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最近、娘の服装が…


 最近、娘の服装が気になる。





 文化祭の準備とやらで忙しいのか、最近は娘の帰りが遅い日もある。

 疲れが顔に出ている時もあって少し心配だが、楽しそうでもあるので口は出していない。

 無理はしていないだろうか?

 今のところは問題無さそうに見えるが、心配は尽きない。

 そのうち何か……そうだな、文化祭が終われば労ってあげよう。


 さて、意気込んだは良いものの…正直な話、娘が何を喜ぶのかがわからない。

 食べ物の好き嫌いくらいなら把握している。

 卵を使った料理全般が好きで、特に茶碗蒸しが大好物。

 苦い物全般が嫌いで、特にゴーヤとピーマンが苦手。

 そう言えば、娘に内緒で細かく刻んだピーマンをオムライスに混ぜた時には、怒って一週間も口をきいてくれなかったなぁ……。

 あれはとても悲しかった。

 あれ以来、娘の嫌いな食材は買わなくなったくらいだ。無ければ使う事も無い。

 おっと、思考が逸れてしまった。

 兎に角、何かしら考えておかねば………。



 困った時の同僚。

 と言う事で、相談してみたのだが……。


「この前化粧品あげたんですから、次はファッション関係って事で服とかが良いんじゃないですか?」


 そう言われた。


 うん。

 成程と思った。

 確かに、普段着以外に買ってあげた記憶が無い。

 それも、無難な物が多く、そういった事に疎くともオシャレではないと解る様な服をだ。


 …………………。


 ファッション雑誌でも買って、どういった服装が好みか聞いてみた方が良いだろうか?

 そう思ったのだが、それに対し同僚は―――


「や、素直にお金渡して自分で選ばせてあげた方が良いですよ?」


 ――否定的だった。

 下手な事はしない方が良いらしい。

 良かれと思って選んでも、趣味嗜好が違う上、異性で年齢にも差があるから碌な事にはならないと。

 いや…うん。

 まあ、自分で選ばせた方が間違いが無いな。

 それじゃあそれで……。

 ん?

 え?

 一緒に行っちゃダメ?

 予算だけ渡して1人で行かせる?


 …………………。


 しかし、結構な値段が要るだろ?

 娘は普段、あまりお金を持ち歩かないし……。

 え?

 父親同伴で服を買うのは抵抗が?

 そうなの?

 そ、そうか……。

 何? 文化祭の前が良い?

 わかった。

 そうするよ。

 早速、今日帰ったら言ってみるさ。

 すまんな。

 いつもありがとう。

 照れるな照れるな―――――ぅおっ!?



 ……行ってしまったか。

 揶揄(からか)い過ぎて叩かれてしまったな。

 反省。

 次会った時には謝らなければ……。

 さて、帰ったら娘を労うか。


 …………………。


 娘はとても喜んでくれた。

 3着くらい、丁度欲しい服があったようだ。聞いておいて良かった。

 ああ、余った分はそのまま小遣いで取っておくと良い。


「ありがと、お父さん」


 ふふ。

 娘にお礼を言われるのは良いな。

 これだけでも、思い付いた甲斐があったというものだ。



 おかしい。

 娘が買ってきた服を見せてくれない。

 何も着ている姿を見たいと言った訳でも無いのに。

 まさか……。

 嫌な予感がする。

 ひょっとすると、見せないのではなく、見せられないのでは?

 服自体は買っている筈。店の紙袋を持っているのを確認している。

 なのに見せてくれない。

 つまり……。

 見せられないほど、露出が多い服の可能性が!!?


 …………………。


 落ち着こう。

 まだそうだと決まった訳では無い。

 そうだ。

 もしかすると、単純に父親へ見せるのが恥ずかしいだけかもしれない。


 …………………。


 気になる。

 非常に気になるが、しつこく言って嫌われるのは嫌だ。


 休日、娘が文化祭の打ち合わせついでに遊んでくると外出した。

 初めて見る服装だった。

 露出は……あるが、街中で見掛ける人達よりは少ない。

 ん? ああ、いってらっしゃい。

 気を付けてな。


 …………………。


 注意した方が良いだろうか?

 いや、これくらい普通だと言われると何も言えないな。

 ふむ。

 良し、食事の時にでもそれとなーく……。

 ダメだな。

 自然に言える自信が無い。

 どうしよう……。

 いや、他の服は普通で、偶然今日見た服装が露出気味だっただけかもしれない。


 …………………。


 気になる。

 気になるが……見せてくれと言うのは違う気がする。

 うーん……。



 困った時の同僚。


「普通ですって」


 娘が着ていた服装を伝えると、そんな返事が返って来た。

 え? そうなの?

 でもまだ中学生だよ?

 女性に年齢は関係無い?

 ……そうか。

 いや、そうだな。

 娘も女性である事には変わりない。

 まだという言い方は良くないな。

 ん?

 何を今更。

 お前が女性だという事は知っているさ。


 …………………。


 何故驚く?

 いや、扱いがどうって言われてもな。

 わざわざ男女で扱いに差は付けんだろう?

 ああいや、悪い意味じゃ無いんだぞ?

 そうだ、お前はそこらの奴等よりも可愛いだろ。

 だが仕事の付き合いに………どうした?

 え?

 いきなりも何も、最初に会った時からそう思ってたさ。

 ……大丈夫か?

 いやいや、調子が悪いのなら帰った方が良い。

 ん? 違う?


 …………………。


 ま、まあ…大丈夫なら良いんだが。

 わかった。

 わかったから、それ以上言わなくても良い。

 ああ、そうだな。

 この前のも合わせて、今度礼をさせてくれ。

 え? 家に?

 家はちょっと……。

 いや、前にも言ったが、お前と娘を会わせたくないんだ。

 何故と言われてもだな……。

 ああもう、わかった、言えば良いんだろう。

 つまりだな、お前はオシャレな上に可愛いから、娘が真似をして男から言い寄られるようになったら困るんだよ。


 …………………。


 ん? 帰るのか。

 やっぱり体調が良くなかったんじゃ……。

 あ、ああ…ゆっくり休めよ。残りは代わりに片付けとくから。



 ――体調には気を付けないとな。


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