52(ホネコーン)
ノイロ州北部にあるザリブ山には、奇跡のような身体を持ったユニコーンが住んでいました。
月明かりに照らされたその姿は、まさに神秘と呼ぶにふさわしい見た目をしています。
人々は彼のことをホネコーンと呼び、出会う度に写真や動画を撮りまくっていました。
ある日、ホネコーンが山を散歩していると、小学3年生くらいの男の子が、小学4年生くらいの男の子と、小学6年生くらいの男の子と、小学6年生くらいの男の子と、58歳くらいのおじさんに寄って集ってコーラをかけられているのを見つけました。
「いじめはいけないよ。いじめるなら私をいじめなさい」
ホネコーンがそう言うと、小学6年生くらいの男の子が「うるせぇな! 誰だテメー!」と言いました。2人とも。同時に。同じポーズで。
それを聞いたホネコーンは「え? 知らんの? ホネコーンって名前でYouTubeやってるんだけど、知らんの? 登録者66万人おるけど知らんの?」と早口で言い放ちました。
「知らん」
全員が口を揃えて言いました。いじめられていた小学3年生くらいの男の子もです。
「いや知れよ」
不機嫌そうなホネコーン。今にも頭の角が引っ込んでしまいそうです。
「で、そのホネコーン様が俺たちになんの用だよ」
小学4年生くらいの男の子が言いました。両手の小指を立てたまま腕を組んでいます。服装は女性用のビキニです。
「いやだからいじめやめろって。さっき言ったやん」
明らかにイライラモードのホネコーン。今にも頭の角が引っ込んでしまいそうです。
「なんでお前みたいな骨に指図されなきゃならんのだ? 俺たちはここらではちょいと顔の売れたワルなんだぞ?」
小学6年生2人。
「そうだぞ」
小学3年生。
「ちょいと顔売れてるくらいで調子乗ってんじゃねーぞ。こちとら登録者66万人なんだからな」
「そうだった」
自分のミスを潔く認める6と6。
「分かったらもうコーラなんてかけちゃダメだぞ。もったいないから。アリんこ来るし。分かった?」
「はーい!」
手を挙げて大きな声で返事をする58歳くらいのおじさん。全裸なのですが、体中にメダカのタトゥーが入っていて怖いです。1匹だけドジョウがいたりするのでしょうか。怖いです。
「この山の平和は、私が守る!」
そう言いながら、ホネコーンは麓のスーパー銭湯へ向かいました。
ホネコーンの姿が見えなくなった頃、4人はまた小学3年生くらいの男の子にコーラをかけ始めました。人はそう簡単に変われないのです。めでたしめでたし。




