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新たな仲間との出会い

 

 アメリスとシトラは、足元の土を感じながら静かに歩みを進めていた。アメリスはこれまでの経験を振り返りながら、自分の力と鉱魔力について考え続けていた。「これから先どうなるんだろう……」彼女はそう考え、少し不安と期待が入り混じった心境だった。

 歩いている間、アメリスはふとシトラに問いかけた。「ねえ、シトラ。あなたは、どうして私と一緒にいるの?ずっと私を守ってくれているけど、私たちが一緒にいる理由って……。」

 シトラは一瞬考え込むように黙ったが、微笑みながら答えた。「君を守るのが私の役目だからだよ。ずっと前からね。」

「でも、どうして?私は記憶もないし、何も覚えてないのに、なぜ私なんだろう……。」アメリスの疑問は尽きなかった。彼女にとって、シトラがなぜこんなに特別な存在なのか、その答えを知りたくてたまらなかった。

 シトラは柔らかく首を振り、「それは、今はまだ言えないけど、いつかすべてわかるよ」と言いながら少し目を伏せた。



「そうなんだ……でも、少しだけでも教えてくれない?私たちがどうして出会ったのか、そのヒントでもいいの。」アメリスは真剣な眼差しでシトラを見つめた。

「アメリス・ジェライス、信じて。君が今いる場所は、君が選んだ道でもあるんだよ。これからも、君の選択がこの旅を導いてくれるはず。だから心配しなくても大丈夫。」シトラは優しい声でそう言い、アメリスの足にそっと鼻先を近づけて安心させるように寄り添った。

「ジェライス……?」アメリスはふと自分の名前に引っかかり、不思議そうにシトラを見つめた。「それが、私のフルネーム?」

 シトラは軽く笑いながら、「そうだよ。少し忘れていたみたいだけど、それが君の本当の名前だよ」とさりげなく教えた。



 アメリスはその言葉に少し安心しながらも、まだ完全には納得できなかった。「うん、わかった……ありがとう。でも、いつかちゃんと教えてね。」

 その時、遠くの茂みから何かが動く音が聞こえてきた。アメリスは警戒して足を止め、シトラもすぐに反応して周囲を見渡した。

「誰かが近づいてきてる……。」シトラが呟くと同時に、茂みの中から二人の人物が現れた。



「待て!」声をかけてきたのは、青い髪の青年、ラピスだった。彼は鋭い目でアメリスたちを見つめながら、慎重な足取りで近づいてきた。だが、彼の視線はシトラに釘付けになっていた。

「まさか……鉱獣を連れているなんて……!」ラピスは驚愕の表情を浮かべ、後ろにいるルビスを一瞬振り返った。



「本当なの?鉱獣を連れている人なんて聞いたことがない……まるで伝説のようね」と驚きの声を上げた。


 アメリスは少し戸惑いながらも、彼らに返事をする。「私はアメリス・ジェライス。この子はシトラ、一緒に旅をしているの。」


 ラピスはそれに応えるように、「俺はラピス・ブルーム。世界を守るために仲間を探しながら旅をしているんだ」と自己紹介をした。


 続いてルビスも微笑んで、「ルビス・フローレンスよ。私もラピスと同じように、この世界のために動いているの」と加えた。



 アメリスは彼らの自己紹介を聞いて少し安心したが、まだ心に疑問が残っていた。


「でも、どうして鉱獣を連れているだけでそんなに驚かれるの?」アメリスはその疑問を口にした。

 ラピスは、さらに怪訝そうに続けた。「普通、鉱獣は野生で人間に従うことはない。特にこんなに近くにいるなんて……。それは普通じゃない。お前、どうやってこんな存在を連れて歩いているんだ?」


 アメリスはラピスとルビスの反応を見て、自分が特別な状況にいることを改めて感じた。シトラがただの仲間ではなく、この世界では異質で特別な存在だということを、彼らの反応を通して初めて理解した。



