59(肘ついて食べないの!)
こら優華! お皿に肘ついて食べないの!
お母さんそんな子に育てた覚えないよ!
っていうか、お皿に肘ついて食べるの世界的に見てもあなたくらいよね。なんなのよお皿に肘って。
そもそもなんなのこの店は? 後ろに同じお酒の瓶たくさん並んでるし、訳わかんない食べ物らしきものもたくさん並んでるし、今何食べてるものも分かんないわよ。かろうじてピーマンみたいな味がするけど、それ以上のことがないのよ。なんなのよこのお店。
「お母さん」
なによ。
「実は私、赤ちゃん出来たんだ」
っっっっっっっっっっっっっっえ!?
「嘘じゃないよ、本当」
いや別に嘘だろなんて言ってないけど。
「そう⋯⋯」
で、相手は誰なのよ相手は!
「しじみ」
えっ? そういう苗字の人?
「いや、貝の」
何言ってるの?
「遊んでたらいつの間にか妊娠してたの」
どう遊んだらそうなるの? 何言ってるの? ほんとになにを言っているの?
「⋯⋯お母さん」
なに? 大丈夫?
「テッテレー!」
えっ
「母の日のドッキリでした!」
えっ?
「いやだから、母の日のドッキリ。妊娠は嘘」
母の日に嘘つく習慣なんてあったっけ?
「ないよ」
エイプリルフールと間違えてる?
「間違えてないよ」
えぇ⋯⋯
あ、でも母の日ってことはなにかプレゼント用意してくれてるの?
「ないよ。ドッキリだけ」
そんなことあるんだ。
「あるよ」
あるの!? プレゼント!
「いや、そんなことあるんだに対しての返事だよ。プレゼントはないよ。ドッキリだけ」
ああー。
「まあ元気出しなよ」
うん。




