手すりに向かってダイブ。


「ごふぉっ!!」


勢いよく顔面を打ち付け、私はそのままカエルのように床にへばりついた


「……あ、鼻が……。鼻の中に、熱い液体(鼻血)が……」


「リゼット……! 君が、君がやったのか……?」


カシアンが剣を握りしめたまま、バルコニーの私を見上げる。私は慌てて、鼻を押さえながら「儚げな聖女」を装う


「……旦那様……。私、怖くて……必死にお祈りを……うぅ、鼻が……(※マジで痛い)」


「お、祈り……? 祈りだけで、古の王を墜落させたというのか……! そして、その反動で鼻から血を流すほどに命を削って……!!」


カシアンは、もはや恐怖を通り越して、神々しいものを見る目で私を凝視している。そこへ、地に伏したドラゴンが最期の抵抗を見せようと首をもたげたが、私の(不機嫌と痛みで据わった)視線とぶつかった瞬間、ピタリと動きを止める


(いい? あなた。今すぐ静かにしなさい。さもないと、あなたの存在そのものを消し去るわよ)


「……クゥゥゥン……」


先ほどまでの暴君が、嘘のようにしおらしくなった


「……懐いた、のか? あの黒嶺竜が、リゼットに……?」


「……ええ。きっと、この子も寂しかったんですわ。……名前は、『ノア』と呼びましょうか」


【ミッション完了:黒嶺竜の捕獲・再雇用】 【副作用:カシアンの信仰心が、鼻血のせいで「命を懸けた聖女」として修正不能なレベルまで増大しました】


「……奥様。素晴らしい『新規契約』でございますね」


ジャネットが私の背後で、鼻血を拭くためのハンカチを差し出しながら一礼する


「これでこのドラゴンが周囲の魔物を間引いてくれるでしょう。……奥様の安眠は、このノアの働きにかかっておりますわね」


(そうよ。明日からは、このノアにパトロールをさせて、私は二度寝を謳歌するの!)


【黒嶺竜ノアの視点:絶対零度の視線】


我は王であった。だが、あのバルコニーに立つ「娘」の瞳を見た瞬間、我は理解した。


逆らえば、消える。肉体が滅びるのではない。我という存在の構成そのものを、あの娘は「不要な不具合」として消し去るつもりだ。


(……それにしても、あの娘。あんなに恐ろしい力を使いながら、なぜ手すりに顔をぶつけて鼻血を出しているのだ? ……もしかして、我を圧倒するための高度な儀式なのか?)


我は首を垂れる。王のプライドなど、絶対的な「理」の前では無意味だ。


(この娘の庭で、大人しく門番をしていよう。……その方が、我も長く生きられそうだ)


伝説の竜は、そうして静かに目を閉じた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