76(サメ)
童話『サンタさん』
サンタさんは、20歳の時にサンタさんになりました。
サンタさんになったサンタさんは、先輩サンタさんにサンタさんの何たるかを学び、サンタさんはサンタさんサンタさんしたサンタさんになりました。
48年。
サンタさんがサンタさんになるために、膨大な年月が流れました。
68歳になったサンタさんは今日(4月3日)も子どもたちの枕元にプレゼントを置いて回っています。
サンタさんの住んでいる街の子たちは、あまり贅沢なお願いをしません。ほとんどの子が「ファミチキが食べたい」と書くのです。
サンタさんはポッケにパンパンにファミチキを詰め込み、子どもたちの家を回ってはファミチキを取り出し、枕元に置きます。
仕事を終えたサンタさんの手はいつも油まみれで、それが努力の証でもありました。
サンタさんはいつも仕事帰りに海に寄ります。塩水で手を洗うとよく落ちるのです。
ある日、サンタさんは波にさらわれてしまいました。
サンタさんはカナヅチでした。もがけばもがくほど沈んでいきます。
そこに、1匹のサメが近づいてきました。
サンタさんは焦りました。ポッケと手から匂うファミチキがおびき寄せているのだと思ったからです。
しかし、サメはサンタさんを食べようとはせず、「助けてあげるニャ」とサンタさんをヒレに引っ掛け、海面に向かって泳ぎ始めました。
サンタさんはサメにしがみつきながら、「ありがとう、ありがとう」と泣きました。
砂浜にサンタさんを下ろすと、サメは「次は気をつけるニャ」と言って海へ帰っていきました。
サンタさんは「なんで語尾ニャ?」と思いながら、「ありがとう」と言って手を振りました。
翌日のファミチキはなんだか塩辛かったといいます。




