レベルアップ
「すみませんっした!」
「許してください!」
マーグさんが退室し反省会になった途端、イケメン青年の仲介によって通路で遭遇した2人に物凄い勢いで謝られた。
「あの後3人で食事に行ったんだけど、話を聞く限り2人に悪気は無かったと思うんだ。許してあげてくれないかな?」
「はぁ⋯もう気にしてませんからいいですけど、初対面の人にあの気安さは止めたほうがいいですよ」
「ありがとうございます!」
「以後気をつけます!」
「良かったね2人とも」
「「ありがとな!」」
(何か仲良くなってるし⋯)
「では改めて。僕はセリス、よろしくね」
「テッドです」
「ギリー⋯です」
「⋯アルステラ、です」
絡んできた2人は田舎から出てきていて、冒険者登録前のテンションと仲間も探したい思いもあったため、とにかくフレンドリーに接してみようという考えになっていたらしい。
そしてフレンドリーに接したは良いものの、こちらに警戒されてしまいどうしていいのか分からず行動が裏目に出てしまったようだ。
「しばらく食事に手を付けずに沈んでる姿がちょっと気の毒だったよ」
「あっ、お前それは!」
「言わない約束だったろ⋯」
「ごめんね、でも知ってもらった方が反省していたのをわかってくれるかなって」
「⋯この話はもう良いですから、別に治療しないとか意地の悪い事もしませんし。忘れて反省会にしましょうよ」
「あざっす!」
「これからお世話になります!」
(舎弟みたいになっちゃってるよ⋯)
「僕もお世話になると思うからよろしくね」
「治療所のルールは守ってくださいね」
謝罪を受け入れ話は終わりとし、男性3人が武器に関してあれこれ盛り上がっていると、マーグさんが戻ってきた。
「これから受講証明を渡すので受け取った者から退出していい。再発行は面倒なので失くさないように、既に冒険者登録が済んでいるなら帰る際に提出しておくといい」
それぞれが受講証明を受け取り部屋を出ていく。
一番最後の自分が部屋を出ると、律儀に待ってくれていた3人組が手を挙げてから帰っていった。
(既にセットになってる感があるけど、3人で組むのかな⋯)
講習が終わり1階部分へ戻ると、先に出ていた受講者の面々がそれぞれカウンターや掲示板の周りにいた。
カードの更新は済んでいるのか、もしくは必要が無いのか、誰も居なかったのでセットして手を合わせる。
(特に何も表示が無かったけど、上がってますように⋯)
読み取りの時と同じ光を帯びてカードが排出されたので、通行の邪魔にならない場所に退いてステータスの確認をしてみる。
アルステラ レベル3
筋力 2
体力 7
敏捷 24
魔力 34
運勢 5
(上がってる!⋯けど⋯流石に振り分け形式ではないのか⋯。しかも筋力が2のまま⋯?何で筋力だけ上がってないんだろう?)
運勢は未解明な部分が多いので気にしない事として、筋力だけ上がっていない理由がわからない。
(体力は上がっているし⋯最低値以下だった事が何か影響してる?もしくは種族毎に成長率でもあるのか⋯)
上がったとはいえまだレベルは3なので上昇しないと決まったわけではないと一旦保留する。
(とは言えここからどうレベルを上げていくか⋯、筋力が上がらなかったとなると、もう攻撃方法は魔法しかないし⋯)
ステータスの確認が済んだので混雑している場所から離れ、治療所の方へ移動すると暇そうにしているリーゼさんがこちらに気付いて手を振った。
「おかえり、無事に終わったみたいね。受講してみてどうだった?」
「色々学ぶことができて為になりました、レベルも2つあがりましたよ」
「良かったじゃない、ステータスはどう?」
「それなんですけど、ちょっと見てもらっていいですか?」
カードを取り出し、リーゼさんにステータスを見せてみる。
「⋯筋力は伸びなかったのね、でも他は上がってるし⋯魔力の伸びは凄いわね」
「比べる対象が無いのでよく分からないんですけど、高い数値なんですか?」
「うん、レベル3でこの数値は結構上位の数値だと思うわよ。やっぱり魔法が向いてるみたいね」
「数値で見れば結構上がってるんですけと、特に実感が無いんですよね」
なんとなく魔力塊を出してみる。
「あれ?凄く⋯楽だ」
出してみてわかったが、魔力塊の操作がレベルアップ前に比べて遥かに楽になっていた。
色々と試してみると、操作性や出力以外にも身体から離せる距離が少しだけ伸びている事に気付く。
「実感凄くありました、こんなに変わるんですね⋯」
「何か数が一気に増えたわね⋯」
細かくしすぎて虫が飛んでいるような見た目になってきたので1つにまとめる。
全てまとめると結構な大きさの塊となった。
「出ている時間も伸びてるのかな?ここではやりませんけど、後で実験もしてみたいな」
「レベルが上がると試したくなるものね、わかるわ」
「あ、でも回復系ならここでも問題無いかな?」
「んー⋯そうね、私も見てみたいし回復なら良いんじゃないかしら」
魔力塊を3つに分け、全て均等な大きさの球体にする。
「傷があるわけじゃないから、ちょっと別のやり方を試してみますね『治癒』」
格段に伸びた操作性と出力の高さで色々試し、新たに判明したのは同時に5つまで魔法を発現させられる事。
そして一番大きな変化は魔力塊自体に効果を持たせたまま保持が可能になった事。
効果が知りたいので休みを撤回し、実験の結果できた球状の治癒の塊を机に4つ並べて治療所を開く。
テスターを募集したところすぐに応募があり、無事に癒す効果が確認できた。
これにより治療所での手間も劇的に改善される事となり、商品ではないが名前を決めないと不便なので、とりあえず治癒の球と呼ぶことにした。
しかし似たような名前の物があるのか浸透はせず、冒険者の間ではいつの間にか治癒団子もしくは団子と呼ばれるようになっていた。




