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「ちょっと、違います違いますって!」
「?」
「ちょっ、はてな?じゃなくて! 痴漢じゃ……」
突然の冤罪に戸惑いを隠しきれない。降りかかる不幸も明らかな悪意を持っている。
「大丈夫ですか、ニーナ! すみません、はぐれてしまってすみません……。――あれ、この子は……?」
「シスター、その人が痴漢してきた」
「ち、痴漢!?」
蔑んだ目で、こちらを睨んでくる修道女らしき人。ロングの金髪に一部後ろで結んでいる髪型をしている。
「え、ええと……ご、誤解です! ほ、ほら、そこの壁を見てよ、矢が刺さっているよね! あの矢から彼女を守ろうとしたんですよ!」
「――ええ、それも自作自演なんでしょう? 狡いですねぇ」
「そ、そんなぁ……」
正義の救出劇も一転、地獄の切り札と化す。絶望の淵に立たされる。あ、なんだか川が見えてきたぞぉ…………?
終わった、と灰になりかけていると、そこに本当の救世主が訪れる、はずだった。
「おーい、こんなとこに居たのか、ってこの麗しい二人の方々は?」
「お、お父さぁん……」
「もしかして、貴方のお子さんですか? あの、この子、私の大切なニーナに痴漢したんですよ!」
これは、誤解を解くチャンスだと、お父さんに必死に訴える、が。
「うわ、まじかよリオ。……やっちまったもんは仕方ない。……男として、死んでこい⭐︎」
「ちょぉぉ!?」
肩に手を置き、親指を立てて、キラーんという、効果音が入りそうな白い歯を見せつける憎たらしい奴。
ギリギリと睨みつけると、空笑いと共に、流石に満足したのか、二人を説得し始める。
「お、まぁ冗談はこのへんにしておいて……お二人さんどうやったら、納得してもらえるかな?」
さっきとはうってかわったその真剣な態度に、不覚にも少し頼りがいを感じてしまう。
「そんなの、決まってますよ。証拠を出せばいいんです証拠を。そうすれび、私たちも納得して引き下がりますよ」
「証拠ねぇ……。お嬢ちゃん達、ちょっと頭を貸してくれるかい?」
いつもどおりの指の動き(きもい)を見せ、修道女は、さらに嫌悪感を全面に出す。
「なんですか、私にまで手をかけようって言うですか!?」
「違うって。証拠だよ。証拠を見せるのさ」
「?」
そういうと、二人では無く、僕のおでこを触ってきた。
「ん?」
「ほんじゃあ、証拠もらうよー」
「?……っ!?」
頭の中から、ごっそり持ってかれた感覚がする。あれ、ここは?
「ややこしいから、座っておいて」
「う、うん?」
僕はお父さんの言われた通り、道の端に三角座りで座り込む。お父さん何してるんだろう? それにあの二人は誰?
「ほんじゃあまぁ、失礼しまーす。あ、……ニーナちゃん、ちょっと、前髪失礼するよ」
「わかった」
ゆるい感じで話す彼女。その隠された顔を見た瞬間、なぜだか特別な感情が湧いた。
「ほいさ、……こんな感じかな。どう? これで納得してもらえかな」
お父さんが何かした途端、金髪の子は震え出した。
「な、な、なにしたの?」
「そりゃ、記憶を埋め込んだのさ。これが何よりの証拠だろ?」
「さ、流石にこれは、納得せざるを得ない、けど……! けど!」
まだ、疑いが解けきれないのか、食い下がる。けれど、もう一人の女の子が泣き始めたのは同じタイミングだった。
「ああ、ああ、あっあ……」
「ちょっと、なんで泣いて……おい、リオほんとにやったのか?」
記憶が戻ってきた僕は、全力で否定する。
「ち、違うって、そこの金髪の子が、証明してくれるでしょ!?」
「違う……」
「「「え?」」」
盲目の子は涙を拭いながら、頭を横に振る。
「あ、もしかして……」
「そう、そのもしかしてだよ……」
「セカイってこんなにも、綺麗なんだ……」
なんででしょうねぇ。気がついたら日付がかわってるんですよねぇ。……許して(懇願