 しばらくの沈黙が続いた後、ルビスがふと話を切り出した。「ねえ、あなたたちは鉱獣の力を使って何をしようとしているの?」

 アメリスは少し驚きながら答えた。「鉱獣の力を使っているわけじゃないの。私たちは、鉱物の力を信じて旅をしているの。最近、その力が少しずつ失われてきているのを感じていて、何とかその原因を突き止めたいと思っているの。」

 

 ルビスは一瞬考え込み、ラピスと視線を交わした後、続けた。「私たちも鉱獣の力と鉱物にまつわる謎を解き明かそうとしているわ。もしかしたら、私たちには共通の目的があるのかもしれない。」

「確かに……」アメリスは頷いた。「この世界のバランスを取り戻すために、鉱獣の力は重要だって聞いている。だから、私たちが一緒に行動すれば、もっと大きな力を引き出せるかもしれない。」

「そうね。それなら一緒に行く価値はありそうだわ。」ルビスは微笑んだ。


 ラピスが腕を組んで深く息をついた。「なるほど、君たちも敵と戦っているわけだ。でも、俺たちは俺たちのやり方で進めるつもりだ。」


「敵……?」アメリスはその言葉に引っかかり、思わず問い返した。「敵って、一体どういうこと?誰が私たちを敵だと見なしているの?」



 ラピスはアメリスの反応に少し驚き、説明を続けた。「君たちはまだよく知らないようだが、この世界には鉱物の力を悪用しようとしている連中がいるんだ。彼らは俺たちにとって敵であり、君たちもその標的にされているはずだ。」


 アメリスはその言葉を聞いて少し身震いした。自分が戦わなければならない「敵」がいるという現実に直面したことで、急に不安が押し寄せてきた。


「敵……それじゃあ、私たちも戦わなきゃならないの?」アメリスの声は震えていた。シトラがそっと彼女の肩に手を置き、「大丈夫だよ、アメリス。君は一人じゃない。私もいるし、ラピスたちも仲間になってくれるかもしれない」と優しく言った。


 その時、ラピスの首に下げたペンダントが太陽の光を受けて、深い青色の輝きを放った。アメリスはそれに気づき、「それ、ラピスラズリ……?」と問いかけた。


 ラピスは少し驚きながらも、微笑んで頷いた。「ああ、俺の守護石だ。ラピスラズリは昔から俺を守ってくれている、そう信じているんだ。」


 ルビスが軽く笑いながら、自分の手元の赤い宝石を見せた。「私もよ。ルビーがいつも私に力を与えてくれる。」


 アメリスは、ふと自分の胸元に触れた。そこには、彼女にとって特別なアメジストのペンダントがあった。「私も……このアメジストが、私を守ってくれている気がする。」



 アメリスはその言葉に微笑み、彼女の守護石であるアメジストにそっと手を当てた。自分が歩んでいるこの道がどこに続くのかはまだわからない。だが、シトラと新たな仲間たちと共に、これからの試練に立ち向かっていく覚悟を感じていた。


「一緒に、この世界のバランスを取り戻そう。」アメリスは決意を込めてそう言い、ラピスとルビスに向き合った。


 彼らは互いに深く頷き、これから共に進んでいくことを誓ったのだった。


 ラピスラズリ

 •深い青色が特徴的な美しい石で、古代から「聖なる石」として崇拝されてきた。

 •小さな金のようなインクルージョン(パイライト)を含むことが多く、夜空に輝く星々のような見た目を持つ。

 •知恵と真実を象徴するとされ、古代エジプトでは装飾品や護符に用いられていた。

 ルビー

 •鮮やかな赤色が特徴的で、情熱や愛、力を象徴する宝石として知られる。

 •硬度が高く、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つため、長く愛される宝石の一つ。

 •古代インドでは「宝石の王」と呼ばれ、持つ者に不滅の力を授けるとされていた


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