同僚(年上)からの相談を…
わたしは大卒で就職した。
特にやりたい事があった訳でも無く、なんとなくで近くの大学へ行き、そのまま就職活動をして今の会社へ入社してから今に至る。
特別頭が良い訳でも無く、普通よりはちょっと上かな? と言ったところ。
突出した能力も特に無い。
今まで一度も頼られた事が無かった。
だからかな。
頼られた時、その内容が何であれ、わたしには嬉しく感じられた……。
その人はわたしの同僚で、同期入社だった。
但し年上である。
うん。
聞いた時、最初はびっくりしたよね。
どう見ても同い年だったもん。
あれだね、童顔ってやつ? イケメンの部類に入ると思うけど、どっちかと言うと可愛い感じ?
わたしの知り合いには居なかったタイプ。
でも、年上だからと偉ぶらない。所謂できた人間って感じ。
それでも、社会経験は向こうの方が上だから、見ていて学ぶ事も多い。
だからわたしは、心の中では人生の先輩だと思う事にしている。
特に対人関係は凄いよね。処世術ってやつ?
わたしなら諦めるような相手でも、いつの間にか仲良くなってる。
それで、仕事の話もスムーズに進むんだもん。あれには敵わないし、とても真似できない。
本人には言わないけど……。
だって、前にそれとなーく褒める言葉を使ったら、やんわりと否定されてしまった。
あれは謙遜とかじゃなく、本気でそう思ってる感じだった。
ならばと、わたしはそれ以来労う事はあっても褒め過ぎないようにしている。
すると不思議な事に、会話が続くようになった。
同僚との会話は楽しい。
尊敬の気持ちが、別のものに変わるのに数年もあれば十分だった……。
そんな同僚が、最近わたしとの会話の中で、たまーにだけど相談もしてくれるようになった。
うん。
ちょっと嬉しかったよね。
前に娘さんが居るって聞いた時は驚いたけど……。
でも、奥さんはいないらしい。
娘さんが幼い頃に亡くなったそうだ。
軽い気持ちで聞いた事を後悔したよね。
同僚は気にするなって言ってくれたけど、その時の寂しそうな表情が忘れられない。
少し…ほんの少しだけ、今は亡き奥さんに嫉妬してしまった。
そんな気持ちを追い出し、逸らしてしまった話題を元に戻す。
どうやら、その娘さんとの関係で悩みがあるらしい。
致命的に悪くは無いけれど、会話が弾まないんだって。
うん?
中学生だったら、世のお父さんが通る道じゃないかな。
聞いてる分だと、確かに嫌われてはいなさそうだけど……。
案外照れてるだけだったりして。
実際のところは知らないけど、聞かれたからには思った事を言ってみる。
や、深刻に受け取らず、そうかも~くらいで。
しばらく元気無いなーなんて思っていると、突然いつもより上機嫌になっていた。
その日の昼、さり気なく一緒に昼食を食べていると、腕時計をしているのが視界に映ったので聞いてみたところ、娘さんから誕生日プレゼントで貰ったんだそうだ。
とても幸せそうな表情。
…………………。
おっと、思わず見惚れてた。
でも大丈夫。
同僚は鈍感で、その視線の意味を勘違いしている様子。
少し残念だけど、その気持ちは自分で伝えたい。
だからその時まで気付かれたくは無い。
そんな優しい娘さんに会ってみたいなぁ……。
なんて事を言うと、嫌だと拒否られる。
無念。
これまでにも何度か言ってみてて、最初は冗談半分だったけれど最近は割と本気だったりする。
だからちょびっとだけショックだったりする。
……ちょびっとだけだよ?
ある時、化粧品について教えて欲しいと言われた。
え?
これまでも結構話してたんですけど?
もしかしてとは思ってましたが、本当に聞いてなかったんですねー。
ふーん……。
いえいえ、怒ってませんとも。
呆れてるだけです。
まあ良いでしょう。
今度はしっかり聞いてくださいね?
まずは―――――
ふふふふ。
お礼を言われちゃった。
それも、軽い感じじゃなく、しっかりと感情が籠ったお礼……。
同僚だから、仕事で助け合う事はある。
勿論その時にも、お礼は言われる。
だけど、やっぱりどこか義務感のある感じがする。
挨拶みたいなものだ。
うん。
全然違うよね。
テンション上がっちゃうよね。
さあ! 残りの仕事がんばろー!
同僚がまた落ち込んでいる。
今度はなんだろう?
え?
んー……。
男、できたんじゃないですか?
目に見えて落ち込んだ。
でもすぐに色々と言い訳を始める。
よくそんなに思い付くなーって感心する。
ふーん。
いやいや、聞いてますって。
でも、わたしの言った事を否定したいんでしょう?
…………………。
改めて、化粧品のアドバイスをした時の感謝をされた。
なっ、突然なんですか。
そ、そんな改めてお礼を言われても。
いやまあ、お役に立てたようで……。
あれ?
全部そろったやつ購入したんですか?
いやいや、最低限の道具があれば……。
あー、そうですね。
実物見ないと口頭だけじゃ難しいですよね。
じゃ、じゃあ…今度わたしと……。
…………………。
ちょっとは考えてくれても良いじゃないですかー……。
なら、娘さんにわたしが―――
そんな食い気味に却下しなくても。
わたしが午後から外回りな事を理由に、追い出されてしまった。
むむむ……。
――わたしは諦めない!