21(金属ボウル人間)
あ? ちげーよ。生まれつきこうなんだよ。被った状態で生まれてきたの。先天性なの。文句あんの?
えっ? 被ってるとはまた違うだろって? スーパーアルティメットエリザベスカラー? なにそれ。
雨の日がどうしたって?
は? 溺れるわけないじゃん。大人しくじーっと立ってるわけないだろ。ある程度溜まったら飲むか捨てるかしてるよ。
そりゃ不便だよ。やたら鼻がでかい自分の顔しか映ってないもん。見えてないのと同じだよ。
重さ? 知らんけどとりあえず俺込みで110kgある。
は!? お前正気か!?
穴なんて空けられるわけないだろ!!! ふざけるな!!!! 溶かすとか怖いこと言うなよ! 体の一部なんだぞ! 分かった、お前狂人だな? 狂人は帰れ!!! 帰れーーーーー!!!
帰れーーーーーーーーー!!!!!!!
どうやって服着たかって? 見りゃ分かるじゃん。チャックだよ。
寝る時? そんなの寝る用の床で寝る以外ないだろ。そう、この形に凹んでるんだよ。
は? 靴? 別に普通だろ。なんでも聞けばいいってもんじゃないぞ。
もういい? これ以上インタビューしても意味なさそうじゃない? だよね。
ということで、はい。ありがとうございましたー。
え? お辞儀した時に見えた顔がキムタクに似てた? そう? ありがとう。
もったいないからやっぱり襟巻き外せ? さっき言ったよな、体の一部だって。出来るわけないだろ。あ? え、ちょ、ちょっと! やめろよ、離せよ! おい! どこへ連れていく気だ! 離せ! 離せーーーー!!!
4ヶ月後、俺は相変わらず首の金属から血を流し続けていた。キムタクに似てるから売れるよと言われて無理やり千切られたわけだが、キムタクがまだ元気に活躍している以上、俺がどれだけ頑張っても人気者になるということはなかった。
ただ首から血の出る金属が生えてるタイプのキムタクとして笑われるだけの日々だった。
でも、ひとつだけ良かったことがある。テレビに出た時にキムタクに会えたことだ。
握手はしてもらえなかったらしいです。




