力の目覚めと戸惑い
アメリスは静かにフローライトの結晶を手に取り心の中で戸惑いを感じていた。目の前のこの結晶が、自分の力で倒した鉱獣の残骸であることが信じられなかった。
「本当に……これが私の力で?」
結晶は静かで自然な緑色の透明感を放っている。それをじっと見つめるアメリスの手のひらはまだ微かに震えていた。シトラがそばで静かに微笑みながら、彼女に優しく声をかけた。
「アメリス、大丈夫?驚くのも無理はないよ。」
「うん……でも、こんなことができるなんて……。」アメリスは言葉に詰まりながら、再び結晶に目を落とした。彼女にとって今この瞬間に感じている感覚はかつて経験したことのないものだった。何も覚えていない彼女にとって、この力の覚醒はまるで未知の世界への扉が開かれたようだった。
「この力、これからどうしたらいいの?」アメリスは不安と好奇心が入り混じった表情を浮かべた。
シトラは優しく頷いて答えた。「それは『鉱魔力』と呼ばれるもの。鉱物のエネルギーと共鳴することで引き出される力だよ。それぞれの鉱物には独自のエネルギーがあって、使い手と共鳴することで特別な力を与えてくれるよ。」
「鉱魔力……?」アメリスはその言葉を頭の中で巡らせながら、シトラの話を真剣に聞き入っていた。
「そう。鉱魔力はただの力じゃない。鉱物そのものと深く繋がっているんだ。だから使い方や制御を誤ると危険なこともある。だけど鉱物の力と正しく向き合えば、どんな強敵にも立ち向かえる力になるよ。」
「それじゃあ、私はこれからもっとこの鉱魔力を使いこなせるようになれるのかな……。」
シトラは微笑みながら、さらに続けた。「でもね、アメリス。鉱魔力はただ引き出されるものじゃないんだ。時には鉱物と向き合い、試練を乗り越えることでその力を完全に自分のものにすることができるんだよ。」
「試練……?」アメリスは戸惑いながらも、その言葉に心を引かれた。
「そう。鉱物が試すのはただの強さじゃない。心の強さや純粋さも試されるんだ。だからこれから先、君がどんな試練に出会うかはわからないけど、それを乗り越えたとき鉱物との絆はより深まって力も大きくなるはずだよ。」
アメリスはその言葉を噛みしめるように頷きながら、「じゃあ、この結晶も……その一部ってこと?」と再び結晶を見つめた。
シトラは少し微笑みながら答えた。「ううん、この結晶は君の守護石とは直接共鳴しないよ。フローライトはアメジストとは違う鉱石だからね。」
「じゃあ、これは私にとってどう使えばいいの?」アメリスは少し戸惑いながら結晶を見つめた。
「フローライトは君の力には直接関わらないかもしれないけど、別の使い道があるよ。この結晶は、町で売ったり、鉱具の材料にすることができるんだ。共鳴しない鉱物でも、その力を活かす方法はあるんだよ。」シトラは優しく説明した。
「共鳴する鉱物って……例えば、どんなもの?」アメリスは興味を示しながらシトラに尋ねた。
「君の守護石、アメジストに共鳴するのは、シトリンやローズクォーツ、プラシオライトのような水晶系の鉱物だよ。君と同じ系統の鉱物とは強く共鳴して、力を引き出すことができるんだ。」
アメリスは頷きながら、「なるほど、共鳴する鉱物があるなら、それを見つけることが大事なんだね。」と理解し始めた。
「そう。だからこのフローライトは、戦うための力を直接得るためではなく、他の形で君を助けてくれるかもしれない。それもまた鉱物の力なんだよ。」
アメリスはフローライトの結晶をポケットにしまい、深く頷いた。「結晶を正しく使える時を待つよ。」
シトリン
•シトリンは、透明な黄色や黄金色が特徴的な水晶の一種で、太陽のような明るさを象徴する鉱石です。
•熱処理されたアメジストから生成されることが多く、自然界では非常に希少です。
•古代から富や繁栄をもたらす「商人の石」として重宝され、エネルギーの活性化や自信を高める力があると信じられています。
ローズクオーツ
•ローズクオーツは、優しいピンク色が特徴の水晶で、愛と癒しを象徴する鉱石として知られています。
•鉱物の成分に微量のチタンや鉄が含まれており、この美しい色を引き出しています。
•心を開き、感情を穏やかに整える力があるとされ、恋愛や人間関係を豊かにするお守りとしても人気です。
プラシオライト
•プラシオライトは、薄い緑色を帯びた水晶で、「グリーンアメジスト」とも呼ばれることがあります。
•アメジストを加熱処理することで変色し、緑色になることが多く、自然界では希少です。
•心を落ち着かせ、感情を安定させる効果があるとされ、癒しの石として利用されています。