17(嘘鼻村)
そう、あれは3年前の3月の出来事。
今思い出しても恐ろしい⋯⋯
当時ウェブライターだった私はβ県の山間にある伝説の村『嘘鼻村』に取材のために行ったの。
噂では相当やばい村だと聞いていてね、覚悟はしてたつもりだったんだけど、嘘鼻村っていう名前だからどうしても心のどこかで軽く見ちゃってたの。
それが間違いだったわ。
ピノキオやウソップみたいな村人がいる村だと思ってたら、全然違ったのよ。真逆なの。真逆。
その村の人は全員鼻がなかったの。生まれた時からついていないとかそういう感じじゃなくて、切り落とされてたの。1人残らず。
私は意を決して村長に聞いてみたわ。これでもライターの端くれだからね。
「なんでそんなことするんですかぁ〜?」
この一言を言うのにどれだけ汗をかいて血の気が引いたやら。
すると村長は答えてくれたわ。
「この村では1回でも嘘ついたら神様に鼻を捧げなきゃなんないんだよーん」
背筋が凍ったわ。
だって私、鼻をほじることだけが生きがいなんですもの。鼻がなくなったら生きる意味がなくなっちゃうでしょ?
こんな所に1秒でも長く居てはいけない、そう思った時には口が勝手に動いていたわ。
「すみません、急用が出来たので帰りま〜す」
それを聞いた村長が食い気味に言ったの。
「急用?⋯⋯それは本当ですかの?」
しまった、この村で1番してはいけないことをしてしまった、と思ったわ。
私は答えずに村長の家を飛び出して、車を停めてあった場所に向かって力の限り走ったわ。
でも村長から連絡が行っていたのか、あと1歩というところで村人たちに捕まってしまったの。男の人たちは力が強くて、それが何人もいるんだから敵いっこないわよね。
私はそのまま村長のところに連れていかれて、祭壇で鼻を切り落とされたわ。
でも拾ってくっつけてみたらくっついたの。そんで走って逃げ切ったのよ。すごいでしょ。
え? この髪型?
普通でしょ?
え、なんで裸なんだ、ですって?
普通でしょ?
今日は私の恐怖体験の取材なんだから、そんなどうでもいいことにいちいち突っ込まないでよね。
ホラーも書けるんだね、七宝ちゃん!
それにしても、入入芝美智子さんの治癒力すごいね。鼻が1回なくなってるなんて思わないもん。近くで見ても⋯⋯あ、なんか線入ってたわ。でも遠くで見る分には変わらないから、ね?
入入 芝美智子(いりいり しばみちこ、1898年11月41日-)は、日本のWebライター、怪談師、サッカー選手。δ県赤橙黄緑青藍市出身(出生地は@県)。




