31(空き瓶2)
ちげーよ。お前らなんなんだよ。どう考えても違うだろ。瓶に入ってりゃなんでもそうなのかよ。
今回はちゃんと蓋もしてあるだろうが。しかも周りに謎の道具みたいなのが置いてあって、ブドウもある。
分かるだろ? 俺はワインだ。ションベンじゃねーの。
まったく、最近の奴らは俺を見るとすぐに指さして「真っ黄ションベンションビッピー!」と騒ぎやがる。
周りに人がいたらどうするんだよ。俺が真っ黄ションベンだと思われるじゃねぇかよ。アイツらはわざわざ確認しに来ねぇから、一生俺の事をションベンだと思い込んで生きていくだろうな。
あ? なんだお前。
えっ! 俺を持ち上げて⋯⋯
ちょっと待て! 俺はラッパ飲みするような飲み物じゃない! やめろ! やめろーーー!
「ぷはぁっ、やっぱ道端のションベンはうめーなぁ!」
ション⋯⋯ベン⋯⋯?
俺がションベンだっていうのか? そんなはずは⋯⋯
いやしかし、飲んだ本人がそう言っているんだ。そうとしか考えられないか。
こいつが嘘を言っているという可能性はないだろうか。いや、1人で道端に落ちている瓶の中身を飲み干して、「道端のションベンはうめーなぁ!」と嘘で叫ぶなんてメリットがなさすぎるか⋯⋯
じゃあ俺がションベン確定ってこと!?
待ってくれよ、俺がションベンだっただなんて⋯⋯周りに謎の道具みたいなのも落ちてるし⋯⋯ってなんだこりゃ! ただのゴミじゃねーか!
ただのゴミの隣に立ってる俺は⋯⋯!
ワインの可能性もあるだろ! ゴミの隣にワインが立っててもいいだろうがー! いつからゴミの隣がションベンの立ち位置だと決まったんだ!
そうだ! ブドウもあるじゃないか! これはどう説明するんだ? ブドウがそこにあったらどうやったって俺はワインじゃないか? なぁ!
え⋯⋯ブドウから直接ポンポン生まれるものじゃないから、隣にあっても関係ない⋯⋯?
確かに。
でも待ってくれよ! 俺は⋯⋯ワインだ! ションベンじゃねーんだ! 自覚があるんだ! だから、だから見逃してくれぇ! まだムショには行きたくねぇよぉー! 助けれくれぇー!
現在ションベンは囚人服を着て牢屋に入っています。




