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「んっ……」
小林理王は森の中に倒れていた。
それは、現代日本のどこか――ではなく、そこは異界のものだ。
要するに、地球ではない。ついでに別次元に存在する世界にいた。
「なんで、僕は倒れて………………………………眩しい」
「――え、え、……へ、え……う、そ……」
人は本当の衝撃を受ければ、うまく声が出ないと言う。
見える……見える!
勢いよく飛び上がり、近くにあった樹を掴む。
感触は知ったもの。だけど
「こんなにも、樹というものは、美しいのか……!」
樹も、土も、草も、葉も、空も、光も、虫も。
手も、足も、肌も、腕も、指も、髪も、細胞も!
全部が見える。
流れ出す涙は、正に滝のようだった。その涙さえ美しい。
「もっと……もっと見たい……宝物に入れたい!」
気づけば走り出していた。状況把握も、食事も忘れて。
目指めた時は、太陽よのうなものは真上に有ったが、一通り見終わった時には、夜になっていた。
「とんでもない。きれいだな。この……世界……は」
宝物は地に伏せていた
「おやおや、こんなところに子が倒れてるとは。どこから迷い込んだのか。……そもそも、迷い込めるのか」
「よいっしょ、と。私の秘密基地に、ご案なーい」
「入っていいか…………って、なんだその子供は。まさか、また攫ってきたんじゃないだろうな」
「違うわよ! このネオフォレストで倒れてたのよ。……あ・と・ね、その言い方だと、私がいつも、子を攫ってるみたいな言い方じゃない」
「ああ? 違うっけな? ……ってやめろやめろ! あちぃ!」
女は、不満そうに顔を顰め、指先に青い炎を灯らせていた。
「私は一度っきりだって、子を攫ったことなんてないわよ。それより、私に用があるんでしょ?」
部屋の中は燭台のお陰で、明瞭に写っていた。その童顔な顔がくっきり見える程に。
女の隣の椅子に男が座ると、リオを指差した。
「いい、いい。そんなことより、この少年の事を知りたい。…………既に記憶を読み取ってるんだろ? ほれほれ」
「やめなさいよ、その指をくねくねするの。普通に気色悪いわよ。ただでさえ、剣術の特訓のせいで、指が太くなってのに」
はぁ、とため息をつき、ズレていた掛け布団をかけ直す。
「それが困ったのよね。この子、どうやらこの世界の住人じゃないのよね」
「ハァ!? どういうことなんだ? そんなことあり得んのかよ」
「私も半信半疑なんだけどね。正直、記憶の混濁とかを疑ったんだけど……。そうなったら、もうちょっと深いところまで入ったんだけど……」
頭を抱えて、ほんのりした後悔を滲ませる女に、男は首を傾げる。
「君ほどのヒトが困ることとは、相当なんだな。んー、病なら、君はなんでも治せるし…………なんだろ?」
わかんなーい!と諸手を挙げる男。
燭台の陽がゆらりと動く。
「この子のお母さん、その夫のせいで殺されちゃってね、そのままこの子も殺されちゃって……」
悲壮感を滲ませる女と、引いてしまっている男。
「うわっ、それはひっどいな。って、なんでじゃあこの子生きてんの!?」
「そう、そこが一個目の問題。この子の魂は、いつのまにか、この体に入り込んだワケ」
「憑依ってことかよ! 魔法か何かかな?」
「……はぁ、薄情なんだが、魔法に熱心なのか……。流石に今のは幻滅したわ」
嫌な顔のお手本と言わんばかりに、眉をひそめ、目を細める。
「とか言ってまたまた〜。君のその手にはもう引っかからないよー。何度も引っかかる程、アホじゃないからね〜」
「…………」
「…………え、本当? え、待って待って、ごめんなさい。だから嫌いにならないで! お願い!」
すると、女は吹き出し手を口に当てる。
「見事に引っかかってるじゃない。学習しないのかしらね〜」
「ああ、騙したな〜」
男は女をグーでポコポコする。ポコポコする。
「んっ……。ここは……?」
「あ、二つ目の問題は……」
「おっ、どう少年? 君はね、倒れてたところを、この麗しき僕の妻が助け…………ん?」
リオは女に抱きついてた。そう、ぎっちりと。
「ナニシテルノカナ、ショウネン?」
「そう、これが二つ目の問題」
「ただいま! ママ、お父さん!」
女は満更でもないように、リオの頭を撫でながら、話す。
「この子の両親の声と私達の声が完全一致してるってこと」
「えぇー!?」
いやー、最近ゲリラ豪雨的なのに、悩まされてますねぇ。あ、評価宜しくお願いしとうこざいます。(2回目)