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はーふ&はーふ  作者: 味噌猫


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4/25

買い取りをお願いします

何処かから聞こえる鳥の囀りで目が覚める。外はすっかり明るくなっていて、気持ちの良い朝を迎えていた。


「⋯っうー⋯ぁぁ⋯」


眠りから無理矢理叩き起こす目覚ましも無い。


時間に追われる事もなく自然に目が覚めるまで眠れる、そんな幸せを感じながら伸びをして身体を起こす。


「うー⋯ん」


生来か吸血鬼な為か、この身体は朝が弱めのようだ。


数分ぼやっとしながら身体のエンジンが温まるのを待つ。


「⋯はぁ⋯起きますか」


畳んでおいた服を着てカーテンを開け外を見る。


(改めて見てみると⋯動画で見た海外の街並みみたいだ)


早朝な為か人通りは少なく、ゆっくり散歩をしているであろうご老人。


荷車を引き荷物を運ぶ人と足早に駆けていく人。


槍や斧を持ち歩いているハンターのような人達も居た。


(やはりここは違う世界⋯夢オチってわけじゃなかったんだね)


外套を羽織り身だしなみの最終チェックをする。


鏡が無いので手で確かめる⋯髪が跳ねている様子はない。


少し気になって襟元や袖の匂いを嗅いでみる。


(く⋯臭くないよね⋯?)


汚れが無いかじっと服を見ていると、鑑定結果が出てきて 初期服 と表示された。



部屋から出て階段を降りると食堂の床を掃除している女将さんが居た。


「おはようございます」


「おはよう、よく眠れたかい?」


「はい、おかげさまで⋯昨日はありがとうございました」


「今食事を出すから待ってておくれ」


「いえ、朝はあまり食べないので⋯」


申し訳なさもあるし実際にお腹が減っているわけではないので辞そうとする。


「そうなのかい?でも朝はしっかり食べないと、これから出かけるんだろう?」


「はい、ですが本当に普段から朝は食欲が無いので⋯」


「うーん⋯ならこれをもっていきな。おやつみたいな物だけどお腹が空いたら食べておくれ」


そう言いながらテーブルにある小さな編み籠から紙に包まれた何かを取り出し手渡してくる。


「あの⋯これは?」


「ちょっとしたおやつだよ、売り物じゃなくて子供にあげるもんだから気にせず持っていきな」


「ありがとうございます、頂きます」


「買い取りを頼むならここを出て通りを門のある方へ向かえばいいよ、他と比べてやたらでかい建物があるからすぐにわかる。さあ行っておいで、あんた可愛い顔してるから変なのに引っかかるんじゃないよ」


「はい、行ってきます」


包みをポケットにしまい入り口から外へ出る。


先程よりも人が増えて朝の出勤時間という感じ、の異世界バージョン。


とりあえず門があった方向へしばらく歩いていると最初は気のせいだろうと思っていたがすれ違う人の多くがこちらを見ている。


(な⋯何か見られてる⋯?)


以前なら自意識過剰かと笑われるだろうが今の状況では明らかに多数の視線があるとわかる。


(何か目立つような⋯目立つ⋯あぁ⋯)


周囲に見られながらこちらも辺りを見回しある事を確認する。


ざっと見渡す限りやはり銀髪が居ない。


多くが金髪のような色合いで中には茶色に赤や青など、銀髪の自分が言うのもなんだが地毛で青とか凄いなと思う。


(昨日あった人達や女将さんの反応だと銀髪だから何かあるという感じでは無かったけど、何も調べす人前に出て大丈夫だったかな⋯)


既に遅いがなるべく早く着くように足早に道を歩いていく。


しばらく歩くと女将さんの言ったように周囲とはまるで違う造りの大きな建物が見えてきた。


(ここかな⋯?多分⋯ここだよね)


入り口と思わしき扉は頻繁に人が出入りしており、少し離れた場所には何の建物かを表す看板が設置されていた。


看板が見える位置まで近付きじっと見つめてみると


鑑定結果 看板


(いや、そうだけどさ⋯)


出入りしている人々や周囲から聞こえる会話からするとやはりここがギルドであっているようだ。


「⋯大きいな⋯」


建物を見上げながら思わず感想が溢れる。


「そうだろう?」

「!?」


呟きに応える声があるとは思わず身体が跳ねる。


振り返ると目に入ったのは赤。


見上げるとゴツくて赤い色が目立つ鎧を着込んだ大きな斧を背負うスキンヘッドのおじさんが居た。


「おっと⋯驚かせてしまったな。悪かった、許してくれ」


「いえ⋯少し驚いただけなので⋯」


おじさんは周囲を見回し再びこちらに視線を向ける。


「⋯お嬢ちゃん1人か?ギルドに何か依頼でも出しに来たのかい?」


「えっと⋯依頼ではなく薬草を買い取って貰おうかと⋯」


「そっちか、さっきの反応から見るにここに来るのは初めてだろう?」


「はい」


「それなら入って右に進んで奥のカウンターだ、職員が暇そうにしてるからすぐにわかる。正面と左の並びは受付だから間違えないようにな」


「あ⋯はい、わかりました。わざわざありがとうございます」


「いいさ、じゃあな」


ひらひらと手を振りながらガチャガチャと重そうな音をたてながらおじさんは門の方へ去って行った。


(すごい歴戦のハンター感⋯、これからひと狩り行くのかな⋯?)


気を取り直して扉を開け⋯開け⋯


(重いな!?)


