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「おっしっ。栄養補給も済ませたし、……済ませたし?」
「何するかも決めずに叫ぶからだよ〜」
「……俺の息子はそんな可愛くない事いうのかぁ?」
カチャカチャと皿を洗う音と、お父さんがはしゃぐ音が共鳴する。それに、僕の微笑みもセットで鳴る。
「やること……そうだな……うーん……そうだ、買い出しにでも行くか!」
「え、お父さんできるの?」
「ちょっ、それどない意味やねん!」
関西人みたいなノリでツッコミをする。それに対して、首を傾げる。
「僕の記憶だと、お父さん買い出し嫌いだったんだけど……」
「あっ…………い、いやーお父さんなー、う、うん。あ、っとー……そう! お父さん買い出しに快感を覚えちゃってな!」
「?」
なぜか、買い出しの良い点を話し出す。世間一般では、相当やばいやつだが、リオは何故かそういう偏見はない。
「てっ、ことでな! お父さんは買い出しが好きになったんだ! ほら、それじゃ行くぞ、ゴーゴーゴー!」
「ちょ、どうしたの?」
男は焦りのあまり、寝巻きのまま玄関に向かっていた。
「そ、それじゃあいくか…………。あ、そうだリオ言い忘れてたんだがな」
「?――うん」
冷静さを取り戻し、先程の取り乱しを恥ずかしがるお父さんは、突然思いついたかのように、語り出す。
「すこし、記憶の混濁が起きてるかもしれないが、俺達は、お前のそれを治す為に旅に……出てたんだ。だから、まぁ……俺からははぐれんなよ」
「そうだったんだね。わかったよ」
大変苦し紛れの言い訳をする男はあらかじめ女と作戦を練っていた。
その名も『息子の盲目を治す為に旅にでたが、諸都合により、帰れなくなってしまったー』作戦だ。因みに命名は女がした。
(相当……といか、ほぼ無理がある言い訳だが、一度死んでしまった場所へは還せないらしいからな。なんとかここに馴染ませるしかないしな)
「それに、覚えてないかもしれないが、お父さんはこの旅でな、魔法を覚えたんだ」
「??????」
ついに頭がおかしくなったのかと疑ってしまう。一度前にお父さんに否定された「魔法はあるのか?」という、話題を思い出したからだ。
「なんか、お父さん別人みたいだね。前とは正反対」
「!?――そ、そうだな。お父さん前は情けないぐらいに無情だったが、この旅のおかげで、せ、成長したんだ」
ほれ、と言い、指を鳴らすと。お父さんが消えていた。
「!?――わぁ!」
「!――ほ、ほらね。お父さん『ワープ』って奴を覚えたんだ」
後ろだよ、と言う前に後ろを振り向かれ、一瞬ビクッとする男。だが、なんとか魔法の存在を証明して見せた。
「今回はこれで、街に行って買い出しをするからな。ほれ、掴まれ」
「?――わかった」
しっかりと、袖を握る。お父さんは笑みをくれると、前を向き、真剣な面持ちになり。
「合言葉は?」
「あいことば?」
「合言葉はこう言う時のお決まりだろ!」
「そ、そんな無茶振りやめ……」
やれやれ、と肩をすくめて、頭をくしゃくしゃしてくる。
「しょうがないな。いいか覚えとけよ?『俺の妻は世界一可愛い!』だ」
「僕のママは世界一可愛い!」
「おっけ! れりごー!」
「れっつごー!」
平日でも一本あげれるか、とても不安ですが、精一杯がんばります。あ、評願(短縮系