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はーふ&はーふ  作者: 味噌猫


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13/25

女神キュレイサ


初日の大混雑よりは少し落ち着いたと感じる昼下がり、今日も治療所は賑わっていた。



「はい、お大事に。血を失った分は戻ってないから今日は安静に、無理はしないでくださいね」


(ブラッドポイントも結構貯まってるんじゃないかな?今だに用途がわからないからどうにもできないけど⋯)



「あー⋯ごめんなさい、⋯勧誘はやめておいたほうが⋯あぁ⋯」


注意書きをしてあってもやはり軽い気持ちで勧誘や声掛けをしてくる患者は居るもので、即座にギルティ判定をされて母熊に連行されていく。


始業直後は慌ただしいものの初日のように次から次へと患者が追加される事はなく、次第に待合スペースは空いていった。





「さて、読書の時間です」


客足が落ち着いたのでカウンターから小さな本を持ち出し席に着く。


本の内容は教会が布教に使う、神はこれこれこうして世界をお作りになった〜的な本⋯の子供向け版。


(回りくどく小難しい単語がずらずら並んでいるのはいらない、逆にこういう簡単なのでいいんだよ)


前書きを飛ばして本文を読み始める。


要約するとこうだ。




世界が生まれた時に神は存在しておらず、今のように海や陸といった地形も定まらず命が生まれては滅びと無秩序に増減を繰り返していた。


とあるタイミングで神が現れて大きな大陸を作った後にいくつかに分割し環境を整え始め、生物の数もバランスが取られるようになった。


時が過ぎると知能が発達した種族が現れ、それが今の人族や魔物・亜人等の始まりとなりやがて神を崇める信仰が生まれた。


信心の深い者の中には神の声を拾う存在が現れる事もあり神子とされ、神の声は神託とされ今の教会の礎となった。


こうして世界は我々に託され、神はただ見守り続けてくれているのだ。


我々と共にアジャキュレイサの女神キュレイサ様を崇めよう、貴方の入信と寄付をお待ちしています。





(アジャキュレイサに女神ね、世界の名前に女神の名が含まれているけどアジャってどういう意味だろう。合わせて女神の◯◯とかかな?それにしても⋯子供向けの本に最後のは要らないでしょ⋯)


「ん⋯?女神⋯?」


「あら、今度は教会が気になるの?」


すっかり治療所の事務員さんになったリーゼさんが入金を済ませて戻ってきた。


「宗教に入れ込むつもりはありませんけよ、むしろ余り関わりたくないですね⋯」


(教会なら吸血鬼と見分ける方法を持ってるかもしれないし、知られたら何があるかわからない⋯危うきに近寄らずだ)


「女神?って言ってたけど何か気になったの?」


「はい、女神様が出てきますけど⋯他に神様は居ないのかなって」


「うん、神様はキュレイサ様1柱だけよ」


(あれぇ⋯お爺ちゃんだったよ?もしかして女神様より上?アレで⋯?)


低スペ端末のお爺ちゃんが高位の存在だった可能性に少し驚く。


「はいお茶、熱いから気を付けてね」


「ありがとうございます。初日が凄い混み具合だったから怖かったけど、波が過ぎれば意外と暇になりましたね」


「そうね、もう数日経てばさらに落ち着くと思うわ」


「そうなるといいなぁ⋯」





本を読み終えて暇になりはじめたので魔力塊のトレーニングを開始する。


治療で使い続けた為か操作も随分楽になり、今では【そこに置く】という感じで強く意識せずに出せるようになっていた。


(固定するとか分けたりもできるようになったけど、身体から離すのはまだちょっと苦労するかな)


相変わらず身体から離せるのは手が届く範囲程度で余波の大きい魔法は使えないままだ。


複数に分けて回したり高速でドッグファイトさせると子供の患者にウケがいいのでちょっとした持ちネタになっていた。


「改めて見ると不思議な物体だし、器用に操るわね」


「他では見ないんですか?」


「そうね、記憶にはないわ。貴方の国特有の物なのかしら?魔法はまだ未知が多いと実感するわね」


(魔力塊は今のところボクだけか⋯同じ転生者でもそれぞれ違ったりしたのかな⋯?いつか会えたりするのだろうか)


机に置かれた木皿からシャクの実を取り

口を付ける、もちろん検疫官によってクリーン済み。


小ぶりの梨という感じだが梨よりも香りが強く、微量だが魔力を回復させる効果もあるため冒険者が持ち歩くことも多いらしい。


「すっかりシャクの実がお気に入りね」


「食べやすいし美味しいから好きですよ、治療で減った魔力も回復できますし」


「よく口にしてるからか、最近差し入れが増えたものね」


木皿にはまだ複数のシャクの実が積まれている。


「ありがたいですけど備えで持っておかなくていいのかなって思っちゃいます」


「森を通過するなら行きがけに採ることもできるからね、帰ってきて持て余してるくらいならと置いていくんじゃない?」


「それなら良いんですけどね、もしわざわざお土産に採ってるなら申し訳ないなと⋯」


「怪我を治してくれる天使様のご機嫌取りに実の1つや2つ安いものよ」


「天使って⋯」


(ごめんなさい、吸血鬼です)






宿へと帰り諸々を済ませてからベッドで横になり、薄明かりにしていた魔力塊を消して目を閉じる。


(数日経過したけど⋯世界が広いからか転生者や元の世界に繋がるような情報が全く見つからない⋯)


目覚めてから今までの記憶を思い出しながら整理する。


(科学や日本を思わせる物も全く見ない、ボクが最初の転生者というわけではないはずだし先輩方が活動してるなら何かしら残されていてもおかしくないはず⋯)


鍛冶屋や道具屋を覗いても知識や技術チートの気配は無く、違和感を覚えるような突出したモノがない。


(もしかしたら思っているよりも世界が広くて、ボクのいる場所に転生者が訪れた事が無い可能性もある。だとすればこの地に残っている伝承よりも世界的な、それこそ戦争の記録や英雄譚とかを当たってみるべきか)


調べなくてはいけないことの多さを実感する。


(もし居たとしてもボクは吸血鬼、向こうが友好的とは限らないし⋯直接的に探って先に見つかるのは怖いな)


勘違いされて討伐されるのは何としても避けなければならない、見つけるのはこちらが先とするのが望ましい。


(仲良くなれたら⋯いいな⋯)


まだ見ぬ同胞に思いを馳せるうちに次第に眠りへ落ちていった。


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