新スキル
レイドイベント発生から数日。
定期便でやってきた前衛の治療を終えて休憩をしていたところ、久々な気がする通知窓が出てきて
【初めてのレイドイベント】達成
と表示された。
(え⋯⋯何?)
通知の意味が分からずにいると、突然目の前に小さなの宝石のような物が現れた。
「ん?⋯⋯え?何これ⋯」
触れてもいいものかと席を立って移動してみると、視界に入るようについてくる。
いつもなら色々教えてくれるリーゼさんは席を離れているため、ここに居るのは自分だけだ。
(鑑定には反応しない⋯、触っても大丈夫⋯なのかな?)
浮いている宝石の下に手のひらを置くと、ゆっくりと下降して手のひらに溶けるように吸い込まれていった。
(え⋯溶け⋯身体に入った!?)
手に収まるではなく溶け込むという想定外に驚き、手のひらを確認していると新しい通知が表示される。
付術 を獲得
固有ポイントを消費し種族スキルをアンロックします
種族スキル 魔導付術 を獲得
魔導付術 と 錬金術 を 魔導錬金 へ統合しました
(え!?何か一気にきたぞ!?)
表示されたスキルを忘れないように確認していく。
(えーと⋯付術が魔導付術になって魔導⋯錬金になった?魔導錬成じゃなくて魔導錬金?)
魔導錬金の単語を強くイメージした瞬間、目の前に大きな本が出現する。
「これは⋯⋯あ⋯」
本が開かれると、この世界に来て初めて、時には夢にまで見ていたメニューらしき物が表示された。
「⋯出た」
(やっと⋯やっと出てくれた、とりあえず間違って消さないように確認を⋯)
うっかり閉じてしまわないように恐る恐る確認していく。
(抽出に分離、そして生成と付与⋯検索まであるのか、ここは⋯反応しないか。検索⋯ポーションっと)
意思に反応するタイプのようですぐに検索結果が表示される。
(濃縮が手間かもしれないけど材料はそれほど難しくは⋯、そうか⋯こっちだと水の中の不純物とかが一般的な知識じゃなかったり密閉容器の準備が大変なのか)
果物で色々と試してみた結果、道具を使わずに加工ができる事が判明し副産物はジュースとして美味しくいただいた。
(流石に武器は別スキルか⋯でも普通の錬金と違って高価な器具がほとんど必要無いのは助かる、アイテム作成だけでも凄く可能性を感じるぞ)
現時点でやれそうな事は概ね確認出来たので最後に本を閉じる、予想通り消えたので再び出せるか試すと問題なく出せる事が確認できた。
(さて⋯仮にポーションを作るとなるとポーション自体の素材の他に容器も準備しておかないとかな、硝子は⋯素材はともかく加工が面倒そうだなぁ、作れる人にお願いした方が良さそう)
検索をしながらあれやこれやと予定を組み立てては修正を繰り返す。
(楽しいなぁ⋯大型アプデで新スキルが実装された時みたいだ、大好きだよこういうの)
「ただいま、随分楽しそうね」
「あ、おかえりなさい」
いつの間にか結構な時間が経っていたようで、席を外していたリーゼさんが戻ってきた。
「何か面白い物でも⋯あら?そんな本ここにあったかしら」
リーゼさんに種族の事は伏せながら魔導錬金スキルを得た事を話してみる。
「魔導錬金⋯スキルの組み合わせが存在するのは知っていたけど、聞いたことが無いスキルね⋯」
「素材が無いので試せませんけど⋯あ、ジュースなら作れましたよ」
机にあったポココの実を魔力塊で包んで果汁と残った固形物にわけ、果汁に水を足して2つのコップに注ぐ。
「⋯今のは⋯何をしたの?」
「スキルで果汁を取り出してみました。あ、リーゼさんのは水で薄めないほうが良かったかな⋯」
「いえ、そうじゃなくてね⋯。今⋯器具を使わずにやってたわよね?」
「はい、そういった部分を魔法で行えるスキルみたいです」
「つまり、潰したり濾したりといった部分も⋯⋯これは思ったより凄いスキルかもしれないわね」
リーゼさんと話した結果、まだ安全と確認できていない魔導錬金は人の多い場所では使わないようにしておく事になった。
「万が一の為にね、とはいえ実験する場所は欲しいわよね。後で片付けておくから奥の部屋を使わせてもらいましょ」
「部屋を使わせて貰えるのは助かりますけど、勝手に決めて良いんですか?」
「許可は取るわよ?今の状況だけでも交渉の手札は何枚にもなるわ。」
「今の会話から交渉材料ってそんなにありましたっけ?」
「あるわよ。前にも言ったけどこの町は新しい錬金術師が欲しいの。悲しいけど他所から生活水準を下げてまで来てくれる人は居ないわ、将来の錬金術師を育てるためと言えば部屋の1つくらい提供してくれるはずよ」
「前の方は引退して引っ越されたんですよね」
「ええ、これも前に言ったと思うけど町でポーションを作れるのならギルドとしても色々利点はあるの。」
「輸送とかの費用と利益のお話ですね」
「将来的な利益を考えれば、多分この2つだけでも許可は取れるわ」
そう言いながらポココのジュースを一口飲むと
「あら、美味しいわねこれ」
「ですよね、リーゼさんにはちょっと薄味かもしれませんけど、これならボクでも飲めそうです」
「喉を潤すにはこのくらいがいいわ、愛情たっぷりで心まで潤ってくる気分よ」
「あはは⋯簡単に作れますからまた飲みたくなったら言ってくださいね」
話が一段落し、程なくして前線からの定期便が到着する。
その一団の治療中に神敵が討伐された一報が届き、今回の討滅戦は終息となった。




