1.一人
3年ほど前に別名義にて投稿していたものを心機一転加筆修正して再投稿することにしました。
よろしくお願いします!一章は説明も多く、話が停滞気味になっています。
「ここはどこです!?」
それが俺の抱いた今いる場所への第一印象だ。めちゃくちゃ動揺している。
単純に道に迷い、今居る場所を誰かに尋ねている。それなら不思議でもなく、珍しくもない言葉だろう。
しかし、この言葉は誰かに向けられた言葉ではない。
独り言…それも自然と俺の口から出てしまった言葉だ。
俺が立っているのは丘のようになっている巨大な岩の上。俺の目の前に、いや、目の前だけでなく見渡す限り、囲むように広がっているのは真っ黒な背の高い木々が集まった森。
加えて今は夜らしく辺りは闇に覆われている。月は出ていないようだが、夜目がきいていて何故かかなり遠くまで見ることができている。
初見の場所。ここまで来た記憶もない。恰好は寝ていた時のまま。もちろん、裸足。
「ここは夢の中か…?」
いやいや、そんなはずはない。俺は自分の言葉を即座に否定する。こんなにリアルな夢は見たことがない。風を感じることができるし、自分の息遣いも鮮明に分かる。それに夢だと気付いて醒めないのもおかしいだろう。
確か俺は一度起きた後に二度寝したはずだ。
今日は久しぶりの休日で、昨日の夜は楽しみな休日に興奮して眠れないという最悪な夜を過ごし、最後に時計を見たのは午前4時。
しかし何時もの習慣で6時に目が覚めてしまい二度寝開始。で、目覚めたら見たことのない場所で横たわっていたという訳だ。
「疲れすぎて頭がおかしくなったのか?」
などという冗談ともとれない冗談を呟く。誰もいない場所で独り言を呟くのは別におかしくないよな、うん。絶対俺は正常だ。
でも何と運が悪い。ここ最近は仕事が忙しくて今日は1ヶ月ぶりの休日らしい休日だったのに、その休日にこのようなことが起こるとは。
それにしても声がよく通るものだ。小さな声で呟いているつもりでも大きく聞こえる。
「色々考えていても埒が明かないな…。何か行動を始めないと。」
ずっとこの場所に留まっていても救助は来ないだろう。となれば自分でどうにかするしかない。
そう考える自分に案外冷静であることに気付く。ここで取り乱すのは悪手としか思えないので、こういう性格で助かったのかもしれない。
それにまだこれが夢という可能性も残っているし。
「よし!とりあえず北の方に進もう。」
そうして俺は巨大な岩から慎重に降りて、巨大森林へと足を踏み入れた。
なんでこっちが北と分かるのか、だって?それは、もちろん『勘』だ。
◇
こうして歩き始めたのだが、森に入って改めて近くで見る木の大きさに驚いている。高さは100メートル以上あるだろう。地球にこんな高さの木は実在していたかな…。少なくとも日本にはなかったはずだ。
「ほんとにここはどこなんだ…。」
ついそう声に出してしまう。道はないが地面は柔らかい土で裸足でも歩きやすいのは幸い何だろうか。たまに濃い紫色の毒々しいキノコを踏んでしまうことはあるが。
そして気になるのは時々聞こえてくる狼みたいな声の遠吠えや鳥の鳴き声。近くにはいないようだけど不気味でしょうがない。野犬でも襲われると大変なことは分かっているから、聞こえる度に体がピクッと反応してしまう。早く明るくなって欲しい。
独り言を呟きながら時々ピクッとする俺の方が不気味に見えるかもしれないというのは置いておこう。
もし野犬とかが襲ってきたらどうすればいいのだろう。もちろん逃げられるはずはない。俺の足の速さは並だ。棒かなんかを振り回したら撃退出来るのだろうか。
歩きながらそんなことを考える。
丸腰のままではまずいと思った俺は手頃な大きさの棒が落ちていないか周辺を歩き回る。巨木しか生えていないのもあってか太い枝ばかりで中々見つけることが出来ない。
探して10分ほど経ったであろうか、やっと想像していた長さ、そして太さの棒が見つかった。試しに巨木を殴ってみたけど結構頑丈みたいで一安心だ。
しかし、まだまだ森を抜けられる気配はない。
◇
喉が渇いた、突然そう思ったのは歩き始めて体感三時間ほど経ったときだった。かなり歩いたと思うが何も見つけられていない。本当に何にもない。それこそ何度も、同じ場所を通っているのではないかと疑ってしまうほどに。
これからは水の音が聞こえないか耳を澄ませながら歩くことにしよう。空腹は我慢できるが、喉の渇きはそのうち我慢出来なくなるだろう。