こんなに重くする必要があるのかと苦労しながら開けて中に入る。


扉を開けるのに苦労している姿が目立っていたのか中にいる人々の視線がこちらに集中していた。


(ひいぃぃ⋯)


恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じ、とりあえず教えてもらった右奥のカウンターの方へ早足で向かう。


一瞬驚いてすぐににこにこ顔になったお姉さんが迎えてくれた。


「いらっしゃいませ、買い取りでしたら依頼品をこちらへどうぞ」


「あ⋯はい、これをお願いします」


トレイのような物を出されたので薬草の束を乗せてお返しする。


「お預かりします、少々お待ち下さい」


お姉さんが少し奥へ行き、色々な器具のある棚で作業を始めた。


少し待つ事になりそうなのでギルドの中を見回してみる。


天井を見上げる、建物の大きさから上に何階かフロアがあるのだろう。


人が並ぶ列の方を見ると何人かと目が合うがすぐに逸らされる。


(以前は気にしなかったけどこういうのって結構わかるものなんだな⋯)


受付カウンターでは男性と女性の職員さんがそれそれ忙しそうに業務をこなしている。


女性の方がやや列が長いと感じるのは気のせいだろうか。


入口に視線を移すと今も人が出入りしている。


何でもない光景だが若干違和感を覚える。


(何で皆、軽々と扉を開けられるの⋯?)


少なくとも自分にとっては錆びついた扉を力押しで開けたような重さだったのだ。


(ハンターって皆怪力だったり?⋯でも一般人も買い取りや依頼を出す時に来たりするよね)


「お待たせしました」


査定を行なっているお姉さんが戻ってきてトレイには薬草とその横に査定の結果であろう硬貨らしき物が数枚置かれていた。


「査定の結果は薬草で品質は劣、査定額は銅貨5枚となりますがいかが致しましょう」


わかってはいたが銀貨には届いていなかった。


(銅貨5枚⋯量も少なかったし仕方ないよね⋯でも銀貨1枚って銅貨だと何枚になるんだろう?)


「⋯それで買い取りをお願いします」


「かしこまりました、ではこちらをどうぞ」


薬草が回収され銅貨5枚が残る。


それを受け取りおやつの包みとは別のポケットにしまい込む。


(衛生面が気になるしお金を入れる袋も欲しいな⋯)


「以上で査定は終了となります、ご利用ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


思わずぺこりと頭を下げてしまう。


自分の周りを確認すると買い取りを頼む人は居ないようだ。


「あの⋯少しお聞きしても良いでしょうか?」


「ん?うん、大丈夫だよ、何々?」


(軽っ)


お姉さんの急変ぶりに少し驚いた。


「⋯ええと変な事をお聞きしますが銅貨何枚で銀貨1枚になるんでしょうか?」


「え⋯え?⋯いやごめん、えっとね銅貨50枚で銀貨1枚だよ」


(1/10かぁ⋯異世界物じゃ大抵銅貨10枚とかだったのに⋯。でも普通に考えたら安いとは言え宿の1泊分が持っていた薬草の束2つなわけないよなぁ⋯)


「⋯ねえキミ、銀貨が必要なの?」


若干沈んだ気配を感じたのかお姉さんが聞いてくる。


「はい、今日の夕方までに必要なんです」


「理由を聞いてもいい?」



お姉さんに昨日宿を探して彷徨っていたところ女将さんの厚意で泊めてもらった事、自分の力で宿泊料を工面し今日中にお返ししたい事を話してみた。


「なるほどね、何かに巻き込まれたりしているわけじゃないのね?」


「はい、それは大丈夫です」


「それなら良いけど⋯そっかぁ⋯ちょっと待ってね」


お姉さんは何か思い付いたように作業棚の方へ向かい、鋏のような物を手に戻ってきた。


薬草と鋏の2つをトレイに乗せてこちらに見せてくる。


「あのね今持ってきた薬草、もっと集めてみない?」


「えっと⋯この量をあと⋯9つ、ですか?」


やれなくは無いと思うが何度も往復する必要がありそうで時間が心配になる。


「ううん、量的に言えばあと3つもあれば大丈夫。さっきの薬草、手で適当に摘んできたでしょ?」


「はい、道を歩きながらのついでだったので」


お姉さんがカウンターの内側から本を取り出しページをめくる。


何枚かめくったあたりで薬草の絵が目に入る。


「これ、わかると思うけど薬草ね。ここの印わかるかな?採取する時にここより上をなるべく綺麗に採る必要があるの。

持ってきた薬草は千切ってあったし摘んでから時間が経っていたから品質が劣化しちゃってね、買い取り額が低めになっていたんだ」


(確かに品質が劣って言ってたかも)


「でね、最近薬草の採取をやってくれる人が減ってきていてね⋯単純作業が嫌じゃなかったらどうかなって。

今なら競争相手が少ないからやりやすいと思うよ?」


お姉さんが凄くやって欲しそうに押してくる。


「こういうの、町の子供達がやったりはしないんですか?」


「やる子もいるけど⋯すぐ飽きちゃったり半分くらい雑草だったりで思ったほど稼げないとすぐやめちゃうんだ」


「なるほど⋯」


「雑草との見分けが面倒みたいでドブさらいの方が簡単だってそっちに流れちゃうの」


「ド⋯ドブさらい⋯」


(確かに汚泥とか全部取り除けば終わりだろうしね)


「だからね?もし嫌じゃなかったら薬草集め⋯やってくれないかなぁ、どうかな?」


もう鋏を渡すつもりな感じなので今更拒否するのも憚られる。


(薬草集めなら危険はないだろうしボクでも多少見分けがつく、他にアテは無いし⋯やってみようか)


「わかりました、薬草集め⋯やってみます」


「本当!?助かるよー」

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