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091 雑用

魔物狩りの翌日からヨネ子、エル、セラフィム、レーナの4人は4ヶ所ほどハンターギルドを巡った、各地で1人分ずつ解体を依頼したのだ。


ただドラゴンの素材だけは4ヶ所全てに一体づつ解体を任せた、今回はドラゴンの素材も魔石以外全て売る事にしたからだ。


そして魔石と販売代金を受け取るとアルケオンの魔道具屋に行く、そしてドラゴン以外の全ての魔石から魔素を抜きマナだけの透明魔石に加工するよう依頼した。

ヨネ子は通信の魔道具用の魔石を作るためアルケオンの魔道具屋にもボレアースの魔道具屋と同じ魔石から魔素を抜く魔道具を作らせていたのだ。


魔石の加工依頼が終わるとフィエナのところに向かった、自転車の試作品が完成しているはずだからだ。


「フィエナ、出来てる?」


「あ、マーガレットさん、出来てますよ」


フィエナはそう言って工房の裏に4人を連れて行った、工房の裏なのはここで試運転をするからだ。


「これです、どうでしょうか?」


そこにはヨネ子には見慣れた宅配便が使うリヤカー付き自転車があった、見た目は注文通りだ。

さらに自転車とリヤカーが別々にもう1組作ってあった。


ヨネ子はそれをじっくりと検査する、出来は地球の自転車と比べても遜色無かった。


「良い出来ね、じゃあレーナ、乗ってみる?」


ヨネ子は自転車だけの方をレーナに勧めた。


「はい、ぜひ」


レーナは直ぐに返事して自転車を受け取った、エルとセラフィムとレーナには自転車がどういう物か注文時に説明していたので使い方は理解している。


しかし知っている事とできる事が同じとは限らない、レーナはバランス感覚は良い方だがそれでもいきなりは乗りこなせなかった。


それでも数回練習したところで早くも乗りこなせるようになった、ヨネ子はその様子をしっかり見て動作やブレーキの効きに問題無い事を確かめた。


ヨネ子は次にリヤカー付きの方も乗らせた、こちらもリヤカーがあまり負担なく運転出来ているようだ、オイルダンパーこそ使っていないがベアリングとゴムタイヤのおかげだろう。


「乗った感想は?」


ヨネ子はレーナに乗り心地も聞いてみた。


「凄く楽しかったです。これなら収納魔法が使えない人でもたくさん荷物を運べて身体強化が使えなくても早く移動出来ますね」


「そうよ、これから街中や短距離の運搬は馬車ではなくこの自転車を使うようにさせるつもりよ」


「そうなの?確かに便利だけど荷物が多くなればやっぱり馬車の方がいいんじゃ無いの?」


ヨネ子の案にエルが疑問を呈した。


「輸送量だけを考えればそうなんだけど、馬車だと糞の片付けが大変でしょ?放置すれば街中が臭くなるし衛生的にも問題があるから」


「ああなるほど、確かに今は馬糞の片付けに結構な予算を割いてるわね。それが無くなるのは良い事ね」


「そういう事。じゃあフィエナ、この自転車を量産してちょうだい、量産に必要な鍛治師は手配させるわ」


「わかりました。それで価格なんですが、材料費は1台200ドル位ですがどれ位に設定したらいいでしょうか?」


「そうね、量産するとどれくらい作れるの?」


「はい、製作を部品事に分業制にすれば5人で1日3台から4台は出来ると思います」


「だったら700ドルから1000ドルの間であなたが決めなさい。それから最初の10台は国が買い取るから出来たらエレンに連絡してちょうだい」


ヨネ子は10台をモニターと宣伝を兼ねて政治家に使わせるつもりなのだ、そうする事で自転車を短期間で普及させる事が出来る。


「わかりました」


自転車の案件が片付いた後は再び魔石を織り込んだ魔物蜘蛛の糸と魔物蚕のシルクの製作に戻る、とはいえこれも作り方を養殖場に教えて作らせるだけなのでそう時間はかからない。


