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9.遭遇

魔物の気配を捉え、いよいよ魔物との戦いを迎えようとしている。


魔物に気付かれないように慎重に、少しずつ歩いて近づいていく。

木の奥にいるのではっきりとは分からないが多分魔物までの距離はあと10メートルといったところだろう。



ちなみにだが、アリシアからは特には俺の戦闘スタイルについての指定がなかったので、今日の狩りにおいて俺は基本的に魔法を使うことに決めていた。


魔法のほうが自信があるうえ、なんといっても魔物との距離をとったまま攻撃ができるため、もし失敗してもカバーすることができるだろうと思ってのことだ。



10メートルほどの距離を維持したまま廻りこんで魔物の姿を確認する。

数は…一匹、体長は50センチほど、か。

幸運なことに魔物はこちらに背を向けて草を食べているため、こちらに気付く様子はない。



あの姿は…キラーラビット。初っ端からなかなかレアな魔物に遭遇したようだ。


キラーラビット。一週間ほど前の勉強の時間にアリシアに教えてもらった魔物だ。音や気配に敏感で見つけることが難しい魔物で、この森の中ではそれほど強い魔物ではない。

とにかくすばしっこいのが特徴でちょこまかと動き回り、鋭い爪で少しずつ相手に傷を増やしていく攻撃スタイルの魔物だ。

このキラーラビットの肉は柔らかくて、かなりおいしいため乱獲で一時期は数が減っていたようだ。俺も一度食べたがジャイアントボアなど比べ物にならないくらいおいしかった。



「キラーラビット!今日の夕食は決まりましたね!」


アリシアが興奮している。よだれは垂らして…いないよな。

戦っても今はフル装備なので怪我はしないはずなので、どちらかというと逃げられてしまう方が怖い。


できれば一発で倒したいところだ。食料にするのだから状態にも気をつけたいし、最初からⅢ級魔法を使うか。



『Ⅲ級魔法・ウォータートルネード』


右手を前に出して詠唱すると渦を巻いた水がキラーラビットへと向かっていく。

この魔法は水の当たる衝撃と、水でできた渦で相手を切り刻む魔法だ。竜巻が水でできていてそれが横倒しになった姿をイメージした。


よしっ!当たった。

どうやらキラーラビットを仕留めることができたようだ。今回は不意打ちだったので一撃で倒すことができたが気付かれていたらよけられる可能性のある攻撃だ。


一番練習しているのは火属性の魔法だが、ここで焼いてしまっては夕食にすることができないので今回は水属性の魔法を選んだ。



俺は地面に倒れているキラーラビットに近づき、ちゃんと倒せているかを確認すると、キラーラビットをアイテムボックスの中に入れる。

死んだ魔物はアイテムボックスに入れることができる。やっぱりこの魔法はかなり便利だよな。


途中で採取した何種類ものきのこと合わせてとりあえず今日の分の食料は確保できただろう。

この三日間の夕食では、とれたものしか食べてはならないことになっている。これでとりあえず一安心だ。ここから先は魔物の状態などを気にせずに魔法を使うことができる。



「おめでとうございます、夏樹さん。見事な魔法でした。」

「気付かれなくてよかったよ。じゃあ先に進もうか。」


同じ場所にずっととどまっていてもしょうがないので先に進むことにする。


「夏樹さん…はりきっているところ水をさすようで申し訳ないのですが…そっちは来た道、家の方向です。」

「…分かっていたさ。わざとわざと。」


引き返してアリシアを追い越し早足で歩く。きっと顔は赤くなっているだろう。

方向音痴ではないはずだが魔物との戦闘でつい間違ってしまった。進めど進めど景色の変わらない森だし仕方ないよね!


