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家族はクリスマスプレゼント

作者: 紀希



小さい頃から俺は、


「大人っぽいね?」


って周りから言われていた。



それは自分なりに。"我慢"をしていたから。



周りから、そう評価される事を望み。


親父に、迷惑を掛けない様に。



そうやって、過ごして来たんだ。



いつもの週末。


親父は天気が良ければ、当たり前の様に。


俺を公園へと連れて行ってくれた。



毎回。


ずっと。



その度に。


「良いよ」


と断るのだが。


「パパが遊びたいんだ。」


と言って、俺はそれに付き合った。



お袋は、俺を産んで直ぐに亡くなった。



俺はその事をずっと悔いていた。


『俺が産まれて来なければ、、』


何て、何度も考えていた。



「親父。疲れてるだろ??



来なくも良いよ。」


「なあにっ。


まだまだお前に負ける訳にはいかない。」



毎日、朝早くから夜遅くまで。


俺が親父と顔を合わすのは、


休日の朝だけだった。



いつも寂しく無い訳じゃない。


ずっとひとりで、家に居た。



皆の家では、ゲームや携帯を当たり前の様に持っていて。


それらを俺も。欲しく無い訳じゃあ、なかった。


だけど、親父に。



「欲しい。」



なんて、言える訳も無かった。



毎日不恰好な料理を作ってくれて。


何も俺に文句を言わずに、必死に働いて。



そんな親父を俺は尊敬していた。


俺が親父だったら、俺みたいな子供の事なんて、、



「こんにちわ?」


そんな事を考えていると、いつの間にか隣に女の人が居た。


「こんにちわ、、」


綺麗な、女の人だった。


俺はお袋の顔を知らないが。


"お母さんみたいな"人だった。


女の人「良かったら私達と一緒に遊ばない?」


木の下の椅子には、女の子が座っていた。


あの子のお母さんだろうか、、


「今、お父さんと遊んでいるから、」


親父「、、お前が良いなら。


皆で。遊ばないか、、?」


この時には全てが仕組まれていたのだった。



「はじめまして。」


女の子「はっ、、はじめ、、まして。」


俺よりも年下のおとなしい子だった。


そこからは4人で遊んだ。



親父は、女の人と女の子を気にしながらも。


いつも見せない様な顔をしていた。



辺りはいつの間にか暗くなった。


いつもよりも時間が過ぎるのが早かった。


女の人「お腹。すかない、、?」


「すき、ました。」


女の人「ここから家近いんだけど。


良かったら、一緒に食べない??



あの子もまだ、一緒に居たいみたいだし。」


俺は親父を見たが、親父は頷いていた。


「良いの??」


女の子に確認すると、女の子は小さく頷いた。


女の子はゆっくり近付いて来ると、俺の服を掴んだ。


「お兄、、ちゃん。。?」


俺は少し困ったが、女の人は笑っていた。



親父と女の人は仲が良かった。


この時にはもう薄々感ずいていた。



親父が、この人の事が好きな事も。


この人達と、



"家族になるのかもしれない事を、、"



「お邪魔、、します。」


女の人「どうぞっ。」


親父は慣れているかの様に入った。



知らない家。


だけど、何故か温かかった。



女の人「嫌いな物は無い?」


「うん、、」


女の人「少し、待っててね?」


女の子「お兄ちゃん、、遊ぼう?」


女の人「手を洗ったらね??」


女の子「はい。



、、行こう??」


犬の散歩をするみたいに。


俺の服を掴んで、水道まで行った。


それは嫌では無かった。



手洗いうがいをして。


女の子の大切なぬいぐるみ達で遊んだ。



女の人「ご飯よ~」


女の子「はーい。



お兄ちゃん。一緒に食べよう??」


女の子の距離は近くて、嬉しそうだった。


女の人「あまり、しつこくしないのよ??」


女の子「はーい。」



女の人「ごめんね?


気に入ったみたいで、、



お口に合うか分からないけれど、


良かったらおかわりしてね??



いっぱいあるから、。」



親父「いただきます。」


女の子「いただきまーす。」


「いた、だきますっ。」


女の人「召し上がれっ。」



こうやって夕飯を食べるのは、はじめてだった。


親父「旨い。」


女の子「美味しいね?」


「、、うん」


女の人「良かったあぁあ、、



イエーイ!」


女の子「イエーイ!」


親父「アハハハ」



親父は幸せそうだった。



こうして、無事に顔合わせが済むと。


休日には、女の人達が泊まりに来た。


女の人「お邪魔しまーす。」


女の子「お兄ーちゃーん。」



そこからはあっという間だった。



まるで本当の家族かの様に。



休日は、ずっと一緒だった。



クリスマスがもう直ぐそこに来たある週末。


親父は、女の子と。俺は、女の人と。


別々になった。



親父「行ってきまーす。」


女の子「行ってきまーす。」


女の人「行ってらっしゃーい。」



気まずかった。


2人だけで居るのは、はじめてだった。



女の人「ねえねえ??



クリスマスプレゼント。


何か、欲しい物は無いの??」


女の人は、俺の直ぐ側に寄って来た。



俺は、恥ずかしかった。


欲しい物は沢山あった。


だけど、本当に欲しい物は既に決まっていた。



「欲しい物、無いの??」


女の人「私??!


まさか、聞かれるとは、思って無かったなあ、、



んー。。」


俺は、そこで答えるべき回答を、既に分かっていた。



けれど、恥ずかしくって中々、言い出せ無かった。


女の人「私は、、。」



心臓がバクバクとした。


早く言え!


早く!


早く!!



『家族が欲しいかな、、』



意志疎通。


以心伝心。



いや、俺が"それ"に合わせたんだ。


ゲーム機。ソフト。携帯。おもちゃ。


欲しい物は沢山あった。


でも、今直ぐ必要な物は何も無かった。



クリスマスのプレゼント。


一年に一度の。


大切な日の贈り物。



もしも、サンタクロースが居るのならば。


願いはきちんと伝わるはず、、



今。親父に必要なのは、、


俺がずっと、前から欲しかった物は、、 



たったひとつだけ。


それは、、



温かい場所(かぞく)だった。



女の人「、、本当に。


あなたは大人っぽいのね、?」


俺の身体を優しく抱き締める。


優しい温もりがあった。


良い匂いがした。



女の人「私じゃ、駄目かな??



"お母さんになるの"



「良い、よ。。」


俺は涙が溢れ出た。



ずっと甘える事が出来なかった。


ずっと、寂しかった。



ずっと、"お母さんが欲しかった"



この人になら。お母さんになって欲しかった。



引っ越しの前日。


親父「本当に、良かったのか??」


親父は俺に尋ねた。


「今更かよ、、



まあ。親父が好きなんじゃあ、仕方ない??」


親父「お前は、好きじゃないのか??」


「好きとかそういうのは分からないけど。


この人なら、お母さんでも良いのかな?って。



それに、、」


親父「それに??」


「親父よりも、料理旨いしさ。」


親父「そりゃ、ちげえねえ。」



『アハハハ』



クリスマスプレゼント。


それは、大切な人への。


想いのこもった贈り物。



妹「お兄ちゃんっ。」


お母さん「お帰り。」



大人っぽい男の子が欲しかったのは。


家族(あい)と言う名の、大切な物なのでした。



『ただいまっ』



















Merry Christmas!!!



良い1日を。





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