現在の予定が全て片付いた時、カンタスから連絡が入った。


【カンタスだ。船員を確保出来たぜ】


【そう、どれくらい集まったの?】


【船員が51人、見習いが22人だ】


【どうやら貴方に任せて正解だったようね】


【そう言ってもらえると嬉しいぜ。それでこれからどうする?一応ドラゴニアに行くって事だったからブーストン王国のアンジェに集まってるんだがな】


【そうなの?だったら今から迎えに行くわ。じゃあ待ってて】


【あ、お、おい】


カンタスはゲートの魔法を知らない、なので何日後に来るか聞きたかったのだがその前にヨネ子に通信を切られてしまった。


ヨネ子は通信が終わると1人で船員達を迎えに行った、そして直ぐにカンタスを見つけた。


「待たせたわね」


「な?お前アンジェに来てたのか?」


「いいえ、今来たのよ。それより残りの船員達はどこ?」


カンタスに聞いた人数は全部で73人、しかしカンタスと共にいたのはほんの20人ほどだった。


「ああ、迎えがいつ来るかわからなかったからみんな街に出てるんだ。夕方には宿に戻ってくるはずだ」


「そう、なら宿で待ちましょう」


そう言って宿に案内してもらう、ただ宿と言っても1つでは無い、人数が多いので5件の宿に分かれて泊まっている、なのでカンタスの泊まっている宿以外には一緒にいた船員に言って全員集まってからヨネ子の元へ連れてくるように指示した。


その後ヨネ子は通信の魔道具で帰りが遅くなるとエルに伝えて全員集まるのを待った、その間にカンタスがヨネ子に質問する。


「なあ、俺たちはドラゴニアまでどうやって行くんだ?歩きか?」


「いいえ、魔法よ」


「魔法?もしかして転移魔法が使えるとか言わねえよな」


この世界の転移魔法はお伽話でしか聞いた事がない魔法なので誰も使える者がいるとは思っていない、もちろんカンタス含めてだ。


「まあ違うけど似たようなものよ」


「・・・・・そうか、まあそれは良い。それで給料はいつから出してくれるんだ?全員ここには自腹で来たからな、早めに出してくれねえと生活に困る奴も出てくる」


「だったら全員集まったら今月分は渡すわよ」


「なっ!今月分って後半月くらいしか無いのに満額出してくれるのか?」


「そのつもりよ」


「ふん、流石だな。ならもう俺から言う事は何も無え。これからよろしくな」


「ええ、よろしくね」


そして夕方過ぎ、全員がカンタスの泊まる宿屋に集まった。


「これで全員揃ったわね、では最初に今月分の給料を渡します」


ヨネ子はそう言って全員にドル紙幣で給料を支払った、しかし全員ドラゴニアの事を詳しく知らないので紙を渡されて騙されたと思ってしまった。


「おいおい、ちょっと待ってくれ。この紙は一体なんだ?こんな紙切れが給料とはどういう了見だ?」


その事について船員を代表してカンタスが聞いて来た。


「それは紙幣と言ってドラゴニアで流通しているお金よ」


「なんだその紙幣ってのは?それよりドラゴニアでは普通の金は使えねえのか?」


「今はまだ使えるけど使えなくなってるところもあるわよ」


「使えるならこちらの金にしてくれ」


「良いけど今の国民以外の両替は手数料が高いわよ」


「ああ、構わねえ。そうだろみんな?」


「「「「「「「そうだそうだ!」」」」」」」


全員がカンタスの意見に同意したので一旦ドル紙幣を回収してからドラゴニア以外で流通している通貨を渡した。


「これで良い?」


「ああ、良いぜ、じゃあ連れて行ってくれ」


カンタスがそう言ったのでヨネ子はゲートをアルケオンに繋げた。


「な?どこだここは?」

「おいここはどこなんだ?」

「俺が知るかよ」


全員ドラゴニアに行くと聞いていたのに、いざ移動すると動揺を始めた。


「ここはドラゴニアの暫定首都アルケオンよ。今日は全員ここには泊まってもらって明日宿泊施設に向かいます」


そう言うとヨネ子は全員を予約していた宿に泊めた。


船員達の宿泊施設はルテナ橋の近くに用意している、これから訓練が開始されるので川のそばに仮設住宅を作ったのだ。

仮設住宅なので周りには店がほとんどない、なので初日は買い物などの場所がわかるよう街中に宿泊し翌日歩いて仮設住宅に向かうのだ。


因みにルテナ橋とは2つ目の鉄橋の名前だ、ドワーフの言葉で最初が「ナディラ」、2番目が「ルテナ」と言う事から最初の鉄橋をナディラ橋、2番目の鉄橋をルテナ橋と名付けていた。