喉の渇きにも気付かないほど真剣に悩んでいたことは、やはり自分が今どこにいるのかということだ。俺の曖昧な記憶によると地球で最も高い木はアメリカの木で100メートルぐらいだったはず。
とすればここはアメリカの森林地帯か、はたまた地球の誰も知り得ない世界、例えば異世界とかなのだろうか。
なんとなく現実逃避を続けてきたが、こんなに巨大な木々が密集している場所は地球上に存在し得ないだろう。
これが夢でなく現実だとしたら、と考えると恐ろしい。夢ならそろそろ醒めてくれ…。
などと考えながら歩き続けていると、かすかに水音が聞こえ始め、俺はすぐさま水音の聞こえる方へ歩いて行くことにした。
「よしっ!これで何とか歩き続けられる。」
こんな森の中だし水は澄んでいるに違いない。思えば水を見付けたことがこの場所へ来てはじめて嬉しかったことだ。
と…見えてきたぞ。どうやら小川のようで、川幅はそんなに広くない。水筒みたいな物を持っていないから持ち運びは出来ないけど、いや案外この小川に沿って歩いて行くというのも有りかもしれない。水場の近くなら誰かが住んでいる可能性も高いだろう。
少しずつ小川の水がはっきり見えるようになってきた。やっぱり水は澄んでいるみたいだ。日本の都市に住んでいては、このようなきれいな水は中々見られないものだ。
◇
ふぅ…冷たい水でのどを潤す。普段は水の味など、水道水も売っている水も変わらないと思っていたが、長く歩いた後の冷水は格別に美味しく感じる。
のどの渇きがなくなって、気持ちが少しずつ鎮まってきた。周りを見渡してみるがやはり見慣れた風景ばかりである。
そういえば…川に魚が泳いでいたりしないだろうか。まだそれほど空腹は感じないけど魚を見つけることができれば食料面では安心できる。
魚を探して水面を覗き込もうとした、そのときだった。突然腰の辺りに衝撃を受けて俺は数メートル吹き飛ばされてしまった。一瞬何が起こったか分からなかった俺が地面に落ちて顔を上げて、すぐに現状を理解する。
俺の目に映ったのは狼のような動物。赤く光った目、ふさふさの毛、そしてよだれが垂れている口からは鋭い牙を何本も覗かせている。
どこから来たんだ…!鳴き声は注意深く聞いていたはずなのに。いや、ここは小川だ。もしかしたらここは、この動物の水場なのかもしれない。
何も考えずに小川に近付いたのは失敗だったかもしれない。
でも大丈夫。そう自分に言い聞かせる。はじめて鳴き声がしたときからこのような状況を何回も頭の中でシミュレーションしたんだ。そのために棒だって拾った!
吹き飛ばされて少しの間は恐怖や動揺に支配されたが、気持ちを切り替え俺は立ち上がり棒を構えた。
もちろん俺は動物と戦った経験はない。動物どころか真剣な勝負というものも始めて。だがもう覚悟は決めた。
俺の様子に警戒したのか、狼もどきも少しずつ距離を詰め間合いを計っている。
先手必勝!相手を待っている必要もないし、状況はかなり不利なので早いうちに一匹でも倒しておきたい。そう思って俺は地面を蹴りあげ、一直線に狼もどきへと飛びかかり棒を降り下ろす。
これは行ける…!狼もどきは突然動いて向かってきた俺に驚き無防備な状態だ。
それに何だか体が軽く感じる。普段じゃ考えられないほどの跳躍力、瞬発力だ。これが火事場の馬鹿力というやつかもしれない。
バシンッ
綺麗に狼もどきの頭を捉えることが出来た。
これは決まった、そう油断したその瞬間だった。頭を打たれて少し体を沈めていた狼もどきが顔を上げ、棒をくわえたと思うと一瞬にして棒は粉々になった。
油断した!すぐに間合いをとって下がるべきだったのかもしれない。
でも俺は最初から気付いていたんだ。日本人の俺が棒一本なんかで狼みたいな動物に勝てるわけない、と。
棒をくわえられた時にすぐに手放して後ろに下がったのはいい判断だった。ここで諦める訳にはいかない、でももう駄目かもしれない。そんな矛盾した考えが頭の中でぐるぐるめぐって行く。
再び狼を見据え今度は拳を構えた。今までの人生の走馬灯が見える。
そんな時だった。突然、森の中に女の人の声が大きくこだました。
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投稿初日のため、本日中に第五話まで投稿します。気になった方はブックマークお願いします!