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はーふ&はーふ  作者: 味噌猫


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18/25

講習会 2

休憩の終わりが近付いたので午後の部の会場へ向かう。


訓練会場は地下にある大きな部屋で、他の受講者は既に揃っているようだ。


「⋯揃ったようだな、では少し早めて午後の部を開始する。訓練とあるが初心者向けの今回はそこまで重いものではない。自分に合う装備の再確認と受講者同士の交流も兼ねた軽い手合わせと反省会になる」


そう言いながら手を奥の方へ向けたので目で追うと、武器を試すための人形のような物といくつかの木箱が並んでいる。


その横には槍や弓が壁に立て掛けられていた。


「今使っている装備が自分にとって最適とは限らない。全て刃を落としてあるから色々試して見るといい。それとアルステラさんは手合わせへの参加は無しとあったのでそのつもりで」


「え?あ⋯はい」


予想外のタイミングで名前を呼ばれ注目を集めてしまい恥ずかしくなる。


(リーゼさんだろうな⋯でも手合わせ無しでレベルが上がるのかな⋯)


レベルの件が少し気になるが、いきなり対人戦も上手くできる自信が無かったので人形限定ならと安心する。


「何か気になる事があるなら質問も受け付ける。では各自、使う装備を選んで始めてくれ」





(やっぱり最初は剣を使う人が多いんだな)


各々が武器を手に素振りや人形を叩き始める。


木箱の周りに人が居なくなったので自分の使う武器を探しに中を漁り始めるが、どれも結構な重さがあり振り回すのは厳しそうだった。


(弓は弦が硬いし⋯他もやっぱり重いな⋯これが座学であった筋力補正か⋯)


想像以上に重みを感じたので鉄製の剣や槍は諦め、持ちやすそうな小さく細めの木剣を取り出して握り具合を確認する。


(これならまぁ⋯うん、他よりはいいかも)


空いているスペースに移動して何度か素振りをしてみるが軽快な音とは程遠く、改めて自身の非力さを実感する。


(うーん⋯やっぱりこの手の武器は向いてないのかな⋯、他の皆は結構いい音してるのになぁ⋯)


辺りを見回すと同じく素振りをしたり使用感を人形で試す人、次に使う武器に悩んでいる者や離れた場所で2人が軽く打ち合っている姿もあった。


素振りをやめて人形相手に木剣を振るう、しかし丸めた布団を叩くような音がするだけで効果的とは思えなかった。


(近接スキル取ってなかったからな⋯スキルも獲得されないしどういう判定なんだろう?)


「何か気になる事でもあったか?」


「マーグさん⋯。あの、今回は魔法については触れないんですか?」


今回の訓練に魔法関係が無かったので、魔法をメインとする冒険者はどうするのか気になったので聞いてみる。


「魔法については2回目以降で分かれる事になる。今回はあくまで装備の確認と基本的な動作。まずは魔法を使えるか使えないかは関係なく教えられる部分までを範囲としている」


「なるほど⋯」


「アルステラさんは魔法が主体だったと思うが、今やっている訓練は無駄にはならないぞ?敵を倒すためではなく魔法が使えない状況になった時にどう立ち回るかを考えてみるといい」


「魔法が使えない状況⋯」


「そうだ。魔法使いが魔法を使えない時、既に接近されているかまだ気付かれていないか等の状況にもよるが⋯生存率を上げるためにはどうすればいいと思う?」


「⋯逃げるか助けを呼ぶ⋯とかでしょうか?」


「それも正解だな、倒せなくても生きてさえいれば次の機会はある。他にもその時を想定した道具を用意しておくとか考えれば色々出てくるだろう」


「そうですね、備える重要性を考える機会にもなると⋯」


「ああ、初級冒険者の目標は依頼の完遂よりも生きて帰ることだ。失敗から学ぶこともあるが死ねばそこで終わりだからな」


例外もあるが、と付け加えて男性陣へと目を向ける。


「⋯そうだな、いい機会だから少し手伝って貰えないか?」


「⋯?良いですけど何を⋯ですか?」


「あいつらの前で、俺を殴ってくれ」


「はぁ⋯⋯え゛?」


真面目な顔で変なことを言い出すマーグさん、こちらの表情から察したのか少し慌て気味に言葉を返す。


「ああすまん、言い方に問題があったな⋯殴るのはちゃんと意味があるんだ。まず座学で教えた加護の事やステータスによる差というものを全員に見せたくてな」


「⋯そういう事でしたか。わかりました、お手伝いします」


「ありがとう、助かる。⋯全員、一度集まってくれ!」


マーグさんの招集になんだなんだ?と言う表情で全員が集まってくる。


「これから座学で教えた加護について実際に見てもらう。アルステラさん、こちらへ」


呼ばれたのでマーグさんの元へ歩いていく。


「これから彼女に俺を攻撃してもらう、よく見ておくように」


さぁ、と促されはするが何も持っておらず防ぐ気配も感じない。


「⋯あの、本当に大丈夫なんですか?」


「問題無い。これでも元冒険者だ、魔力は乏しいが体力には自信がある」


そう言われてさらに促されたので、木剣を握りしめ殴りかかる。


防御姿勢すら取らずに立ち尽くしたマーグさんへ木剣が当たった瞬間、物を叩いた感触はあるが反動はなく⋯涼しい顔をしたマーグさんが見下ろしていた。


「続けて何度も試してみてくれ」


「⋯はい」


立ち位置を整えて何度も繰り返し殴ってみるが手応えは変わらず、自然体で立つマーグさんにダメージが通っている気配は無い。


「このように、加護によって減衰されるダメージは自身と相手のステータス差も影響してくる。」



当たっているのに声がブレない。


そして気のせいだろうか、女子に殴られながら解説を始めるという酷い絵面に男性陣も少し引いている気がしてくる。


「既に知っているだろうが、加護も時間経過で回復する。つまり格上を倒すためには一撃で加護を消失させる手段を用意するか、回復速度を上回る攻撃を加え続けなければならない。アルステラさん、もういいぞ」


「はっ⋯はい⋯」


息切れを起こしながら元の場所に戻る、あれだけ攻撃したのに全く効いていないようだ。


「絶対とは言えんがステータスによる差をある程度覆すのが装備の質や仲間の数、そしていくつもの状況を想定した入念な備えだ。個人で活動を考えている者もいるだろうが覚えておくといい」


マーグさんが軽く衣服の埃を払い、男性陣の姿を見回してからこちらに視線を向ける。


「最後に、これで終わりにするが怪我をした者がいたらアルステラさんの所へいくように。知らない者がほとんどだろうが、彼女はギルド内で治療所を任されている。この町で活動し今後お世話になるつもりなら接する態度には注意するように」


誰へ向けた言葉なのか何となく察せたが、その忠告のおかげでその日一番の注目を浴びる事になった。



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