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はーふ&はーふ  作者: 味噌猫


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20/25

休日

初のレベルアップを達成した日から数日が経ち、変化のあった魔法の使い方にも少しずつ慣れてきた。


朝の採取ついでに検証をしてみたところ、魔力塊を3m程度まで離せるようになっていたので、出力をうまく調整すれば自身に被害が及ぶことなく控えめではあるがようやく攻撃魔法と呼べそうな形になってきた。


(とはいえ倒せる相手が見つからないんだけどね⋯。町の水路や下水にスライムみたいなのが居るとかそういうのもないみたいだし、そもそもそんなのが居たら被害出てそうだしなぁ⋯)


スライムのような魔物が出現しなくもないらしいのだが、堆積した汚れや魔力の淀みが多い環境で生まれるらしく、意外にもドブさらい等の仕事がそれを防ぐ役目となっていたようだ。


治療所の仕事も順調で、程度の軽い怪我は治癒団子(不本意)で対応する事になり、何度かのお試しによって利用者にもすんなりと受け入れられた。


「大抵の怪我が治癒球で対応できるから随分楽になりましたね」


「そうね。待たせる時間が減ったし、負担する金額も下がったからか結構好評よ」


「呼び方は団子で定着しちゃいましたけどね⋯」


患者対応と負傷具合を確認し、そこから治癒を行うという流れから手間が半分程度に減ったので、治癒団子を利用する場合の費用は安く設定されている。


「すみません、団子お願いします」


「こちらからどうぞ、お大事にー」


「どうもー」


決められた金額を払い、団子を1つ手に取り患部に使用して治った事を確認し帰っていく。


球が1つ減ったら1つ足すを繰り返しながら、作ってから時間が経った物は新しいものと交換する。


(やっている事が屋台みたいだ⋯)


このやり方でもブラッドポイントは貰えるようで、数値は未だに確認できないがコツコツ貯まっていった。






「突然だけど、明後日に休みを貰ったの」


治療所を閉めて片付けをしている最中に、入金から戻ったリーゼさんがそう切り出した。


「お休みですか?」


「うん、別にいらないんだけど⋯たまには休んだら?って言われちゃってね」


「そうなると、買い取りはどうするんです?」


「普段から利用者は少ないから心配はないと思うけど、もし来たら代わりの職員が対応するわ」


この世界に労基法は存在しない。


お金が欲しければ働く、休むのも自由。


だが怠け過ぎれば信用は落ち、場合によっては他の人に立場や職を奪われる事にも繋がるし、そうなるのは自業自得という考えになっている。


(まぁ、あっちでも法を守っている企業はどのくらいやら⋯って感じだった気がするけど)


ちなみに火の日や星の日など曜日らしきものはあるが、あちらのような決められた休みは無い。


「そっかぁ、ゆっくり休んでくださいね」


「貴女もお休みよ?」


思いもよらぬ言葉に目を丸くする。


「え?ボクもですか?」


「ハンナには申告しておいたし、治療所が休みという通知がもうすぐ張り出されると思うわ」


「お金のためにやってるんだし自由な時間もだいぶ増えてるから、別に休みなんていらないんですけど⋯」


(ほとんど屋台の店番状態だし)


「⋯そう言わずに、折角だからお休みしましょ?⋯ね?」


妙に食い下がるリーゼさんに違和感を覚える。


「リーゼさんは休みに何をする予定ですか?」


「そうね⋯家でゆっくりしようかしら」


(何か怪しい気が⋯けどお金に余裕ができてきたし、新しい服も買いたいかも)


少しだけ悩んだ結果、ありがたく休ませて貰うことにした。






休みの当日、お店が開くであろう時間まで部屋でゆっくりと過ごしてから宿を出る。


通りをゆっくりと歩きながら辺りを見回してみるが、変わった所はなくいつもの朝の町並みだ。


(⋯ちょっと恥ずかしいな、自意識過剰だったか)


リーゼさんの不自然さから何かを企んでいそうだと勘繰ってしまったが、どうやら気のせいだったようだ。


しばらく歩くと、目当ての店が見えてくる。この町で数少ない女性服を専用で扱う店だ。


(派手だ⋯何かこういう店って入りにくいな⋯)


辺りの様子を伺い、人通りが少なくなったタイミングで入店しようとドアの前へ向かうと、いつの間にか店の前に誰かが立っていた事に気付いた。


「あら、ステラちゃんじゃない。奇遇ね、お買い物かしら?」


「リー⋯ゼ、さん?」


違和感を覚える、数秒前に人通りが減るのを確認した時、よく見ている知り合いの顔に気付かないものだろうか?


