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4.魔法

異世界三日目。

さっき朝食を食べ終わったところだ。今日の朝食はシリアルのようなものと野菜スープ、それにオレンジだった。オレンジは森で普通に採ることができる一般的な果物であるようだ。アリシアの家の食料庫にたくさん保存してあるらしい。


そして早速ではあるが、今日から魔法と武術、体術の修行が始まる。

一日のスケジュールは昨日の夜のうちにアリシアと話し合って決めた。

話し合いの結果、俺のスケジュールはこうなった。



朝6時起床、その後持久走。

8時朝食、その後魔法の修行。

13時昼食、その後武術、体術の修行。

18時夕食、その後勉強。

そして22時就寝。


かなり大雑把なスケジュールだが臨機応変に動けるように、ということらしい。



一般的にこの世界で魔法が使える人族は武術を鍛えないようだが、アリシアは鍛えて損はない、と問答無用で俺も武術を教えてもらうことになった。

これから先、魔法が使えないなんて場面にも遭遇するかもしれないし武術も鍛えてもらえるのはありがたい、と素直に思う。


アースランドでは魔力を持っていても魔法が使えない人が多いらしいので、俺は使えるのか?と聞いてみたところ、

アリシアは「感じます。夏樹さんは使えます。」と何処かから何かを感じていたので多分大丈夫だろう。


夕食後の勉強の時間には魔法のことやアースランドの地理、魔物の種類や弱点を教えてもらう。

本当にアリシアには感謝してもしきれないぐらい世話になるな、と思う。いずれ恩返しがしたいものだ。



それにしても…今日の早朝の持久走はかなり精神的に辛かった。結界の外に出るのは危険なのでそれほど広くない庭を延々と走り続ける、というものだったからだ。


そしてウルフと戦ったときに感じた体の軽さはアドレナリンによるもの、というわけではなかったみたいだ。いつもより速く、そして長く走ることが出来た。重力が関係しているのかもと思ってアリシアに聞いてみたが、はっきりとは分からないようだった。



「そろそろ始めましょうか。」


庭で待っているとアリシアが家から出てきてこう言った。


さぁ、魔法の修行の始まりだ!!





「それではこれから魔法講座を始めたいと思います。教書の15ページを開いてください。」

「ん…?教書ですか?」


修行、アリシアに魔法や武術を教えてもらっている間は、アリシアを師匠と呼び敬語を使うことにした。


「すいません…。一度言ってみたかったんです。こんな風に教えるなんて初めての経験なので。魔法の基礎は子供のころに家庭教師や学校で習うものなんですよ。いや今はだった、という方が正しいですね。」


これはたまにあるアリシアジョークか。いつも優しそうな顔をして微笑んでいるので嘘をついているかを見抜くことは難しい。昨日から何回も引っかかっている。

布団の話題でアリシアジョークをくらったときはかなりへこんでしまった。



「では本当に始めましょう。でもいきなり魔法を使えるわけではありません。まずは体の中の魔力を感じる必要があります。気を静めて体の中に意識を向けると体の中に暖かいものが感じることができるでしょう。このように抽象的にしか伝えることができないのでこの段階で時間がかかってしまう人もかなりいます。」

「師匠はどのくらいかかったんですか?」

「私は8歳のときに家庭教師にこのことを教えてもらいましたが、案外すぐに感覚をつかむことができたので10分もかかりませんでしたよ。夏樹さんもすぐできると思います。」



アリシアはそう言ってくれたが、今のところ俺は体の中に何も感じることができていない。日本人が体の中に魔力があります、と言われてすぐ感じることができるようになるのもなかなかに怖いが…。やはりというか、気を静めて体の中に意識を向けても心臓の鼓動の音が聞こえてくるだけだ。


23歳という若さで近衛隊の副隊長をしていたぐらいだしアリシアは感覚で掴むことができる、いわゆる天才というものなのかもしれない。



三時間半後、昼食30分前となってようやく体の中にある魔力を感じることが出来た。

なかなか自由自在に動かせるようなので体に循環させたあと、体を魔力で包むようにイメージしてみると…簡単にできるじゃないか!



