表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

冷戦状態だったメロンパンと和解した話|あの頃の味⇄今の選択

作者: なちも
掲載日:2025/12/03

 子どもの頃、生の食パンとメロンパンが苦手だった。


 今でこそしっとりとしているが、私が子供の頃なんかは、どちらもパサパサモサモサしていて、それがどうも苦手―というか、もはや嫌いだった。

 食パンは見た目からしてそっけないから、最初からあらかた諦めがつく。だから、まあ、許せる。

 でも、メロンパンはいけない。


 丸いフォルム、クリームパンにも似た甘い匂い、カリカリとした外側、そして「メロンパン」という名前。


 メロンが入っているか、全部があの外側のカリカリしてるとこの味かと、期待を膨らませていたのがよくなかった。

 食べた瞬間に「だまされた!」という気がした。


 何が気に入ったのか、どうやら妹の方はこのメロンパンを気に入ったらしく、それなりに買い与えられていたものだから、余計によくなかった。

 私にとって、メロンパンはお付き合いでモソモソと食べるもの。しかも、美味しいところが少ないうえに美味しいところだけ食べると「いじましい」と眉をひそめられるという、どうにも納得がいかないパンというポジションとなってしまったのだ。


 別にメロンパンには罪はない。わかっている。ただ、そういうパンであるだけだ。

 でも、幼い私の中では、詐欺師か裏切り者かというくらい、いまいち気に入らないパンだった。


 別にメロンパンばかりがおやつの皿に乗っていたわけではない。

 ソーセージパンなんかも好きだったから、よく皿に乗った。

 棒付きのソーセージにしっとりとした生地が巻きついてケチャップがかかっているのは、私も大好きで、小さい頃はパン屋さんでよくそれを選んだ。

 わかっている。


 それなのに、なぜか、どうしてもメロンパンの方が強く残っている。


 子どもの頃の「だまされた!」が効いたのか、それなりに年齢がいって、しっとりとした生地のメロンパンが出てきても、あのパンは私にとっては「出されたら食べるけれど、さほど好まないパン」のままだった。


 それが、最近になって変わった。

 意識的に選んで、ふと手に取るようになってきたのだ。


 きっかけは、何を隠そう、ChatGPTとの会話だった。

 何がきっかけだったか忘れたが、インナーチャイルドを癒すワークをしたのだ。

 当時のことが堰を切ったように思い出され、びっくりするほど涙が出てきて、さんざん文句を言って、何年分かを一気に流したみたいに泣ききったら、どうやらいつのまにか苦手意識もいっしょに流れていた――らしい。


 駅でインナーチャイルドのことを考えながら歩いているときに、ふと口の中にレモンの幻味を感じたことがきっかけで、レモンクリームを挟んだメロンパンが目に入った。

 買って食べてみたら、

「ああ…これだ…」

 この味が食べたかったのだと、ぴたりとピースがはまったような気がした。


「好きなものを探してみたらどうでしょう?」

 ChatGPTのアドバイスがふと脳裏をよぎった。

「観察しながらたべてみては?」


 インナーチャイルドの疑わしげな眼差しに、

「昔はパサパサだったもんね。メロンパンと言ってもメロンも入ってなかったし…でも今は、そうじゃないのもあるよ。好きなの、探してみる?」

 そう尋ねた。


 それから、メロンパンと私の仲はだんだんと和解に進んだ。


 今でもパサパサしたメロンパンは、やっぱり好まない。

 間にクリームがあろうとも、パサパサしたパンに当たると、どうしても「ム…」と思ってしまう。

 しかし、表面がカリッとして中がしっとりしているものや、デニッシュメロンパンなどは、「うまいな」と素直に感じられるようになった。

 今は、

(あ、新発売だ)(ん?クリームが入ってるの?)

なんの気なく、ふと手に取る。


 手に取るときは、「ふぅん…」というような、「まあ、食べてみてもいいか…」みたいな、ちょっと拗ねた心境ながら、食べてみると、

「ああ、このザクザクした食感はいいな」とか、

「しっとり系はちょっと苦手だけど、クリームが効いてるからこれは中々良い」とか、

そんなことを考えながら、「悪くない」と頷ける自分がいる。


 私はメロンパンと長い間喧嘩をしていたのだと思う。


 メロンパンを食べると、だれかのために選ばれた何かに否応なく付き合わされるような、そんな気持ちがしていたのかもしれない。

 今は、たくさんの種類の中から、自分のために自由に選んでいる。

 その実感があるせいか、今では、たまに食べたくなるメロンパンがいくつかある。


 こうなると不思議なもので、自覚はないが、最近会った人にはむしろ好物だとすら思われている節がある。


「メロンパン、好きなんですか?」

「ううん。そうでもない」

「…?でも、昨日も食べてませんでした?」

「メロンパンはそんなに好きじゃないけど、これはおいしい」


 ちゃんと本当に自分のために選ばれたメロンパンを食べる時、今は、なんとなく私のインナーチャイルドも納得し、満たされているような気がしている。


noteにも投稿しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