(そもそもこちらに人は居なかった、普通に歩いてたらあの角からここに来るまでの時間は無いような⋯)


意識を前方に戻すとごく自然な、しかしいつもの制服とは違ってラフな格好のリーゼさんが居た。


(そういうスキル?もしくは魔法でもあるのかな?ボクは武術の達人ってわけじゃないから、ただの見落としかもしれないけど⋯)


「貴女も服を見に来たの?私もちょっと新しい服を見ようかなって来たところなの。良かったら一緒に入らない?」

 

ごく普通に、親しい友達にあった様な雰囲気のリーゼさんで、おかしい所は特に見当たらない。


「⋯こんにちはリーゼさん、全然気付きませんでしたよ。今日はゆっくり過ごす予定だったのでは?」


「ゆっくりしていたんだけど⋯突然思いついちゃってね。思い付きで予定が変わるのってよくあるでしょう?でも貴女に会えたから、思いついて正解だったわ」


「そうだったんですね、ボクはその⋯普段着以外の服が全然無いので、お金に余裕ができたから何着か買っておこうかなって、でもこういうお店は慣れてなくて⋯」


「あら、なら丁度良いじゃない。一緒に入ってあげるわ、さぁ、行きましょ」


リーゼさんに促されて店の中に入ると、女性服専門というだけあって様々な年齢に向けた商品が展示されていた。


店に入ったリーゼさんは店員さんと顔見知りなのか軽く会話をした後に店内を慌ただしく行き来し、結構な数の服を手に戻ってきた。


「リーゼさん、沢山買うんですね」


「え?私のではないわよ。これは貴女のよ?」


「え?ボクまだ何も選んで無いし買うものも決めてないんですけど⋯」


「こういうお店、初めてなんでしょう?私が選んであげるわ」


「もう選び終わってますよね?」





その後もあれこれと試着して実質リーゼさんの着せ替え人形となり、試着室に入りこまれそうになったりとアクシデントを笑顔の店員さんに見守られながら時間は過ぎていった。


店を出る頃には数着の服が入れられた紙袋を両手に持っており、中にはリーゼさんからプレゼントされた服も入っていた。


「すみません、色々選んでもらったうえに買ってもらってしまって」


「良いのよ。むしろ全部買ってあげたかったのに1着だけなんて、欲が無いんだから」


「凄く嬉しいんですけど、働いたお金で服を買おうって決めていたので⋯これ、大切に着させて貰いますね」


リーゼさんが選んだのは、白基調のワンピースタイプで清楚なお嬢様という感じの服だ。


「着潰してくれていいわよ、また買ってあげるから」


「買ってもらっておいてなんですけど、甘やかし過ぎは良くないですよ?」


「甘やかしたくなるのよ、最近やっと年相応の女の子の姿が見れて嬉しいんだから。最初は警戒されてるのが丸わかりな只の取り引き相手への対応だったけど、今なら多少は軽口が出てきてくれるものね」


「そう⋯でしょうか」


(女の子の姿⋯か)


言われるまで気が付かなかった。


消去され元の世界の出来事が曖昧になっている記憶の残滓より、今ではこの世界で過ごした記憶の方が重みが増している。


女性として扱われる事にすっかり慣れてしまったためか、今のように意識しない限り気にならなくなっていた。


(もう全然、違和感が無いな。そもそも新しい人生だから気にしても仕方がない⋯あぁそうか、あの初期化は必ずしも悪い事だけじゃなかったのかも⋯今でも初期化なんてされたくはないけど)


「⋯考え事?」


隣からの声で我に返る。


「いえ、この服をいつ着ようかなって考えてました」


誤魔化してしまって、少しだけ罪悪感。


「明日からずっとでもいいのよ?」


「ずっとはちょっと⋯汚れちゃいますし⋯」


「この後は食事でもどう?甘い物好きでしょ?いい店があるの」


(この身体と付き合っていくしかないんだから、前の事で悩んでも仕方がない。それよりも今が大切だよね)


「甘い物⋯良いですね、いきましょうか。今度はボクが出しますね」

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