………恥ずかしい。



森に出て歩き始めてから2時間が経過した。



あの後、魔物には全く遭遇していない。

それもそうか。アースランドに来たとき魔物に遭遇したのはウルフと出会ったとき一回だけ。

2時間歩いただけで何回も遭遇するはずがない。


森を歩いていて前のときよりも遥かに体力が鍛えられていることに気付いた。

休憩なしで早歩きしているにも関わらず、息切れしていないし、もちろん疲れてもいない。


でもこのペースならもうそろそろ俺が最初にいた場所である丘が見えてきてもおかしくないと思う。


本当にこっちの方向が俺が来た方向で間違いなかったら、の話だけど。



「夏樹さんが最初にいたという丘はもう少ししたら見えると思いますよ!以前ここに来たときにその丘に登って周りを見渡した覚えがあります。」

「何で丘のことを考えているって分かったんだ?」

「夏樹さんの顔に書いてありますから。」


アリシアってまさか…エスパー?表情を読み取ることってそう簡単に出来るのだろうか。


「嘘ですよ。ジョークです。夏樹さんがキョロキョロして何かを探している様子でしたから。この辺りで探すものといえば夏樹さんの話に聞いた丘ではないかと。」


そういうことか。どちらにしてもアリシアが洞察力に優れていることは間違いが無いのだが、エスパーではないと分かって一安心だ。


いつも表情を読まれているのではたまらないし。


というかまたアリシアジョークに引っ掛かってしまった。なんか悔しい。



そんなことを話しているうちに、どうやら丘の近くまで来たみたいだ。少し見覚えのある地形になってきた。


同じ木が続くからなかなか分かりづらいけど。



うんっ?進行方向の方から複数の魔物の気配がする。気配から察するにキラーラビットよりも大きな魔物みたいだ。


「アリシア。この先で魔物の気配がする。」

「えっ?…確かにしますね。私より早く気付くとは夏樹さんもなかなかやりますね!」



とりあえず近付いて姿を確認してみよう。キラーラビットより大きい魔物であるとはいえ、俺よりは小さいし強い魔物ではないだろう。


複数いるとすれば予想されるのはゴブリン。汚れた服を着て、棍棒を振り回して戦う魔物だ。ゴブリンの変異体が居なければ統率力もないので複数いても警戒することはない。



丘の姿が見えると同時に魔物の姿も見えた。

やはりゴブリンか。見える範囲だけでも三匹はいる。


「どうやらゴブリンの巣があるようですね。作られてから結構経過しているようですが夏樹さんが丘から降りたときゴブリンは見かけなかったんですか?」

「うん。たまたま出払っていたのかもしれない。それか俺を恐れて近付いて来なかったのかも。」

「それはありません。」


即答で答えられた。俺の豆腐メンタルが崩壊しそうだ…



「ゴブリンなら夏樹さん一人で大丈夫でしょう。ではよろしくお願いします。」


さっきと違い最後まで気付かれずに戦うのは無理だろう。これが今日始めての実戦らしい実戦という感じかな。



ゴブリンに気付かれないうちに一匹でも多く倒しておきたい。少しずつ近付き何の魔法を使うか考える。



それにしても醜い魔物だ。とにかく顔が不細工である。地球の動物で例えるとゴリラと犬とリスとヤギと豚を足して割った感じだ。

一つ一つの動物は愛らしいかも知れないけど、ここまで合わさってしまうと恐怖でしかない。


ちょっと分かりにくかったかな…?



魔法が届く距離まで近付けた。まだゴブリンに俺の存在は気づかれていない。


『Ⅲ級魔法・フレイムカーテン』


火属性のⅢ級魔法を唱えた。カーテンのように連なった炎を飛ばし続ける魔法だ。


突然攻撃を受けたゴブリンはかなり動揺して体についた火を消そうともがいていたが炎が永続的に飛んでくるので焼け石に水。遂には倒れてしまった。


既に見える範囲にいた三匹を倒したが奥の方にはまだ残っているだろう。



巣の方に注意を向けてみると、やはり数匹が岩の影からこちらを覗いているようだった。


どうやら仲間を倒した俺はかなり警戒されているようだ。

こちらから巣のゴブリンを攻撃できる距離まで近付かないといけないか。


ある程度の距離まで近付けば無手で立っている俺にゴブリンがうって出てくる可能性は高い。


慎重に進もう。



ゴブリンとの戦いは続く。



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