スキルカード
探していた異世界要素は本の内容からではなく、偶々挟まれていた栞からという予想外の物から齎された。
(まさか本を確認する前に見つかるなんて心の準備をしてなかったよ、効果が切れた符と言ってたけど⋯)
スキルカード【祝福】
未登録
ステータスを20%アップ(重複不可)
チャージ後12時間経過で使用可
(カードの部分に突っ込みたいけど⋯効果が切れるどころか使われてないよね⋯祝福?って全ステータスなのかな、見た感じステアップアイテムでは無さそうだし⋯バフスキル?)
次々に疑問が湧いてくるが、先程の店主が言っていた事を思い出す。
(何でこんな物が栞に⋯日本語が読めなくて使い方がわからなかったのかな。しかも初回からチャージが必要とか、それぐらいサービスしてあげればいいのに⋯)
この世界でスキルカードという物がどのように扱われているかはわからないが、手に入れても使えずいくら試行錯誤しても反応が無ければ使用済みの骨董品としか思えなかったのだろう。
(前の所有者には悪いけどありがたく使わせて貰おう、登録ってやっぱり魔力かな?魔力塊でいければいいけど)
試しに魔力塊でカードを包んでみると魔力が吸われているのか徐々に小さくなっていく。
魔力塊を補充しながらしばらく続けてみるがチャージが終わる気配は無く、まるで底が無い容器に水を注ぐかのようにどんどん魔力を吸われていく。
沢山の魔力塊を使いふらふらになり始めた頃、ようやくカードに変化が現れる。
(つ、疲れた⋯しばらく休まないと治療に支障が出そうだよ。⋯あ、印が変わってる)
スキルカード【祝福】
登録者 アルステラ
ステータスを20%アップ(重複不可)
12時間経過で使用可能
(チャージは済んだし表記も色々変わったけど、効果時間とかが無いな⋯流石に永続って事は無いだろうし要検証かな)
改めて鑑定結果を見直してみる。
(連続で使う事はできないけどバフとしては相当強い⋯強いんだけど⋯固定値が良かったなぁ。今筋力が20%上がったところで2のままだし、まともに恩恵を受けられるのはいつになるやら⋯)
試しに使ってみたいところだが使用可能になるまでまだ半日かかる。
特にする事も無くなり落ち着ける場所で本の内容を確認したかったので、まだ早い時間ではあるが治療所へ向かうことにした。
「登録制のスキルカード⋯昨日の今日で新しいスキル⋯」
リーゼさんに相談すると悩みの種が増えてしまったような反応をされる。
鑑定持ちのリーゼさんにもカードの内容を確認してもらったがやはり読めないようで、自身の鑑定結果を紙に書いて説明する事になった。
「⋯本当にこの内容であってる?」
「はい、ボク自身の鑑定が低いせいかわかりませんけど⋯出てくるのはこれだけです」
「スキルカードの強化魔法は珍しくないけど、この内容だと曖昧な所が多すぎるわね」
こちらの世界の強化魔法は階級の違いにもよるが各ステータス毎にかけるのが一般的らしく、今回のケースは異例なようだ。
「本来あるべきものが色々足りてないのよね、それに普通の強化魔法と比べて制限が大き過ぎるし」
「検証してみたいけどまだしばらく使えないんですよね」
「そうね、検証は必要ね⋯。強化魔法だから暴発の危険は無いと思うし、明日から試してみましょうか」
錬金は危険な面もあるため実験や検証はある程度制限されてしまう、だが強化魔法なら害は無いので我慢する理由も無くわくわくしてくる。
「そうだ、登録済みになったこのカードってどう扱えば良いんでしょう?」
「そうねぇ⋯店主の言ったように栞にでもしたらどう?」
「そうですね、じゃあ元通り挟まれていたこの本の栞にでも⋯」
適当な所を開いた本にカードを置いて閉じようとすると、するりとカードが机に滑り落ちる。
「あれ?」
カードを手に取り再び本に置いて閉じようとすると、同じように机に滑り落ちてしまう。
「⋯風も無いのに動いてる?」
「⋯気のせいじゃないわよね?」
再びカードを手に取ると、いつの間にか赤い印が✕に変わっていた。
「この本が嫌なのかな⋯」
赤い印が◯に変わる。
(意思疎通できるの⋯)
「なんかこの子⋯このカード?元の本に挟まれるのが嫌みたいです」
「⋯いくら私でもそろそろ驚き疲れるわよ?」
意思の疎通が可能とわかったので、いくつか質問してみる。
名前や性別は無く戦闘能力も無し、こちらに害意は無いようで、購入した本に戻されて読み終えたら放置されるのが嫌なようだ。
「他の本にも使うつもりですけど、それでも駄目ですか?」
印が✕に変わりカードが左右に捻れる動きが加わる。
「折り目付いちゃいますよ?困りましたね⋯どうすれば満足してくれるのかな⋯」
他の場所から何冊か持ってきてみるもどれもお気に召さない様子。
「うーん、あと本と言えるのはこれくらいだけど⋯」
錬金の本を呼び出して開いてみるとカードがピンと伸びて新札のようになり、◎の表示になる。
「あ、これなら良いんですね」
錬金の本にそっと置いて本を閉じると、満足したように挟まれ錬金の本ごと消えていった。
「⋯結局なんだったのかしら」
リーゼさんがポツリと呟く。
「わかりませんけど⋯満足したみたいですし良しとしましょう」
治療所の仕事はいつもと変わりなく平穏に終わりを迎え、無事に宿へ戻りしばらく寛いでいると祝福が使用可能となった通知が表示される。
(ん、ちゃんと通知あるんだ。便利だな⋯)
身体を起こして確認すると、まだ日付は変わっていないようだ。
(試したい⋯すぐにチャージすれば12時間経ってもお昼前、リーゼさんに会う頃には使用可能になっているだろうし発光対策もあるから大丈夫⋯のはず)
前回の失敗から考えた対策として、窓とドアの隙間から外に光が漏れないように黒い生地を重ねて作ってもらった暗幕を用意してある。
(強化魔法なら危険は無い、自分に試すだけなら⋯ちょっとだけだから)
窓とドアに対策を施し、祝福スキルを使用すると呼び出してもいないのに錬金の本が出現する。
(何でこれが?栞になったカードの影響かな?)
本が開かれ栞が挟まれたページまで辿り着くと白紙だったページに魔法陣と文字が浮かび上がってくる。
(おぉ⋯なんか凄い魔道書みたくなってる⋯)
感動しながら全体を見ていくも魔法陣は格好良く見えるだけで、記号や図形の配列も全く理解できないので浮かび上がる文字を読んでいく。
(祝福を⋯勢力を選択⋯ラスダン?⋯ん?)
何故か今日知ったばかりの町の名前が出ている。
栞が元気そうにやるか?やるんか?と言わんばかりにラスダンの文字を指し示している。
「⋯ごめん、キャンセルで」
栞に向かってそう言うと、ショックを受けたような動きを見せて逆再生のように戻り消えていく。
再びベッドに倒れ込み大きく息を吐く。
「確認があって良かった⋯これ、今使ったら大変なことになるやつだ」