これはアルケオンの都市名を決める時にエルフとドワーフから案が出ていて、エルフの言葉を都市名に使ったので橋の名前をドワーフの言葉にするように政治家達が決めたのだ。


翌日、船員全員を仮設住宅に連れて行くと早速講義を始める、仮設住宅に講義用の建物も併設してあるのだ。


ヨネ子はこの日から1週間集中して座学を教えた、教科書はヨネ子がこの時のために書いた解説書が1つあるだけだ、なので基本は全員にメモを取らせながらになる。


そして1週間が過ぎた後、訓練のために用意したヨットで実技訓練となった、ヨットは1人乗りの小型が30艇、5人乗りの中型が10艇用意してある。


そのヨットでそれぞれ訓練を始めるよう指示した、この後は全員が中型のヨットを乗りこなすようになるまでヨネ子は手を出さないつもりだ。

そのための集中講義と教科書だ、これからはカンタスを中心に船員それぞれが独自に腕を磨いて行ってもらう。


ヨネ子の予定では全員が中型のヨットを乗りこなせるようになったら帆船の教育に入って行くつもりだ、とはいえその前に訓練場所を海に移す準備もしなければならない。

今は街が近くに無いと船員達が不便だから川での訓練にしているが、元々外洋航海のための帆船教育なので海での訓練が欠かせないからだ。


船員の教育がひと段落したら今度はマナ繊維(マナを織り込んだ蜘蛛の魔物の糸と蚕の魔物のシルクの事)を受け取り生地職人の元に向かう、今度はこの糸を服や下着用の繊維に編んでもらい色を染めるのだ。


この世界にも独自の染物文化はある、ただマナを織り込んだ繊維を染めるのは初めてなのでそれなりに試行錯誤が必要かもしれないがそこは職人に任せる事にする。


生地作成の依頼が終わると次は郵政事業だ、リーグに預けた魔法使い達は使う魔法を特定して訓練していたためすでに十分成長している。


ヨネ子はエレンに言って官僚の中から郵政事業に従事する者を20人ほど募集していた、その穴埋めにはエルドランド学園で就職待ちをしていた者を当てて新人教育をしていた。


その20人と魔法使い10人の計30人を集めてまた1週間の集中講義を行った、今回は郵政事業の組織や運営についてだ。


そして講義が終わると1日休日を挟んで今度は30人全員を連れて世界を巡る、ブーストン王国の王都ブータンを皮切りにレベンド王国の王都タペヤラ、ガベン王国の王都ダルーザ、フランドル王国南部カリエス侯爵領の領都カニンガム、フランドル王国の王都フライツェン、アルバート王国中西部レクサス公爵領の領都レクスブルク、アルバート王国の王都テレイオース、リシュリュー王国の王都ベイルーン、リシュリュー王国南東部ワルター辺境伯領(旧ハンベル辺境伯領)の領都ルワイゼル(旧ハンバルング)、エムロード大王国北部ルビー公爵領の領都ルンビニー、エムロード大王国の王都サフィーア、エムロード大王国領カーレムの元首都フェルキルト、エムロード大王国領ザールクリフの元首都ザーラット、ディラルク王国の王都サレンダーと8カ国14都市を巡った。

その後今度は氷河人の街ボレアース、センデール、メルカート、チグリース、バンプ、アセット、ロードローロの7都市とエルフの郷ファレーナ、セカール、サキア、フォルンの4ヶ所、さらに妖精族の街ファティマの計12ヶ所も巡った。


今回連れて行った町は全て郵便事業の出張所を置く予定の町だ、組織としてはこれらを5つの地域に分割して各地域に職員4人魔法使い2人を専任する。


ただし職員と魔法使いが滞在するのは全員アルケオンだ、各都市では郵便の募集や配達に現地人を雇う事にしている。

そして専任の担当者は魔法使いと連携し担当の街とアルケオンの本部との輸送を行う、アルケオン以外の街同士の輸送は地域内ならそのまま、地域外なら一旦アルケオンを経由する事にする。


地域割りはドラゴニア帝国、ブーストン王国、レベンド王国、ガベン王国の4カ国で1つ、フランドル王国、アルバート王国、リシュリュー王国の3カ国で1つ、エムロード大王国、ディラルク王国の2カ国で1つ、氷河人の街7つで1つ、エルフの郷4ヶ所とファティマで1つの5地域だ。


全ての街を巡った後は誰がどの地域の担当になるか決めるのだがそれは全員の自主性に任せた、そして担当が決まった後は現地職員の雇用も任せる事にした。


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