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はーふ&はーふ  作者: 味噌猫


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16/25

成長したい

夕暮れ時の受付周りはいつもの様に賑わっていて、依頼を完了させ帰還した人と報告を済ませた人々が入れ替わるように出入りしている。


その大勢の中には軽い怪我を負った人も居て、仕事帰りにコンビニに寄る感じで治療所へ来ることも結構ある。


そういった方はその日の依頼内容や討伐した魔物の話など、治療の合間に色々な話を聞かせてくれた。


患者さんの中には冒険者になりたての新人さんも居て、いくつか依頼をこなす中でついにレベルが上がったと嬉しそうに話していた。





「ボクもそろそろ成長したいですね」


帰っていく人々を見送りながら、常々考えていた事を相談してみる。


突然切り出されたリーゼさんはきょとんとした表情でこちらを見た後に視線を少し下げ、また戻した。


「そのくらいで良いと思うわよ?」


「今、どこを見て言いました?」


「大きければ良いってものじゃないのよ?何事もバランスが大切なの。突然気にしだすなんてどうしたの?⋯まさか男連中に何か「レベルの話ですからね?」⋯レベル?」


脱線しそうだったので軌道修正する。


「この町に来てから結構経ちましたし、寝泊まりする場所や収入源も見つかって生活も安定してきました。なのでそろそろボクもレベルを上げたいんです」


(生活基盤を優先してきたけど、いい加減にレベル1は卒業したい)


成長すればステータスの上昇によってできる事が増えるだろうし、いずれは吸血鬼として戦闘もこなせるようになるだろう。


(戦闘タイプなはずの吸血鬼なのにヒーラーしかやってない⋯あ、採取もか。確かに割と今の生活を楽しんではいる、怪我人を癒す事にも⋯それで感謝される事にも喜びを感じてはいるのだけど⋯ボクが本来想定していたのは回避型の魔法アタッカーだ)


「気持ちはわかるけど⋯そんなに急がなくても良いと思うわよ?」


「⋯これでも結構慎重に準備してきたつもりなのですけど⋯」


「でも貴女まだレベル1でしょう?講習会はまだ少し先になるわよ」


「⋯講習⋯会?」


「⋯?レベルを上げたいんでしょう?」


不思議そうな顔をしながらそう聞かれる。


「そうなんですけど、講習会ってなんですか?」


「え?⋯ちょっと待ちなさい。講習会を知らずにどうやってレベルを上げるつもりだったの?」


「その辺で狩りでもすれば上がるんじゃないかなぁって⋯」


「バカな事を言わないで、レベル1から魔物を狩るなんてできるわけないでしょう?」


「あ⋯いえ、魔物じゃなくて小動物とかのつもりで⋯」


リーゼさんが何言ってるのこの子⋯みたいな顔になる。


「ほんと、どんな環境で育ったのか気になるわね⋯」


「あの、何度も言いますけど普通の家庭ですからね?」


「私からすれば別の可能性がちらついて普通とは思えないのよ⋯」


少し遠い目になったリーゼさんがお茶を一口飲んでこちらへ向き直る。


「ええとね、残念に思うだろうけど⋯その辺の小動物を狩るくらいではレベルは上がらないわよ」


「⋯1からでもダメなんですか?」


「ダメね、経験や実績を重ねて上がるものなの。貴女の考えていたのは戦闘経験でしょうけど、追えば逃げてしまうような小動物相手では経験とみなされないわ」


フィールドの小物を相手にレベルを上げるつもりで居たが、この世界では通用しないらしい。


「⋯じゃあイノシシとか熊相手なら?」


そう言った途端に両肩を掴まれ


「絶対にやめてね?野生の獣相手に気付かれず遠くから一撃で仕留める事ができるの?見つかった場合逃げ切る自信は?接近されて襲われたらどうするの?絶対にやめて」


徐々に顔が近付き、同時に強まる圧に耐えきれなくなる。


「は、はい⋯」


「全く⋯すぐにあれは?これは?ってなる貴女も可愛いけど、あまり心配させないでね。何も最初から格上を相手にしなくていいのよ、そのための講習会なんだから」


「講習に参加すれば安全にレベルが上がるんですか?」


「多分貴女が期待するほどではないけど、軽い戦闘訓練をはじめ基本知識や簡単な応用も教えたりするし⋯2か3にはなるんじゃないかしら。受講しないとまともな依頼を受けられないから登録したての冒険者は必ず受けることになるわよ」


「冒険者登録をしていないボクでも受けられるんですか?」


「受講できるわよ。特に制限も無いから冒険者登録前に受講する子もいるわ、受講証明の有効期限は30日だけどね」


「へぇ⋯そんな仕組みなんですね」


冒険者登録直前に講習会があって登録したのに講習会の開催待ちになってしまい活動が制限されるというのを防ぐために期限付きで先行受講ができるようになっているようだ。


レベルが上がるのなら是非もなく、講習会への参加を決め当日を待つことにした。


「ところでリーゼさんってレベルはいくつなんですか?」


興味本位で聞いてみると少し考えるような仕草をしてから笑顔になった。


「⋯いくつに見える?」


(⋯なんだろう、レベルの話なのに安易に答えてはいけない気になってきたぞ⋯)


「ええと⋯この辺りの平均から考えて⋯40か50くらいですか?」


冒険者平均よりも少し低めに答える、なんとなくだが低めに答えておいたほうが無難な気がしたのだ。


「正解は⋯⋯まだ秘密かなぁ」


「ええ!?答えさせた上に引っ張って結局秘密ですか!?」


「そうねぇ⋯レベルが近くなったら教えてあげるわ」


「えー⋯凄く気になるんですけど」


その後もはぐらかされ続け、結局レベルを知る事はできずじまいとなった。


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