34(テメーおりろよ)
「なに乗ってんだよテメーおりろよ」
「あ? 『乗ってる』じゃなくて『乗っていただいてる』だろカス」
「あんだと? やんのかコラ! ゆで卵みてーなカラーリングしやがって!」
「オメーの羽根も同じような色してんだろーが」
「同じじゃねーだろ目ェ腐ってんのか? 黄身が多いだろうが。黄身が多い方がうめーんだよ。それにこれはあたしの羽根じゃねーよ。後ろにペガサスがいんだよバーカ」
「そんなに黄身を盲信してるとそのうち裏切られて殺されるぞ」
「あ? 何言ってんだテメー?」
「黄身はいつもオレたちの喉元を狙ってんだ」
「なんかいい匂いしねーか?」
「くんくん⋯⋯どっかでバーベキューやってんな」
「行くか?」
「行ってどうすんだよ」
「食べんだよ」
「マジかよ。知らない人のバーベキューだぞ」
「よし行こ! ん? 足が離れない⋯⋯ってなんじゃこりゃ柄気持ち悪っ!」
「その台お前のじゃないのかよ。そんで別に気持ち悪くないだろお前こそ目腐ってんじゃねーの?」
「目なんかねーよ」
「いやあるだろ見えてるぞ」
「これは目じゃなくて半年前にスライスしたプチトマトだよ」
「もしそうだとしてなんでそんなの顔に貼ってんだよ」
「あたしの顔はキャラ弁なんだよ」
「弁当に半年前のプチトマトなんか入れんなよ」
「鼻はハムで」
「無視かよ」
「口が折り紙だ」
「弁当に折り紙入れんなよ」
「あたしに文句言うなよ。ママに言えよ」
「お母さんに作ってもらったのか?」
「いや、自分で作った」
「なにお前、怖⋯⋯」
「それよりなんかいい匂いしない?」
「だからバーベキューやってんだってば」
「行く?」
「足離れないんだろ?」
「そうだった」
「でも食べたくなる気持ちは分かるよ、めっちゃいい匂いだもんな」
「じゃあ行ってこればいいじゃん。あたしは足がくっついてるから行けないけど、お前は行けるじゃん」
「いや、オレもお前の頭にくっついてんだわ」
「え? そうなの?」
「うん」
「どうすんの」
「どうもできない」
「じゃあもうあたし達ずっとこうなの?」
「そう。ずっと苦しみ続けるんだ」
「地獄みたい」
「こんな青空の下で、こんなカラフルな台の上で地獄を味わうなんてオシャレだな」
「マジでお前の感覚分かんねーわ」
「なんかミサイル飛んできてね?」
「ホントだ、あたし達動けないけどどうす