「師匠、やっと出来ましたよ!」


布団全集という謎の本を(俺のためだろう)読んでいたアリシアに声をかけた。



「思ってたより早く出来ましたね。最初に全く感じられない人は時間がかかる人が多いんですよ。…って、何してるんですか!?」

「案外簡単に操ることができたので体に纏ってみました。」

「それは身体強化という結構難しい魔法なんですよ…。どうやら夏樹さんは魔法のセンスがあるようですね。」


そうなのか。十分で魔力の感覚を掴めたというアリシアの方がよっぽどセンスがあるのではないかと、アースランド初心者の俺は思ってしまう。



「疲れていないようでしたら簡単な魔法を実践して使ってみましょうか?」

「お願いします。少し疲れていますけど明日以降に引き延ばしたら気になってしょうがないでしょうし。」


三時間半もの間気を張って集中していたので随分と疲労がたまっている、というか軽く頭痛もするが、日本人なら皆一度は魔法にあこがれたことがあるのではないだろうか。

だからだろう。魔法を習えるということでテンションがあがって三時間半の疲れは完全に吹っ飛んでしまっている。



「魔法を使う、発動させるときに一番大事なのはイメージです。まずは私が火属性の一番簡単な魔法を使ってみますね!」



『Ⅰ級魔法・ファイヤボール』


アリシアが右手を前に出してそう唱えると、かざした右手の少し前にソフトボールほどの大きさの火に包まれた球が出現した。


すごい!はじめて見る魔法らしい魔法に素直に驚き感動してしまった。

ウルフを倒したときのアリシアの重力の魔法は確かにすごいものではあったが、地面とウルフが少し沈むというもので、派手さも何もなくいまいち魔法という実感がなかったためだ。


さらにアリシアはファイヤボールを自在に動かしてみせる。


「これは一番弱いⅠ級魔法ですが籠める魔力の量でサイズや威力を強くも弱くもできます。例えば…。」


そう言ってアリシアがファイヤボールを少し離れた地面へと落とすとドンッ、という音とともに地面は30センチほどえぐれてしまった。


なんて威力なんだろう。考えてみてほしい。火をつけたソフトボールが地面を30センチも地面をえぐることがあるだろうか。それほど威力がある、ということなんだろう。



「やりすぎですよ、師匠!」

「確かに少しやり過ぎてしまったようですね。まぁでもすぐ元に戻すことができますから。」


いつも通り微笑んでいるアリシアがえぐれた地面に手をかざすと急速に土が集まって地面は元通りになった。


「ほら、このように。」

「今…何も唱えずに魔法を使ったんですか!?」

「そうです。さっき言っていた詠唱というものを唱えなくても魔法を発動させることができます。これは詠唱破棄といって少し高度な技なんですが戦いの時には、これができないと話にならないので夏樹さんには一週間でこの技を身につけてほしいと思っています。ではファイヤボールを発動させてみてください。」



次々に課題を突きつけてくるアリシアに頭が痛くなりながらもアリシアを真似て、右手を前に出し魔法を発動させる姿勢に入る。

アリシアはイメージが大切って言っていたからまずは頭の中で形や大きさをイメージしてみる。

ん?なら普通に燃えてしまったソフトボールを考えてみればいいだけじゃないか。

ボール型であり、燃やすという事象だけなので簡単にイメージできる。難しい魔法だと日常的に見ないものをイメージしなければならなくて難しくなるのかもしれない。


じゃあやってみるか!



『Ⅰ級魔法・ファイヤボール』


そう詠唱を唱えるとイメージ通りの大きさの燃えた球が俺の右手の前に出現した。

よしっ!成功だ。ぐるぐるといろんなところへ移動させて遊ぶ。はじめて使った魔法にかなり興奮している。

そういえば魔力をどのくらい籠めるかを考えずに発動してしまった。この球にはどのくらい籠もっているのだろうか?(というか俺は無意識でどのくらい籠めてしまったのか…)



「いきなり成功させてしまうなんて…やはり夏樹さんはすごいです!」


アリシアがそう褒めてくれる。お世辞でないことを願おう。


そろそろいいか、とアリシアさんのように少し離れた地面へ飛ばしてファイヤボールの制御を外す。


「夏樹さん、待ってください!その魔力の密度だと…!」


いきなりアリシアが騒ぎ始めた。次の瞬間、ドカーンと何かが爆発したような音がしたかと思うと目の前は土ぼこりで覆われてしまった。

やばい…!想像以上に魔力が籠もっていたようだ。



…10秒ほどして土ぼこりがなくなると俺の目に衝撃的な光景が映った。


「クレーター…。」

「どれだけ魔力籠めたんですか、夏樹さん!」

「いや無意識だったんです。それにしてもすごい光景で…す、です?」


言いかけたところでアリシアの方から物凄い視線を感じてつい言葉を途中で止めてしまう。


「なんてことを…自分で元通りにしてくださいね!」


アリシアの方を振り向くと普段はいつも優しげなアリシアが鬼のような形相で腕を組んでいた。


「ごめんなさい。」


俺の口から言い訳どころか、それ以上の言葉は出てこなかった。足がガクガク震えてるんですけども、師匠。



そんなことを言いながらも流石はアリシア。地属性の魔法を教えてくれたので時間はかかったが思ったより早く元通りにすることができた。畑には被害がなく少し安心した。



こんな風にして初めての魔法の修行は終わりとなった。


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