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初めての試練

 

 アメリスとシトラは洞窟を抜け、広大な大地に足を踏み出した。目の前に広がる世界は想像以上に壮大で、遠くには山々が連なり、空には雲がゆっくりと流れている。しばらく歩いているとアメリスは心の奥で何か不安を感じた。


「シトラ、何か……おかしくない?」


 シトラも不安げに辺りを見回した。「うん、なんだか嫌な感じがするよ。」


 その時不意に空気がざわめき、周囲の木々が少し揺れた。アメリスは驚いて後ずさりしたが、すぐに目の前に現れたものに気づく。それは少し透明感のある緑色の輝きを放つ小さな鉱獣だった。体は光を反射し、その姿は美しくも危険な雰囲気をまとっている。


「何これ……。」


 アメリスが呟いた瞬間、その鉱獣が素早く動き出しアメリスに向かって突進してきた。アメリスは慌てて後ろに下がろうとしたが、鉱獣はすぐにアメリスに迫ってきた。


 シトラがその動きを冷静に見つめながら言った。「アメリス、落ち着いて。あなたの力を使えば倒せるよ。」


「でも……!」


 シトラは笑みを浮かべたまま、あえて動かず、静かにアメリスに言葉を続けた。「私ならこの鉱獣は簡単に倒せる。でも、今はあなたが学ぶべき時だよ。私が守ってあげるから試してみて。」


 シトラの言葉に励まされ、アメリスは再び力を引き出すために集中した。彼女の手のひらから微かに光が漏れ始め、近くの鉱物が共鳴するように輝き出した。


「やれる……やれるはず。」


 フローライトの鉱獣が再び素早い動きでアメリスに迫ってきたが、今回はアメリスが準備を整えていた。彼女は手をかざし、先ほど感じた力を使おうと試みる。「…アメジストグリーム(アメジストの輝き)!」小さく呟くと同時に、手から紫色の光の弾が飛び出し、鉱獣に命中した。鉱獣はその場で動きを止め、力を失ったように倒れ込んだ。


 鉱獣の体がゆっくりと消え一粒の小さな結晶が地面に残された。


「えっ……本当に倒せたの?」


 アメリスはその場に立ち尽くし、目の前の状況が信じられない様子だった。彼女の手はまだ震えていて、さっきまでの出来事が現実なのかどうか確かめるように結晶を見つめていた。


「すごいよ、アメリス!やったね!」シトラはにっこりと笑いながら彼女に近づいた。


「本当に、私が……?これ、私が倒したの?」


 シトラは優しくアメリスの肩に手を置いた。「うん、あなたの力だよ。この感覚を覚えておいてね。でも、驚くのはこれからだよ。まだまだ、あなたは強くなれる。」


アメリスはまだ信じられない気持ちで結晶を手に取り、じっと見つめた。結晶は、フローライトそのもので、淡く緑色に輝く透明感のある鉱物だった。まるでそこに宿る力が静かに眠っているかのような、静かな存在感が漂っていた。


「これが……あの鉱獣の結晶……?」アメリスは、結晶が持つ意味を少しずつ理解し始めた。それは、彼女が倒した相手そのものであり、自分の手で勝ち取った力の象徴でもあった。

 

 

 フローライト

 - 色合いが豊富で、ブルー、グリーン、パープル、イエローなど様々な色がある。

 - 光源によって色が変わるカラーチェンジフローライトは珍しく、レアストーンとして人気。

 - コロンとした原石結晶が可愛らしく、鉱物標本としても人気が高い。


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